イエモン菊地英昭によるbrainchild's、第7期メンバーに聞く“サウンドの充実”

第7期brainchild'sに聞く“サウンドの充実”

「叩きまくるよりはシンプルなエイトビートが好き」(岩中)

──しかも渡會さんの歌詞は、言葉遣いやフレーズが非常に個性的ですよね。

渡會:一応“渡會節”みたいなことを言ってもらってまして(笑)。耳馴染みがよすぎて何もひっかからなかったというよりは、変であるべきだなとは思うっていて。ある種発音が悪いとか何を歌っているかわからないとか、それも個性だと思うんです。それこそ聴いたときに「何これ?」みたいな部分やフックになるものを常に用意しないと、そもそもスーパーギタリストの横で歌っていてもお客さんは聴いてくれないなと思うので、そこは頑張ってますね。

──歌詞の中にも耳で聴いて響きを楽しむタイプと、引っ掛かりがあって目で確認したいと思うタイプがあると思うんですけど、渡會さんの歌詞は後者ですよね。

渡會:俺や神田くんはCDバブルが終わったあとにデビューした、大変な世代だったので、とにかくCDを買ってもらいたくてブックレットを読みたいと思ってもらえる歌詞を書こうと考えていたんです。それに自分が歌詞を読むのが好きなのもあるし、いろいろ発見があったほうがのちのち愛着が湧いてくることも多かった気がするので、そういう先輩方の手法を丁寧に引き継いでいこうと考えていたのもあります。

──なるほど。で、EMMAさんがおっしゃったように音の主張が強いバンドだけど、楽器が歌の邪魔はしていない。そのさじ加減は考えながら詰めているんでしょうか?

神田:鶴はスリーピースバンドだし、面白いバンドだなと思ってもらうには一人ひとりのウエイトや守備範囲をどんどん大きくしていかないと、寂しいバンドサウンドになってしまうんですよね。でも、歌を大事にしているから、歌の邪魔をしない演奏を心がけてきたんです。で、brainchild'sは4人バンドですけど、ボーカルがギターを弾かないこともあったりするので、そのへんは自分がやってきたバンドの経験をフル活用していて、そこまで特殊なことをここでしているという意識はあまりないですね。

──塊になって押し寄せてくる瞬間もあるんですけど、皆さんのプレイがしっかり聴き取れるといいますか。

神田:聴こえやすい、抜けが良い音というのは、視点を変えるとミスマッチで目立ちすぎているということだとも言えるんですね。でも、何をやっているかはわかってもらいたい。とすると、どこのへんの帯域で聴かせるべきなのか、ということになると思うんです。そういうところのやり方は、レコーディングをしながらもアイデアが浮かぶので、あんまり苦労はない気がします。

岩中:僕も基本的には歌が好きなので、歌の邪魔はしたくなくて。ギターとベースのフレーズも曲を作っている段階で、結構細かいところまでこだわって作り込んでいて、ドラムを叩いているときにちゃんとそこを聴きながら、空いているところを見つけて突っ込んでいくみたいな、そんな作り方ですね。あと、僕は叩きまくるよりはシンプルなエイトビートが好きなので、曲全体が寂しくならないように考えつつ、でも邪魔はしないプレイを心がけています。僕、中村達也さんがすごく好きで。達也さんのエイトビートってすごくカッコよくて、それでエイトビートが一番好きになったんです。

菊地:エイトビートといっても、スクエア(※機械的に、精密に叩くこと)じゃダメだもんね。ちゃんと人間味のあるエイトビートが叩けるか叩けないかが重要になってくるし。

──正確にビートを刻むよりも、人間ならではの揺らぎが見えてくるビートのほうが、聴いていて気持ち良いですし。

菊地:それは計算では絶対に作れないですからね。この2人(神田、岩中)はレコーディングでもお互いの目を見てプレイしてますから。

「ここからbrainchild'sも生きていく」(菊地)

──だからなのか、1曲目の「Better Day to Get Away」からグイグイ引っ張られて、10曲目の「STAY ALIVE」までスルッと聴けてしまうんです。序盤からの攻めた流れも良いですけど、僕は特に「On My Own」「Esper Girl」「STAY ALIVE」という終盤3曲の流れが大好きでして。

