デュア・リパ、“新たなルール”を示すミューズとしての存在感 日本初単独公演レポ

 今、世界で最も勢いのあるディーヴァと言ってもいいだろう、デュア・リパ。ロンドン育ちの彼女は2017年にデビューアルバム『Dua Lipa』をリリースし、「Blow Your Mind (Mwah)」や「New Rules」、「IDGAF」といった自身のヒットシングルを生み出してきただけではなく、つい最近ではカルヴィン・ハリスとのコラボ曲「One Kiss」を発表し、すぐにUKやヨーロッパ諸国にてチャート1位をマーク。実力はもちろん、幸運の女神までもが常に味方をしているのではと思わされるほどに、世界中にその魅力を振りまいている存在だ。今回、2017年の『SUMMERSONIC』への出演に続いて二度目の来日を果たしたデュア。日本では初の単独公演となった5月8日、東京・Zepp Tokyo。彼女の姿を心待ちにしていたファンはここ日本にも数多おり、販売開始から間もなくチケットはソールドアウトの状態だった。デュアが登場する前からすでに会場は相当温まっていたようで、ショーン・メンデスやリアーナ、ケシャといったシグニチャーなポップシンガーたちの楽曲がかかるたびにすでにオーディエンスが合唱を始める様子も見受けられるほどだった。

 ライブ開始時間の19時を回る頃会場には、自然と彼女の登場を待ちわびる「デュア!」という掛け声が。ステージは突然、真っ赤なライトに照らされ、ハードなドラムのサウンドが鳴り響く。冒頭は、キャリア初期の代表曲で、デュアの個性を決定付けたシングル「Blow Your Mind (Mwah)」からスタートだ。シャープなハスキーボイスで、ブルージーな深みもあるのがデュア・リパの歌声の魅力のひとつ。ナマで聴く彼女の歌声は、CDなどで聴くそれよりも、もっとダイナミックで深みがあるものだった。そのあと、すぐに「Dreams」、そしてショーン・ポールへ客演した「No Lie」と繋ぎ、会場全体をダンスホールのバイブスで包んだあとは、ラッパー、ワーレイのアルバム『SHINE』に収録され、メジャー・レイザー、そしてウィズ・キッドと共演した「My Love」、USでのブレイクを後押ししたミゲルとの「Lost In Your Light」を息つく暇もないほど連続してパフォーム。曲の合間には「みんなをパーティーに連れて行くよ!」とシャウトし、長い脚を蹴り上げながら全体のバイブスを上げていた。

 幕開けからの雰囲気を一変させるように、続く「Garden」ではキーボードのみの音色をバックに、スタンドマイクを使ってしっとりと情熱的に歌い上げる演出に。こうして聴くと、ボーカルのディテールもよく伝わってきて、改めて、デビュー間もない彼女があらゆるアーティストから引っ張りだこの存在であることがよく分かる。しなやかで表情豊かな歌声は、22歳という彼女の実年齢を考えると少し大人びて聴こえる。だが、実際に目の辺りにするキュートな振る舞いや底知れぬエネルギーからは、若くフレッシュな才能そのものだ。その抜群のバランス感が、多くの人を魅了するのだと再確認することができた。

 再びステージが転換し、2015年にリリースされたデュアの人気曲のひとつ、「Be The One」へ。オーディエンスが合唱する様子も絶好調で、本当に楽しそうな様子が伝わってくる。そして「次は、一番最初にできた私の曲を歌います。みんなのおかげでここにいる。みんなの顔が見れて嬉しいし、感謝の気持ちでいっぱい。去年、SUMMER SONICで来日して、自分の大好きな場所にこんなに早く戻って来れるなんて思わなかった。この曲は数年前にNYで書いた曲だけど、その時はまさかこんなに大勢の人たちの前で歌える日が来るなんて思ってなかった」と胸を打つスピーチを披露して、記念すべきデビューシングル「New Love」へ。一部、デュアがアカペラで歌うシーンもあり、彼女の真摯な気持ちが十分に伝わるパフォーマンスだった。

 ショーも後半に差し掛かり、アルバムの冒頭を飾る「Genesis」や、ダンスミュージック界の旗手とも言えるマーティン・ギャリックスとのコラボ楽曲「Scared to Be Lonely」、「Homesick」、そして「Hotter Than Hell」など緩急つけた展開で、さらにオーディエンスを惹きつけていった。本編は「Begging」で一旦幕が降りたものの、その後、間髪入れずに会場全体からアンコールを求めるデュア・リパコールが鳴り止まず、程なくしてバンドメンバーが再び登壇。「失恋したことがあるみんなのために!」とシャウトし、「IDGAF」をパフォーム。歌詞の1ライン目からオーディエンスの熱い合唱が続き、会場全体で〈今更遅すぎるよ、あなたのことなんて気にしてない(I Don’t Give A Fuck)〉と大合唱する爽快さ! そしてアンコールの最後はあの『TIME』誌が2017年を代表する楽曲第1位にも選んだビッグヒット「New Rules」を披露。大きな賞賛を集めて高らかに歌うデュアと、それに負けないくらいのアツさで応えるオーディエンス。会場の興奮度も最高潮に達し、はち切れんばかりの歓声でライブが終了した。

 デュア・リパの魅力といえば、美しい歌声や容姿はもちろん、異性に対して物怖じせぬ表現も多く見受けられるリリックと、その自由なマインドだ。今回のライブからは、まさにデュアが次世代のリスナーに向けて“新たなルール=New Rules”を示している新たなミューズであることをしっかりと感じさせられた。一貫して、筆者自身も興奮が止まらぬ刺激的なライブであった。

 

(写真=SARU (Ayumi Saruya))

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演

■リリース情報
Dua Lipa(Japan Special Edition) / デュア・リパ(ジャパン・スペシャル・エディション)
¥1,980(税抜)
発売中

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