PAX JAPONICA GROOVE×VJyou特別対談
ライブ演出×テクノロジーが次に向かう未来は? PAX JAPONICA GROOVE×VJyou対談
黒坂「今回のライブも所属してたら絶対に断られてる」
――話は変わりますが、黒坂さんは先ほどおっしゃってたようにチームラボなどのイベント用に楽曲を制作する機会も多いですが、そういった映像のつく音楽を作るにあたって心がけていることはありますか?
黒坂:ないと言ってしまったらここで話が終わってしまうんですけど(笑)。ただ、自分の場合は意識しなくても想像の中に入りこむというか映像が見える音になるんですね。なのでテーマをいただいたら、非常に楽しくやらせていただいてます。
――そういった楽曲を作る場合、イベントによっては映像と同期させる必要もあると思うのですが、その場合はどのように制作されるのですか?
黒坂:例えば何秒とかの時間の指定をいただいて、それに合わせて作っていきます。
――映像や演出効果との親和性はどのように調整されるのですか?
黒坂:自分の普段の楽曲作りでも、いまは完全に外に向いてて、お客さんがどう楽しんでくれるかというところばかり考えてるので、そこは自然体でできるようになってますね。昔は曲に対してのエゴが強かったんですけど。
――チームラボさんやライゾマティクスさんとお仕事されたときは、どのように意識されましたか?
黒坂:演出の方からコンセプトをいただけるので、その文章なり絵を見て想像して作って、その過程でどういう風にデザインすればお客さんがどう感じてくれるのかということは考えましたね。そこは普段の曲作りでも聴き手の立場を意識して作ってるので。
――例えば、VJの演出チームとタッグを組んで制作すると、より親和性のある楽曲が生まれるイメージもあるのですが。
黒坂:ただ、そうなると下手すると相手に合わせにいってしまうというか、置きにいってる感じにもなりえますよね。
VJyou:ひとつの小説の原作があって、それをアニメ化するのか、映画化するのかの違いに近いと思うんですよ。
黒坂:そこは相手の個性なので、どうとでもしてほしいという思いのほうが強いかもしれないですね。もちろんコンセプトに沿って自分が思う最大限の楽曲は作りますけど、あとは何なら破壊してもらってもいいですし(笑)。むしろそのほうがおもしろいものが生まれるかもしれないですからね。
VJyou:自分もいままで同時並行で作って成功した覚えはないですね。音か映像のどちらかが先にあってそれに合わせる、コンテンツの核がしっかりしてないと難しいんですよ。
黒坂:もやっとしそうですしね。もしくはこじんまりと収まってしまうか。相手への遠慮があったりとかもしますでしょうし。やっぱりクリエイティブは尖がってほしいですからね。
――黒坂さんはいまご自身でレーベルも運営されていますが、その利点はどういったところにありますか?
黒坂:とにかくジャッジを早く決めれるので、自由にできるというのが大きいですね。やりたいと思ったらあちこちに相談しなくていいですし、今回のライブもどこかに所属してたら絶対に断られてますからね(笑)。
――自分のクリエイティブしたいことを自由に作れる環境にあると。
黒坂:そうですね。良くも悪くも自己責任なので、自分が納得したことをできるっていう。自分がデビューした頃はシーンで売っていく意識が強かった時代なので、レーベルに入らないとなかなかデビューもできなかったと思うんですよ。自分も昔のデモテープを送ってた音楽少年の時代は、A&Rといえば神様以上の存在だったわけですよ。なのでいまでもそういう感覚は残ってますね(笑)。いろいろな経験を経て2013年に独立しましたけど、いきなりというのは無理だったと思います。
――自分の音楽を届けるために工夫されてることはありますか?
黒坂:やっぱりブランディングだと思うんですよ。PAX JAPONICA GROOVEといえば綺麗なピアノがありつつ疾走感のある楽曲というイメージを持たれてることが多いと思うんですけど、ブランディングというのは結局お客さんがどう思ってるかだと思うんですね。もちろん自分でこうしたいというのもブランディングでしょうけど、いまはお客さんがどう思ってるかが掴めてきたと思うので、引き続きその線でがんばっていこうと思ってます。
――和テイストというのも特徴としてありますしね。
黒坂:そうですね。和テイストってけっこうコテコテになってしまいがちなので、なるべくスタイリッシュにやりたいというのはあります。あとは自分のなかで海外のマネをしないというのがありまして。海外の方が和楽器の音を使うと何か変じゃないですか。あの感じと同じで日本人が向こうのEDMを作ろうと思ってもどこか変になるんですよね。僕も作ってみたんですけど、ただの劣化版になったので(笑)。もちろん世界と戦える日本人の方もいらっしゃるんですけど。
――サブスクリプションのサービスも一般化して、世界に向けてご自身の音楽を発信するような仕組みも整ってきてると思うのですが、そういった観点でアプローチを考えたりは?