菊地:曲順は最後まで悩んだんですよ。1曲目と10曲目は最初から決まっていて、特に1曲目はオープニング用に決め打ちで作ったんですけど、中盤が難しくて。最終的にはアナログ盤に立ち返って、A面B面で構成を考えて、「Higher」でA面が終わり、レコードをひっくり返したら「TWILIGHT」からB面が始まる、そういう世界観で構築していったら、この曲順になりました。

──確かに「TWILIGHT」から仕切り直すような感じもありますものね。

菊地:それが描けたらいいなと思って。A面B面という構成には本当に良い意味での揺らぎがあったと思うんですよね。

──アナログにしろカセットにしろ、あのA面からB面に変えるタイミングに一呼吸置くことで、また気持ちが切り替えられるし。CDで10曲通して聴くのとはまた感覚が異なりますよね。

菊地:違いますね。あれを再現できたらいいなと思いつつ、曲順を決めていきました。

──なるほど。で、通常盤のみボーナストラックとして、ラストに「PANGEA」(2011年8月発売の2ndアルバム『PANGEA』収録)の再録音バージョンが収録されています。

菊地:これは、「PANGEA」という曲自体が好きなのはもちろんあるんですけど、シーケンスを流してCDに近い形で再現していた以前のバージョンではない、このメンバーならではの肉体的な「PANGEA」を残したくて。ライブでやると、ワッチがアドリブでファルセットを入れてくれテ、そういうのもカッコよかったし、せっかくなのでボーナストラックという形で残しておこうかなと思ったんです。新曲もまだ残っていたんですけど、それよりも「PANGEA」は今やっておきたいなと。

──そういう聴き応えのあるアルバムに対して、『STAY ALIVE』という力強い言葉をタイトルに選んだ理由は?

菊地:これは「STAY ALIVE」という曲ありきでして。アルバムの曲が揃ってきて曲順を考えるぐらいになって、まず曲を並べてみたときに躍動感を感じたんです。それぞれの曲に生命力があって、それがうねっているように感じられた。で、「STAY ALIVE」は死と反対に生かされているものは生きていく、っていう意味で名づけたんですけど、生命力が強いこのアルバムにふさわしいと思って、そのままアルバムのタイトルにもしたという。そこには、ここからbrainchild'sも生きていくという意味も含まれているんです。

──本当にこの音にぴったりのアルバムタイトルですよね。

菊地:本当に後づけなんですけどね。ひとつのコンセプトを立ち上げてやるのももちろんアリなんですけど、出来上がっていく過程でそれを思いついたことが今回は良かったんだと思います。

(取材・文=西廣智一)

■リリース情報
『STAY ALIVE』
発売:4月11日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥3,600+税
通常盤(CDのみ)¥3,000+税

<収録楽曲>
01. Better Day to Get Away
02. Twisted Shout
03. 地獄と天国
04. Rain Stain
05. Higher
06. TWILIGHT
07. それでいいよ
08. On My Own
09. Esper Girl
10. STAY ALIVE
Bonus Track(通常盤のみ)
11. PANGEA 2018

<DVD収録内容>※初回生産限定盤のみ
01. Better Day to Get Away –MUSIC VIDEO-
02. 精神一到何事か成らざらん –brainchild’s 10th Anniversary Special Documentary-

■ライブ情報
5月19日(土)東京 六本木 EX THEATER ROPPONGI
開場:17:00 / 開演:18:00
5月25日(金)愛知 名古屋 E.L.L.
開場:18:30 / 開演:19:30
6月9日(土)高崎 club FLEEZ
開場:17:30 / 開演:18:00
6月15日(金)宮城 仙台 darwin
開場:19:00 / 開演:19:30
6月16日(土)岩手 盛岡 CLUBCHANGE WAVE
開場:17:30 / 開演:18:00
6月24日(日)神奈川 YOKOHAMA BAYSIS
開場:17:00 / 開演:17:30
6月30日(土)京都MUSE 
開場:17:30 / 開演:18:00
7月01日(日)香川 高松 MONSTER
開場:17:00 / 開演:17:30

<公演に関するお問合せ>
SOGO TOKYO TEL 03-3405-9999

■関連リンク
brainchild's オフィシャルサイト
brainchild's Twitter
brainchild's Facebook
brainchild's LINE

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる