イエモン菊地英昭によるbrainchild's、第7期メンバーに聞く“サウンドの充実”

第7期brainchild'sに聞く“サウンドの充実”

「いかに吉井さんに寄せるか離れるかを勝手に想像」(渡會)

──初作品リリースから10年という節目のタイミングに、brainchild'sはメジャー移籍するわけですが。

菊地:僕もびっくりです(笑)。

神田:下積み10年ですね。

菊地:そうだね(笑)。でも、今の活動自体がbrainchild'sを始めた頃には想像してなかったスタイルなんです。結局自分のやりたいことを突き詰めていったらこういう形になったので、それをより広くの人に伝えられるメジャーという舞台で披露できるのは、このメンバーが集まったのと同じぐらい奇跡というか、そういう流れになっているというのが嬉しいですね。そこは続けてきたから報われたとか、そういうことじゃないような気がするんですよ。もちろんTHE YELLOW MONKEYが再集結したからいうのもあるんでしょうけど、それにも増して不思議な力を感じるというか。だから……注目されてるよ?(笑)。

神田:ありがたいです(笑)。

菊地:でも、その思いは持ってくれていると思うし、それが作品にもライブのパフォーマンスにも出ているかなと。しかも、そこで気負いしないのがこのメンバーの良いところ。それこそ、ここを踏み台にいろいろやってくれるほうが自分としては本望ですね。

──今回の『STAY ALIVE』は第7期brainchild's初のフルアルバム。とはいえ、以前のミニアルバムも6〜7曲は収録されていたので、実質数曲程度しか違わないわけで。

菊地:そうなんです。だから、そこまで「フルです!」って胸を張れない自分もいたりして(笑)。でも、今回はメンバーにデモを渡すときに12、3曲用意していたので、いつもよりは大掛かりかなという印象はありました。

──前作『PILOT』(2017年5月発売のミニアルバム)のときは多方面に向いたサウンド作りを意識していた印象がありましたが、今作は全体的にトーンの統一感がより強まっているように感じました。

菊地:前々作(2016年2月発売のミニアルバム『HUSTLER』)でやりたかった音楽性のために集めたメンバーでどんなことができるかなと思って作ったのが実験的な前作で、それを踏まえて作ったのが今回のアルバム。だから、どちらかというと原点回帰というか、太い芯のあるものを目指しました。それは楽曲のバラエティというよりは音像、世界観や明るさ暗さの統一感にこだわったということでして、「あ、これってあのアルバムだったよね?」ってすぐに思い出せるような音像ってあるじゃないですか。そこをアルバムとして大切にしたいなと思ったんです。

──なるほど。皆さんはEMMAさんから曲が届く際、今回は前作までとの違いを感じましたか?

渡會:EMMAさんからデモが届くと、俺の中ではいかに吉井(和哉)さんに寄せるか離れるかみたいなことを勝手に想像したりもするんですけど(笑)、中には「これ、THE YELLOW MONKEYでもbrainchild'sでもどっちでもいいかな? みたいな感じで作った曲なんだよね」って感じで投げられたりすることもあって。最初にもらったときは、どれがそれに当たる曲だろう、怖いな怖いなと。

──どの曲かは明かされていなかったわけですね。

渡會:はい。あとで聞いたりすることもあったんですけど、基本的にはEMMAさんがどのモードで作っていたのかをひたすら当てにいくみたいな作業から始めました。

菊地:あんまり言わないからね、最初から。

神田:でも、結構当たってるんだよね。

渡會:なので、最初にデータをもらったときは「フルアルバムかぁ……すごい戦いが始まるぞ」と思ってましたね(苦笑)。

「創作意欲がすごいのは、この環境がすごく楽しいから」(菊地)

──神田さんはいかがでしたか?

神田:僕の場合は、上から糸が垂れてきて「これ、掴んだらどこに出るんだろう?」みたいなワクワク感があるくらいで(笑)。最初にドラムと一緒にリズムを録って、そこにEMMAさんがギターを重ねて、ワッチ(渡會)の歌詞がどういうふうになるのかと、ちょっとずつできあがっていくので、最初はあんまり想像できないんですよね。そういう意味では、過去2作も含めて最初のデモをもらったときと同じでした。

──リズムに関してEMMAさんから指示があることは?

菊地:曲によってだよね。自分がデモを作るときに打ち込みで「雰囲気はこんな感じで」と渡す曲もあるし、ギターと歌だけでみんなに渡してスタジオに入ってから詰めていく曲もあるし。

岩中:ドラムが入っていないデモの場合は、自分が一番しっくりくるものから試していく感じですね。

──実は、今作を聴いてEMMAさんのメロディメイカー、ソングライターとしての冴えわたりぶりが本当にすごいアルバムだなと思いまして。

菊地:本当ですか? ありがとうございます。今は創作意欲がすごいんですよね。それはやっぱりこの環境がすごく楽しいからだろうし、もちろんTHE YELLOW MONKEYもあるからだし。最近は曲を作るときに、自信とは違う充実感から来るものなのかもしれないですけど、こういうギターが聴きたいとか聴かせたいとか、そういうところからまずはとりかかっていて。それに、自分がPro Toolsに慣れてきたというのもあるのかな(笑)。

神田:思考に対して、そっちでのストレスがないと(笑)。

菊地:そうそう。あとは、おかげさまで好きなギターを購入できているので、手に入って楽しくて、より一層ギターを弾いているんですよ。若い頃って特にそうだったじゃないですか。それに近いぐらいの感覚で今もいられるから、それも大きいのかもしれないですね。

──そういうEMMAさんのメロディに歌詞をつける渡會さんの作業も、なかなか大変なものがあるかと思いますが。

渡會:大変ですね(笑)。

菊地:自分は「ギターも存在感があって、ほかの楽器もちゃんと存在感があって、最終的には絶対歌に絡んでいる」というタイプの曲を作りやすいので、大変だと思いますよ。

渡會:なぜこのメロディラインなのか、ちゃんと根拠があると思うんですよ。それを「どういうことなんですか?」と確認しちゃうと、言われたまんまのことしかできないので、なるべく確認をしないで、絶対にこういうことだろうなと当てにいく作業を毎回するんです。EMMAさんは俺よりずっと長く音楽を聴いてプレイしてきているので、「これは何年代のどこを狙ったんだろう?」が全然わからないメロディも出てきたりして。そういうときは「ヒントだけください!」「これはデヴィッド・ボウイの、いついつの時代の……」「そこまでで大丈夫です!」ってやり取りをする(笑)。そこで、「このジメジメ感かぁ」とか「意外とカラッとしてるんだな」とかその年代のミュージシャンの人たちにしかわからない雰囲気を当時のミュージックビデオで勉強して、今の自分の言葉に置き換えていくんです。

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