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『夏フェス革命』著者インタビュー

“フェス”を通して見る、音楽と社会の未来とは? 『夏フェス革命』著者インタビュー

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フェスはGoogleやAmazonなどのプラットフォームにも通ずる

ーー「協奏のサイクル」は、ロック・イン・ジャパン以外のフェスでも働いているものなのでしょうか?

レジー:「フェス」と呼ばれて継続的に続いているイベント全般で「協奏のサイクル」は働いていると思います。ただ、その中でも代表的なものをひとつあげるならばロック・イン・ジャパン、ということになるのではないでしょうか。というのも、フジロックやサマーソニックは、立ち上がった当時と今を比べても、志向しているものはある程度共通している印象があるからです。もちろん、時代に応じてのマイナーチェンジはありますし、常に新しい取り組みを行っていると思うんですけど、ロック・イン・ジャパンに関しては2000年に開催されたものと2017年の今時点の違いが他のフェスに比べて顕著ですよね。環境や出演者も含めて、参加者が求めていたもの、もしくは参加者側からの自主的な動きを、ロッキング・オン側が積極的に取り入れていったからこその今の姿なのかなと。フェスとしての規模がどんどん大きくなっているのも、この「協奏のサイクル」の存在で説明できるのではないかと思っています。フェスの形を大胆に変えていくことが、新しいユーザー層の獲得につながっているはずです。

――それに続く第3章で、「フェスにおける『協奏』の背景」として、SNSの浸透をはじめ、さまざまな社会的変化にも触れながら、最後の章では「『協奏』の先にあるもの」として、それがもたらす問題点や今後の課題についても、きっちりと書かれていますね。

レジー:「音楽に関するイベントが盛り上がっているんだから、音楽業界にとってはプラスに働いている」という見方も全然あるとは思うんですけど、それが音楽業界にとって本当に良いことなのかという疑問も、個人的には持っていて。単に「フェスが盛り上がっていて、ライブ市場は盛況です!」みたいな話ではないんじゃないかと。それこそ、ミュージシャンにインタビューをしていても、フェスに関するアンビバレントな思いを抱えている方もいますので。フェスの周辺で生じる恐れのある“歪み”みたいなものは、この先社会全体でも問題になるような話を先取りしているのかもしれない、と感じています。

――そのあたりは、音楽業界の中の人ではない、レジーさんだからこそ書ける話のように思いました。

レジー:そうかもしれないですね。大きなフェスには、GoogleやAmazonなどのプラットフォーム、つまりネット上ですごく権力を持っているプレーヤーに通ずるものがあると思うんです。コンサルタントとしての仕事においても「プラットフォームとしてのビジネスをいかに設計するか」「そういう構造を作れば関連するプレーヤーに対して主導権を握ることができるからビジネスを優位に展開できる」というような話をすることがあるんですが、フェスというのは音楽業界のなかですでにそういった力を持つものになっているんじゃないかと感じています。

――夏フェスのみならず、年末のカウントダウンジャパンなどを含めると、ロッキング・オンの事業としても、相当大きいものになっていますからね。

レジー:そうなんですよね。一方で、プラットフォーム・ビジネスの難しいところは、「“場”を作る企業がいちばん強い」と言いつつも、コンテンツを提供する人たちがいない限りは成立しないという点です。だから、プラットフォームが強くなり過ぎた反動としてコンテンツを提供する側が疲弊するようなことが起こると、ゆくゆくはプラットフォーム自体が成立しなくなる可能性もあると思います。そのあたりは音楽業界における「アーティストとフェスの関係」というようなことだけでなく、たとえば「メーカーとAmazonの関係」にも当てはまりますし、メガプラットフォームなしでは便利な生活が送れなくなっている今の社会全体の課題にもつながっていく話だと思っています。

ーー最後にこの本をどんな人に読んでもらいたいですか?

レジー:もちろん、音楽を好きな人には読んでもらいたいですし、今、自分たちが楽しんでいるフェスというものの変遷を知ってその人なりに咀嚼してもらったり、あるいは「いや、違うんじゃないの」という反論も含めて、考えてもらえたらいいなと。また、『夏フェス革命』は、もちろん音楽の本ではあるんですけど、音楽を通して世の中の有り様を見たり、ビジネスという切り口からのヒントを導き出したいという思いで執筆したので、そういうところに関心を持っている人に読んでいただいて、問題意識を共有したいですね。

――必ずしも「音楽」というジャンルに縛られた本ではないと。

レジー:はい。フェスに限らず、コアな人たちに人気になって、それが徐々に広がっていくと、「流行っているから行きたい」というタイプの層が流入してくる、というのは文化が広がっていく流れとしては定番だと思うんですよね。そういったプロセスの裏側にあるものにいろいろな角度から迫っているつもりなので、「なぜ物が流行るのか」「それがどうやって広がっていくか」「広がっていった結果何が待っているのか」、という現象そのものに興味がある方にも読んでいただけると、個人的には嬉しいなと思っています。

