『ドラゴンボール』シリーズ主題歌はなぜ愛され続ける? 歴代ソングが残した功績から解説
創刊50周年に際して、様々な企画が進行している『週刊少年ジャンプ』作品の数々。中でも鳥山明による原作コミックの全世界発行部数が2億4000万部を超える大ヒット作であり、日本の少年にとってのヒーロー像に大きな影響を与えたのが、テレビアニメ『ドラゴンボール』シリーズだということに異論を挟む人はそういないだろう。
2月28日、現在放送中の最新作『ドラゴンボール超』の主題歌を集めたCDアルバム『ドラゴンボール超 超主題歌集』が発売される。ここでは歴代の『ドラゴンボール』シリーズの主題歌を振り返りながら、今回初めて作品にまとめられた『ドラゴンボール超』の主題歌ならではの魅力を考えてみたい。
初期のドラゴンボールの主題歌は、何年にもわたって同じ楽曲が使用され、物語の進行に合わせてアニメーションだけが差し替えられるという形式が取られていた。その第1弾となったのが、1986年に放送を開始したシリーズの元祖となる『ドラゴンボール』のオープニング(OP)曲「魔訶不思議アドベンチャー!」とエンディング(ED)曲「ロマンティックあげるよ」だ。中でも「魔訶不思議アドベンチャー!」は言葉で物語の世界観を可視化する描写の巧さによって、この時代のアニソンを代表する楽曲になった。1989年から1996年にかけて放送された次作『ドラゴンボールZ』では、影山ヒロノブによる1話~199話のOP曲「CHA-LA HEAD-CHA-LA」が170万枚以上を売り上げるモンスターヒットを記録。ここでは同じく影山ヒロノブが歌う200話~291話のOP曲「WE GOTTA POWER」も含めて、当初は冒険アニメだった前作『ドラゴンボール』を経て、格闘/ヒーローアニメとしての歩みを本格的にはじめた『ドラゴンボールZ』の世界観が、影山ヒロノブによる熱い歌声のパワーや、森雪之丞による<CHA-LA HEAD-CHA-LA><へのへのカッパ><今日もアイヤイヤイヤイヤイ>といった語感やリズムが意識された歌詞によって巧みに表現されていた。
ちなみに、1話~199話のED曲「でてこいとびきりZENKAIパワー!」ではイントロ部分のノイズを逆再生すると制作にかかわったスタジオのスタッフや制作スタッフの名前が登場する仕掛けが用意されていたこともファンの間で話題になった。また、『Z』では200話~291話までのED曲「僕達は天使だった」も「CHA-LA HEAD-CHA-LA」に続いて影山ヒロノブが担当している。そして、こうした楽曲が長く使用されることで、初期における『ドラゴンボール』のイメージが定着した部分は大きかったはずだ。
一方、1996年にスタートした『ドラゴンボールGT』では、FIELD OF VIEWの「DAN DAN 心魅かれてく」がOP曲に。坂井泉水(ZARD)と織田哲郎という90年代のJ-POPシーンを代表するビーイング系の2人が作詞作曲でタッグを組むことで、『ドラゴンボール』シリーズの楽曲にいわゆる“アニソン歌手”以外のアーティストによるアプローチをもたらした。『ドラゴンボールGT』ではED曲でも同様の手法が取られており、DEEN、ZARD、工藤静香、WANDSといった面々が新たに『ドラゴンボール』シリーズの楽曲を担当することになった。
その後『ドラゴンボールZ』のデジタルリマスター再編集版『ドラゴンボール改』を経て、2015年からはじまった『ドラゴンボール超』(以上、フジテレビ系)は、『GT』以来となるテレビ版最新オリジナルストーリーとあって、主題歌にも『ドラゴンボールGT』の延長戦上にある新たな試みが詰まっている。
まず、OP曲で印象的なのは、どの曲にも登場する「限界をもうけない/限界を突破する」というキーワード。鳥山明がストーリー原案や主要キャラクターデザインを担当した全編は悟空やベジータが神々や宇宙の最強戦士たちを相手に戦う壮大なスケールの展開に突入し、彼ら自身もスーパーサイヤ人ゴッド、スーパーサイヤ人ブルーといった新たな力を獲得して各宇宙の存続をかけた過去最高に熾烈な戦いが続いていく。「超絶☆ダイナミック!」「限界突破×サバイバー」という『ドラゴンボール超』の2つのOP曲で大切に描かれている「限界を突破する」というキーワードは、そうした作品の世界観を楽曲にも反映させたものだろう。