X JAPAN、コーチェラ出演直前ライブに見た“20世紀Xの片鱗” 市川哲史『YOSHIKI復活の夜』評

 20世紀末(←こう書くと「昔々」感がハンパないな)の90年代に、それこそ思春期をXと駆け抜けたいわゆる〈運命共同体〉の元少年少女らが、この10周年を迎えた再結成X JAPANをどう捉えてるのか私にはわからない。

 私にとってはやはり、20世紀Xと21世紀Xは〈同名異バンド〉である。それはあくまでも感触であって、hideとSUGIZOの〈交代〉とか、再結成後いつの間にかYOSHIKIによる新ライブ名物として定着した、「うぃーあー?」「えーっくす!」「うぃーあー?」「えーっくす!」の不思議なコール&レスポンス無限絶叫パフォーマンス、といった具体的な違いではない。おもいきり違うけど。

 言ってしまえば同じ『スター・ウォーズ』でも、ジョージ・ルーカスによるオリジナル六部作と、ディズニー製作の近作『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』がどこか違うようなものなのだ。それでも20世紀組にとっては20世紀Xが、ご新規さんの21世紀組にとっては21世紀Xが〈X〉なのだから、30年以上にわたり認知される安心ブランドとなったこのバンドは、日本独自のエンターテインメントとして正しいのである。たぶん。

 再結成以降すっかりステージ上で喋り倒すようになったYOSHIKIが、この夜のMCでSUGIZOのビザ騒動の解決を報告した上でこう続けた。

「いろいろなことが起きるけどXは100転101起だから!」

 そういえば1992年5月、私と共著の人格別インタビュー(!)本『ART OF LIFE』の中で、YOSHIKIはこんな名言を吐いている。

「だから僕は5万1%の自信と、4万9999%の不安をいつも抱えてます。その2%の差が大きいんですよねぇ」

 元々パーセントで語るのが好きな男ではあったが「5万1%」とは、目茶目茶スケール感だけは感じさせるではないか。たぶん意味はないけど。だから今宵の「100転101起」というYOSHIKIらしい数字に、20世紀Xの片鱗を見つけてちょっと嬉しくなった私なのだ。本当か?

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。著書に『逆襲の〈ヴィジュアル系〉-ヤンキーからオタクに受け継がれたもの-』(垣内出版)『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック)などがある。

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