『AKB48 世界選抜総選挙』に見る、チーム8の勢い 速報とSHOWROOM配信から考察
今年で10回目を迎える『AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙』の速報発表が5月30日に行われた。速報では120位までが発表され、チーム8から15人のメンバーがランクイン。総選挙のランキング圏内である100位に15人中13人の名前が並ぶ躍進が見られた。
なお、119位・佐藤栞(新潟)、103位・佐藤朱(宮城)、88位・小田えりな(神奈川)、87位・長久玲奈(福井)、81位・橋本陽菜(富山)、56位・本田仁美(栃木)、61位・岡部麟(茨城)の7名は初のランクインとなる。
チーム8だけでなく高まるメンバー個人の認知度
チーム8が総選挙に出馬するようになって今回で5回目を迎える。「箱推し」のファンが多いチーム8は票が分散してやすいため、決して総選挙に強いグループではなかった。しかし、今年は15人が速報で名前を呼ばれる快挙を成し遂げた。それだけ個々人での活躍が目立ち、チーム8としての知名度も向上した証だ。特に今回の総選挙の対象シングル「Teacher Teacher」で初のセンターを務めた小栗有以(東京都)、チームAのキャプテンを兼任する岡部の認知度は昨年よりも飛躍的に向上。本番ではもっと上位にランクインすることが期待されている。
また長は2017年8月に『エンタの神様 大爆笑の最強ネタ大大連発SP』(日本テレビ系)に出演し、得意のギターで出身の福井を自虐的にアピールする「すごいんだよ福井」を披露して人気を得た。さらに小田は2018年3月に『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)にAKB48の横山由依、込山榛香と並んで出演。番組の企画に女子プロレスラー役として出演してTwitterのフォロワー数が急増するなど、知名度を全国区にした。
有言実行の大西桃香
今回の速報での一番の注目は大西桃香(奈良)だ。大西は毎朝5時半からSHOWROOMでファンとコミュニケーションを行っており、すでに600日を超えている。大西は「速西」と称して「チーム8で一番の順位で速報にランクインする」ことを宣言し、速報では12位のランクインを目標に掲げていた。昨年の総選挙の結果に悔しい思いをしたと語っていた大西。「大西軍」と呼ばれる大西のファンたちが彼女の期待に応えたと言えるだろう。目標の12位には届かなかったものの、速報では宣言通りに「チーム8で一番の順位」で27位にランクインを果たした。本番では20位を目標に掲げている大西。「大西に悔し涙はもう見せない」と大西軍が躍起になっているため、本番でどこまで伸びるか注目だ。
参考:(速報でのチーム8)
27位 :大西桃香(奈良県) 9,481票
37位 :倉野尾成美(熊本県) 8,293票
49位 :小栗有以(東京都) 6,727票
56位 :本田仁美(栃木県) 6,466票
60位 :中野郁海(鳥取県) 6,386票
61位 :岡部麟(茨城県) 6,192票
71位 :坂口渚沙(北海道) 5,774票
81位 :橋本陽菜(富山県) 5,272票
87位 :長久玲奈(福井県) 5,077票
88位 :小田えりな(神奈川県) 4,979票
98位 :永野芹佳(大阪府) 4,392票
99位 :山田菜々美(兵庫県) 4,380票
100位:太田奈緒(京都府) 4,369票
103位:佐藤朱(宮城県) 4,292票
119位:佐藤栞(新潟県) 3,548票
SHOWROOMでも台頭してきたチーム8メンバー
選抜総選挙は投票だけの戦いではない。昨年に続いて、今年も選抜総選挙前にSHOWROOMイベントを実施している。これはSHOWROOM配信でファンが無料、もしくは有料のギフトを投げて順位を競うもの。昨年はチーム8大西とNGT48中井りかがデッドヒートを繰り広げ、さらに上位16名にはSHOWROOM選抜として楽曲も与えられた。今年もSHOWROOM選抜があるのかは不明だが、多くのメンバーがSHOWROOM配信にも力をいれている。
昨年1位だった大西は「今年は楽しむ」ことを宣言しており、現時点ではNGT48中井の強さが際立っている。ただし、このSHOWROOMイベントでも目立っているのがチーム8メンバーだ。チーム8のファンの特性上、チーム8メンバーが頑張っているとSHOWROOMへ応援に行く。またチーム8は選挙前だけにかかわらず、日ごろからSHOWROOMで積極的にファンとコミュニケーションをしているので、ファンもギフトの投げ方などSHOWROOMの使い方に慣れているのでイベントには強い印象だ。
今年のSHOWROOMイベントで著しい活躍を見せているチーム8メンバーは、宮里莉羅(沖縄)だ。高校生の宮里は配信時間に制約があるにもかかわらず上位にいる。昨年のSHOWROOMイベントでも5位にランクイン。宮里は先日卒業発表をした下青木香鈴(鹿児島)の後継を目指しており、既存のファンに限らず、多くの下青木ファンやエイトファンが彼女を後押ししている。また現在チーム8で一番上位にランクインしているのが吉川七瀬(千葉)だ。ほのぼのとしたキャラクターの吉川は『AKB48チーム8のKANTO白書 バッチこーい!』(千葉テレビ)でMCを務めるなど認知度を高めており、吉川の配信に多くのファンが魅了されている。
左伴彩佳(山梨)と清水麻璃亜(群馬)もイベント開催当初はランク外だったが、遅れながら本気を見せ始め、朝から晩まで配信をしている。SHOWROOMイベントで上位に行くポイントの一つに、配信時間の長さがある。長時間配信をしているメンバーは、ファンの目に触れる機会が増えることで知名度を上げるだけでなく、ファンが次第に彼女たちに親しみを覚えるようになり、本番の選挙への投票につながることもあるのだ。左伴と清水の配信には、2人のイベントへの心意気を感じた多くのファンが集まり、配信開始後数日で、あっという間に10位台まで上昇した。まさしくダークホース的な存在として注目されており、SHOWROOMイベントでも16位以内に入りそうな勢いを見せ付けている。
速報はあくまでも速報だ。実際にチーム8でもランクインが予想されていたメンバーが呼ばれていなかったり、もっと上位と思われていたメンバーも多かった。本番でどうなるかは誰にもわからないが、今のチーム8の勢いを世に知らしめる絶好の機会となりそうだ。
■佐藤 仁
シンクタンク研究員。ポップカルチャーやエンタメ・コンテンツが国際社会や日本経済に与える影響を研究。例えば日本とアジアのソフトパワーの源泉はどこにあり、これからどのように進化していくのかについてミクロ(個人単位)からマクロ(社会全体)まで幅広い視点から探求