アイドルネッサンスの夏休みは、記憶として輝き続けるーー熱狂のラストライブを振り返る

アイルネ、ラストライブを振り返る

 2月24日、横浜ベイホールで行われた『ヨコハマで感謝するネッサンス!!』で解散したアイドルネッサンスが、これまでの“名曲ルネッサンス”全音源を収録したラストアルバム『アイドルネッサンス』を5月4日のデビュー日にリリースすることが決定した。改めて、熱狂と喪失感が入り混じった、あの夜のラストライブを振り返りたい。

 関係者エリアを含め、パンパンに敷き詰め状態になったフロア。スクリーンに円陣の様子が映り、メンバーがカメラに笑顔を振りまきながらステージへと向かっていく。ライブの幕を開けたのは、「ミラクルをキミとおこしたいんです」。2014年5月4日、AKIBAカルチャーズ劇場にてアイドルネッサンスが初めてファンのいるステージに立ち、歌い踊った始まりの曲だ。<始めるよ 準備はいいかい?/やらかすぜ そいつが可能性/悲しむより踊りまくって/奇跡の日々を始めようぜ>。笑顔と涙が入り混じった8人の表情は、その歌詞のメッセージを必死にこちらに伝えようとしているように見えた。

 アイドルネッサンスは、2014年より株式会社ソニー・ミュージックアーティスツが初めて手掛けたアイドルグループ。奇をてらったジャンルのアイドルが次々と生まれていく中、アイドルネッサンスが選んだのは、1950年代から2010年代までの名曲を歌とダンスで表現する“名曲ルネッサンス”だった。3年8カ月の活動の中でカバーしてきた楽曲は全75曲。活動3年目には、小出祐介(Base Ball Bear)作詞・作曲によるオリジナル曲4曲も発表した。グループのデビュー曲、Base Ball Bearの「17才」で描かれている、弾ける檸檬のような日々。まるでそれを具現化したのがアイドルネッサンスであり、数多の楽曲を自分たちの世界観へと昇華した先にあったのが、アイドルネッサンスだけのオリジリナリティであった。

 この日披露された25曲は、ファンのリクエスト投票結果を反映し、メンバーの感謝の気持ちとグループの集大成が詰まったセットリスト。熱気に満ちたフロアの盛り上がりとそれに溢れんばかりの気迫とパフォーマンスで応える8人。メンバー一人ひとりがそれぞれ身に纏った歴代の制服からの衣装チェンジを挟んだ9曲目までの中で、特筆すべきはBase Ball Bear feat.RHYMESTERの「The Cut」だろう。lyrical schoolとのコラボユニット・リリカルネッサンスとして、昨年1月に初披露され、CDとしても音源化されたこの楽曲。小出のボーカルパートをアイドルネッサンス、RHYMESTERのラップパートをlyrical schoolが担当していたが、lyrical schoolのメンバー変更により、昨年2月のリリースパーティー以降は披露されることはなかった。「The Cut」が再び息を吹き返したのは、今年1月にCLUB CITTA’にて開催された『年またぎ!名曲ルネッサンス全曲披露ライブ』でのこと。“全曲披露”と銘打たれていたこともあり、「The Cut」の披露は事前に予想されていたものであったが、蓋を開ければ全パートをアイドルネッサンス8人がマイクを繋いでいく、キレキレのパフォーマンスに進化を遂げていたのだ。CLUB CITTA’での公演が実質のところ、解散発表前の最後のライブであったため、アイドルネッサンスとしての「The Cut」は、計2回のみの披露となった。横一列に並んだメンバーが鋭い眼差しでフロアを指差すサビの振り、何よりも確実に上達していくマイクリレーは、素直に「続きが観たい」と思わせる未知の凄みを持ち合わせていた。

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 「The Cut」がそうであるように、アイドルネッサンスの楽曲は披露と共に成長し、グループと共に同じ時間を刻む、ある種の“ナマモノ”であったように思う。2016年11月のZepp DiverCity公演にて堂島孝平本人と歌った「6AM」、グループ初期から歌い続けてきた岡村靖幸「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」、フジファブリック「若者のすべて」では着実に迫りくる夏の終わりを儚いダンスで表現している。焦燥を抱えたまま大人になっていく自分、変わらぬ信念を描いたKANA-BOON「シルエット」は、Zeppでのライブから新井乃亜のボーカルがよりエモーショナルに、石野理子の変幻自在のフェイクが炸裂する「Music Lovers」は、ヒサシ the KIDとの共演でよりグループとの親和性を高め、初の全国ツアーにてアカペラで歌われたthe pillows「Funny Bunny」は、8人のハーモニーを再び感じさせてくれた。

 大切に、育むようにして紡がれてきた名曲ルネッサンスだが、最後の75曲目としてラストライブに用意されていたのがBase Ball Bear「changes」だった。〈changes さぁ、変わっていく/さよなら 旧い自分/新現実 新しい何かが待ってる〉。別れではなく、この先にあるのは生まれ変わった新しい自分。グループ随一のダンス力を誇る比嘉奈菜子が担当した楽曲の振り付けは、これまでの楽曲のダンスを思い起こさせる振りが取り入れられている。加えて、メンバーがライブの度に舞台袖で行っていた円陣「どかーん」の親指を立て宙にかざす振りが曲終わりに用いられ、暗がりのステージに浮かび上がるそのシルエットは、これまでの活動を糧に進んで行くという力強いメッセージ性を放っていた。

【「changes」2018.2.24ライブ映像(初披露)】アイドルネッサンス

 Zeppワンマンにて告げられたオリジナル楽曲への挑戦は翌年4月にメロウなサウンドの「交感ノート」にて封切られ、続けて、淡いアップテンポの「Blue Love Letter」、センチな「5センチメンタル」が節目となるライブでお披露目されていった。ミニアルバム『前髪がゆれる』のタイトル曲とも言える「前髪」は、アルバム収録曲の中でも特にアイドルネッサンスを代表する楽曲として成長していく。これら4曲を作詞、作曲した小出は、メンバーを思い綴られた物語の歌詞としてだけでなく、Base Ball Bearを代表する1曲であり、アイドルネッサンスのデビュー曲「17才」の地続きにある世界観にて描かれている。

 「前髪」はアイドルネッサンスが歌い続けていく、未来を見せてくれる楽曲だった。〈決まらない前髪を/また風が乱してゆく/いつまでも私たちきっと/決まることなんてないんだろう〉。この歌い出しを任せられたのは原田珠々華。アイドルネッサンスに憧れ、候補生から野本ゆめかと共にグループに加入した彼女は、徐々にそのボーカルが評価されていく。昨年の夏、アイドルネッサンスは『TOKYO IDOL FESTIVAL』のSMILE GARDENのトリという大舞台に立った。そこで披露した「前髪」の歌い出しで、原田は思ったように歌うことができなかった。ディファ有明でのワンマンライブで、完璧な歌い出しでリベンジを果たし、原田はそれ以降からニカッと満面の笑みを見せるようになる。同時に、会場に自然と湧き起こる拍手。“あの夏の夜”から解散ライブまでの、およそ半年の間で「前髪」もまた、一つひとつのライブを越えて、確実に大きくなっていった。ファンによるコールや合唱は一切ないが、大サビで8人が横一列に並び歌うその姿に、儚くも美しい煌めきを見てしまうのだ。

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