(取材・文=麦倉正樹)

■商品情報
『夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー』
著者:レジー
価格:1,600円(税抜き)
発売日:12月11日(予定)
判型:四六版
頁数:約224頁(予定)
発行:株式会社blueprint
発売:垣内出版株式会社
ISBN:978-4-7734-0505-7(C0073)

<目次>
はじめに
イントロダクション
・はじけなかった「フェス・バブル」
・音楽好きの理想郷から季節の風物詩へ
・フェスを通じて現代社会を見る
・「フェス文化」を象徴するロック・イン・ジャパン
・音楽ライター兼戦略コンサルタントから見たフェス

第1章 フェスは「協奏」によって拡大した
・典型的なフェスの風景
・フェスが提供する「3つの価値」
・最初は「豪華出演者によるイベント」だった
・多様なプレーヤーを巻き込む現代のフェス
・フェスを「協奏」する参加者
・誰もが想定顧客となるフェスマーケット
・ビジネスにおける「共創」と「協奏」
・プラットフォームとしてのフェス

第2章 ケーススタディ:「協奏」視点で見るロック・イン・ジャパンの歴史
・「世界有数のロックフェス」になるまで
・出演者は「ロック」でなければならないのか
・マスもコアも満足させるブッキング
・タイムテーブルはアーティストの「格」を示す
・ホスピタリティの追求
・「安全・安心」のためのダイブ・モッシュ禁止
・ユニフォームとしてのオフィシャルグッズ
・「一体感」の心地よさとその弊害
・DJブースと矢沢永吉から「一体感」を考える
・参加者によって「変化させられた」ロック・イン・ジャパン
・ロッキング・オンに備わる「協奏」のDNA
・「雑誌」から「フェス」へ

第3章 フェスにおける「協奏」の背景
・なぜ参加者が「主役」となったのか
・「ライブ以外」の楽しみ方の発見
・mixiの登場とセルフブランディング
・ファッション誌の参入、そして「夏のレジャー」へ
・『モテキ』で描かれた「恋愛の舞台」としてのフェス
・震災、SNS、スマホ、フェス
・ハロウィン、日本代表戦、フェス
・『君と夏フェス』『君とゲレンデ』
・インスタシェアを巡る争い
・フェスは時代の流れを先取りしていた

第4章 「協奏」の先にあるもの
・「フジロッカーズ」の高齢化と育成
・フェスで顕在化する2つの格差
・音楽シーンの中心はフェスになったのか
・タイムテーブルとヒットチャート
・「勝ち上がる」ための音楽
・「一体感」への問題提起
・「フェス」と「紅白歌合戦」
・「部屋でフェスが楽しめる時代」は来るか

おわりに
・音楽を「聴かなくてはいけない」のか
・プラットフォーム上位時代の行き着く先

あとがき

<内容紹介>
 音楽ブロガー・ライターとして人気を博すレジーによる待望の初著書。
 2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設し、現在は音楽媒体「Real Sound」「MUSICA」「M-ON! MUSIC」を中心に寄稿。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が、業界内外で評判を呼んでいる。また、普段はコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発などに従事している。
 日本のロックフェスティバルの先駆けとして1997年にはじまったフジロックフェスティバル。その後、ライジングサンロックフェスティバル、ロック・イン・ジャパン・フェスティバル、サマーソニックが開催され、2000年には現在の「4大フェス」が揃う。それから今に至るまで、「夏フェス」はどう変わってきたのかーー。
 今や夏の一大レジャーとして定着した「夏フェス」。豪華アーティストの共演が売りだった音楽ファンのためのイベントが、多様なプレイヤーを巻き込む「一大産業」にまで成長した鍵は、主催者と参加者による「協奏」(共創)にあった。世界有数の規模に成長したロック・イン・ジャパン・フェスティバルの足跡や周辺業界の動向、SNSなどのメディア環境の変化を紐解きながら、その進化の先にある音楽のあり方、そして社会のあり方を探る。

<著者紹介>
 1981年生まれ。海城高校、一橋大学商学部卒。大学卒業後の2004年から現在に至るまで、メーカーのマーケティング部門およびコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発、新商品開発などに従事。会社勤務と並行して、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が話題となり、2013年春頃から外部媒体への寄稿を開始。主な寄稿媒体は「Real Sound」「MUSICA」「M-ON! MUSIC」など。
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■イベント情報
レジー × 佐々木俊尚 トークイベント『夏フェスに見る音楽ビジネスの未来』
2017年12月14日(木)青山ブックセンター本店・小教室
時間:19:00~20:30
開場:18:30
料金:1,350円(税込)
定員:50名様

<受付方法>
・店頭:青山ブックセンター本店レジにて受付中
・オンライン:青山ブックセンター本店サイトにて受付中

<問い合わせ>
・電話:03-5485-5511/受付時間10:00~22:00

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