小野島大の新譜キュレーション 第15回

yahyelが2ndアルバム『Human』で強めた“歌もの”としての訴求力 小野島大が選ぶ新譜6選

Meat Beat Manifesto『Impossible Star』

 UKの大ベテラン、ジャック・デンジャーズ率いるミート・ビート・マニフェスト(Meat Beat Manifesto)の新作『Impossible Star』(MBM Records)。かつてUKのパブリック・エネミーと言われた過激なサンプリング攻撃は影を潜めましたが、ダビーで抑制されたアンビエント・テクスチャーとドローン・ノイズ、躍動するブレイク・ビート、縦横無尽なサンプリング、メランコリックで叙情的なメロディなど、抜群のバランス感覚で円熟の極みを聴かせる見事な傑作に仕上がっています。

Shawn Rudiman『Timespan』

  デトロイトのベテランプロデューサー、ショーン・ルディマン(Shawn Rudiman)の4年ぶり6枚目のアルバム『Timespan』(Pittsburgh Tracks)。デトロイト・テクノの伝統を受け継ぐ王道のコズミックで叙情的アナログ・サウンドを堂々と展開。まったく揺らぐことのない堅牢なシンセ・サウンドと、ツボを心得た見事なアレンジ、ダンス・グルーヴは抜群の安心感・安定感です。テクノはこうでなくちゃと思わせるベテランらしい一作です。


Nightmares On Wax『Shape The Future』

  <Warp Records>を初期から支える大ベテラン、ナイトメアズ・オン・ワックス(Nightmares On Wax)の5年ぶり8作目が『Shape The Future』(Warp Records / Beat Records)。ヒップホップやレゲエ/ダブ、ソウル、R&Bを消化しUKブレイクビーツの手法で再構成したスモーキーなサウンドは、まさしくこの人ならではの唯一のもの。ロンドンの曇り空のように憂愁の色濃いサウンドは円熟の極みです。いつになくソウルフルな歌ものとしてのディープでスピリチュアルな味わいを増したトラックが並び、充実ぶりを示します。長いキャリアを通じての最高傑作ではないでしょうか。

Nightmares on Wax - Citizen Kane ft. Mozez, Allan Kingdom
Nightmares on Wax - Back To Nature ft. Kuauhtli Vasquez, Wixarika Tribe

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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