森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.102

THE ORAL CIGARETTES、吉井和哉、菅原卓郎…ロックボーカリストの“歌”を堪能できる新作

cinema staff×アルカラ『undivided E.P.』

 cinema staff×アルカラの2バンドによるスプリットEP『undivided E.P.』。同作には両バンドの新曲、お互いの楽曲のカバーも収録されるが、注目は何と言ってもcinema staff、アルカラの共作による「A.S.O.B.i」(作詞・作曲はアルカラの稲村太佑)。<「西南西」から東へ北へと>(稲村)、<不思議な旅路 yeah>(飯田瑞規/cinema staff)という二人のボーカルの声から始まるこの曲は、ソウル、ラテン、ギターロックなどを自在に交えたアレンジを軸にしたナンバー。アルカラのどこに向かうかわからない奔放さ、cinema staffの緻密にして大胆な構築美がひとつになり、奥深い魅力を持った楽曲に仕上がっている。まったく色合いの異なる二人の歌の掛け合いもおもしろい。

cinema staff「first song(at the terminal)」undivided Ver.
菅原卓郎『今夜だけ俺を』

 9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎(Vo/Gt)のソロアルバム『今夜だけ俺を』のコンセプトはずばり“歌謡曲”。9mmの音楽性にはデビュー当初から歌謡的なエッセンスが色濃く含まれているので“もちろん似合うだろうな“とは思っていたが、その相性の良さは想像以上。心地よいファンクネスと抒情的なメロディ、<今夜だけでいい/君のベッドの中 かくまってくれないか>という歌詞が融合した表題曲「今夜だけ俺を」、80年代歌謡ロック的アプローチの「Baby どうかしてるぜ」、いなたさ全開のブルースロックと女言葉の歌詞がひとつになった「ドレスを脱がせて」など、シンガーとしての菅原の奥深い表現力をたっぷり楽しめる歌モノアルバムだ。

菅原卓郎 - 今夜だけ俺を

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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