黒坂:ボーカルものに関して言うと、僕は日本人のボーカリストによく歌ってもらってるんですけど、そこは英語がネイティブの方じゃないと世界では無理だと思うんですね。で、英語がネイティブの方を使うと日本ではそれが必ずしも良いとも言い切れない部分もあって。きっとリアルというか身近な感じも大事なんですよね。なので、おいおいは考えてる状態ですね。
――背伸びしてやっても仕方ないと。最終的にこうなりたいというビジョンはありますか?
黒坂:難しいですけど、あまり考えてないです(笑)。ただ自分が作る曲に飽きてきたり、悪い意味で手癖しか出てこなくなったら辞めるんでしょうけどね。今年の6月にアルバムをリリースしたんですけど、いまも来年の春にアルバムを出すので作ってまして。だから部活が終わった後にマラソンをさせられてるような気分で(笑)。
――でも、自分で作ると決めてやってるんですよね(笑)。
黒坂:はい、自分でやってます(笑)。
――今回のライブもそうですが、いまはとにかくクリエイティブ欲が高まってるということでしょうか。では、最後にワンマンライブへの意気込みをいただけますか。
黒坂:こういうのが難しいんですよね(笑)。ただとにかくお客さんに楽しんでほしい、それだけでやってます。普段ライブやクラブに行かれない方も、僕も初めてのようなものなので(笑)是非「マストで来てください!」です。
VJyou:でも、年始の開催なので、その1年間でいちばん思い出に残るものにしたいですね。1月5日の時点でその1年間のものは全部見終わったみたいな感じで。
黒坂:盛りだくさんですからね。衝撃の年始をお送りします。
(取材・文=北野創/写真=林直幸)
■ライブ情報
PAX JAPONICA GROOVEワンマンライブ『NEW YEAR SPECIAL SET -EN:VISUAL & Extended-
日程:2018年01月05日(金)
場所:代官山UNIT
バンドメンバー:GIRA MUNDO(Gt)/北條太朗(Ba/ex.DOPING PANDA)/西川邦博(Dr)/中村仁樹(尺八/HANABI)/Moroboshimann(三味線)
ゲストボーカル:chi4/tomoe sugo/Mai Hernandez/Hiro-a-Key
エアリアルパフォーマンス:GRO vi ART
■PAX JAPONICA GROOVE
「和」とダンスミュージックの融合をテーマに、2006年shuhei kurosakaのソロプロジェクトとして活動スタート。2017年6月にはキャリア初の夏をテーマにしたアルバム「Naked Blue」をリリースしiTunesダンスチャート1位にランクイン。同年7月には幕張メッセで行われたモンスターストライクのライブエンターテインメントショー「XFLAG PARK2017」のオープニングパフォーマンス(演出/佐々木敦規氏、パフォーマンス/サムライロックオーケストラ、映像/ライゾマティクス )の楽曲を制作。また7/28より渋谷ヒカリエにて開催された「バイトル presents チームラボジャングルと学ぶ!未来の遊園地」における音楽をDAISHI DANCEと共に担当する。9月にはRedbullアスリートJason Paulの最新映像の吉田兄弟によるテーマ曲に参加 。
■VJyou
高校時代よりベーシストとしてバンド活動や作曲活動を開始。2006年、しばし滞在していたドイツで出会った光景をきっかけに、映像と照明を掛け合わせた空間演出家VJyouとして活動を開始。2008年にベルギーのArkaos社よりGrandVJ Artistとして登録されたのをきっかけに、アップルストアなどでVJセミナー講師も行うようになる。 「いつも歩く道からほんの少し違った世界」をテーマに、実写素材とプログラミング素材を掛け合わせたインタラクティブで有機的な表現を続けた結果、ダンスと画を融合させたLiveCinemaという作品作りを開始。2014年にはCID ユネスコ WORLD DANCE CONGRESS 2014 にてLiveCinema 『Awake』を上演するなど、国内外問わず精力的に活動を続けている。