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レジー初の著書『夏フェス革命』よりイントロダクション公開:はじけなかった「フェス・バブル」

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音楽好きの理想郷から季節の風物詩へ

 ここ数年ですっかり夏の定番イベントとなった音楽フェス。もしまだ行ったことがないな
ら、今年こそデビューすべき! フェスビギナーでも安心して行ける、フェスファッション
や持ち物、ヘアアレンジ、フェス情報など徹底的にレクチャーします。
(『CLASSY』光文社/2015年8月号/P141) 

 最近では雑誌やウェブなど様々な場所でこのような内容の記事を目にするようになった。フェスを「夏の定番イベント」として捉えて、その空間に存在している(暗黙の)ルールやドレスコ ードを紹介し、「デビューしてみませんか?」とまとめる構成が一般的である。こういう切り口から描かれるフェスに、本来のメインコンテンツであったはずの音楽の話が介在する余地はほとんどない。前述の記事に書かれている「初めてのフェス。何を着るのが正解?」(P140)「フェスっぽい簡単ヘアアレンジを教えてください!」(P143)といった内容はそのまま花火大会における浴衣の着方に置き換えられそうなものになっており、フェスが「どんな人でも楽しめる、 季節の風物詩」として位置づけられている。

 1997年にフジロックの開催が発表された際の主な反応は、「Red Hot Chili PeppersもRage Against the MachineもBeckもThe Prodigyも出るなんだかすごいイベントが富士山の近くで開催されるらしい」という類のものだったと記憶している。当時筆者は高校1年生で、開催場所やチケット代など含めて少し敷居が高く感じられたため参加には至らなかったが、そんなラインナップが日本に集まるということに強い高揚感を覚えていた。それゆえ、台風の直撃により2日目が中止になってしまったことには非常に落胆した。また、中止決定後に撮影されたゴミだらけの会場写真や「Tシャツで行ったら凍え死にそうになった」といった旨の参加者のコメントなどを通じて、「フェスというのは過酷なものだ」という認識が刷り込まれた。

 筆者が初めてフェスに参加したのはその翌年、1998年のフジロックである。会場を東京の豊洲に移して行われたこの年のフジロックに「山奥であるがゆえのハードさ」といった趣はなかったが、それでも開催直前に降った雨のせいで地面はドロドロになっており、初日終了後には履いていった靴を処分する羽目になった。2日目には今では「伝説のステージ」などと呼ばれるこ ともあるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのライブ(オーディエンスが盛り上がりすぎて将棋倒し的な状況が頻発し、ライブ途中での中断を余儀なくされた)を炎天下の中ステージ前方部で体験し、ほぼ脱水症状のような状態になった。それから2年後、初開催となったロック・イ ン・ジャパンでは、初日にDragon Ashのステージを見て感動のあまり号泣してしまった一方で、 翌日には台風による豪雨と突風の中でTHE YELLOW MONKEYのライブを見たあとに残りのアクトの演奏中止がアナウンスされる場面にも立ち会った。

 10代からアラフォーに差し掛かろうとする今に至るまで毎年のようにフェスに参加しているが、「強烈な環境で刺激的な音楽を浴びるための場」から「皆で楽しく夏らしさを味わうための場」への変容という大きな流れの存在を感じることがたびたびある。もちろん今でも前者のような体験を期待する層や実際にそういう価値を提供してくれる場も存在するはずだが、フェスという娯楽が一般化する中で社会から求められているのは後者の雰囲気のように思える。こういった流れについて個人的にはいろいろと思うところもあるが、本書はそれに関する価値判断を主題とするものではない。その流れはなぜ起こったのか、具体的に何かきっかけがあったのか、この流れが世の中に何をもたらしたのか、といった部分に焦点を当てる。かつて一部の音楽ファンに対して前者のような喜びを提供していたフェスは、いつしか後者のような全方位の娯楽に変貌した。そして、そんな変化こそがフェスというものを狭いコミュニティから解き放ち、「バブル」を越えた存在に導いたのではないだろうか。

■商品情報
『夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー』
著者:レジー
価格:1,600円(税抜き)
発売日:12月11日(予定)
判型:四六版
頁数:約224頁(予定)
発行:株式会社blueprint
発売:垣内出版株式会社
ISBN:978-4-7734-0505-7(C0073)

<目次>
はじめに
イントロダクション
・はじけなかった「フェス・バブル」
・音楽好きの理想郷から季節の風物詩へ
・フェスを通じて現代社会を見る
・「フェス文化」を象徴するロック・イン・ジャパン
・音楽ライター兼戦略コンサルタントから見たフェス

第1章 フェスは「協奏」によって拡大した
・典型的なフェスの風景
・フェスが提供する「3つの価値」
・最初は「豪華出演者によるイベント」だった
・多様なプレーヤーを巻き込む現代のフェス
・フェスを「協奏」する参加者
・誰もが想定顧客となるフェスマーケット
・ビジネスにおける「共創」と「協奏」
・プラットフォームとしてのフェス

第2章 ケーススタディ:「協奏」視点で見るロック・イン・ジャパンの歴史
・「世界有数のロックフェス」になるまで
・出演者は「ロック」でなければならないのか
・マスもコアも満足させるブッキング
・タイムテーブルはアーティストの「格」を示す
・ホスピタリティの追求
・「安全・安心」のためのダイブ・モッシュ禁止
・ユニフォームとしてのオフィシャルグッズ
・「一体感」の心地よさとその弊害
・DJブースと矢沢永吉から「一体感」を考える
・参加者によって「変化させられた」ロック・イン・ジャパン
・ロッキング・オンに備わる「協奏」のDNA
・「雑誌」から「フェス」へ

第3章 フェスにおける「協奏」の背景
・なぜ参加者が「主役」となったのか
・「ライブ以外」の楽しみ方の発見
・mixiの登場とセルフブランディング
・ファッション誌の参入、そして「夏のレジャー」へ
・『モテキ』で描かれた「恋愛の舞台」としてのフェス
・震災、SNS、スマホ、フェス
・ハロウィン、日本代表戦、フェス
・『君と夏フェス』『君とゲレンデ』
・インスタシェアを巡る争い
・フェスは時代の流れを先取りしていた

第4章 「協奏」の先にあるもの
・「フジロッカーズ」の高齢化と育成
・フェスで顕在化する2つの格差
・音楽シーンの中心はフェスになったのか
・タイムテーブルとヒットチャート
・「勝ち上がる」ための音楽
・「一体感」への問題提起
・「フェス」と「紅白歌合戦」
・「部屋でフェスが楽しめる時代」は来るか

おわりに
・音楽を「聴かなくてはいけない」のか
・プラットフォーム上位時代の行き着く先

あとがき

<内容紹介>
 音楽ブロガー・ライターとして人気を博すレジーによる待望の初著書。
 2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設し、現在は音楽媒体「Real Sound」「MUSICA」「M-ON! MUSIC」を中心に寄稿。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が、業界内外で評判を呼んでいる。また、普段はコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発などに従事している。
 日本のロックフェスティバルの先駆けとして1997年にはじまったフジロックフェスティバル。その後、ライジングサンロックフェスティバル、ロック・イン・ジャパン・フェスティバル、サマーソニックが開催され、2000年には現在の「4大フェス」が揃う。それから今に至るまで、「夏フェス」はどう変わってきたのかーー。
 今や夏の一大レジャーとして定着した「夏フェス」。豪華アーティストの共演が売りだった音楽ファンのためのイベントが、多様なプレイヤーを巻き込む「一大産業」にまで成長した鍵は、主催者と参加者による「協奏」(共創)にあった。世界有数の規模に成長したロック・イン・ジャパン・フェスティバルの足跡や周辺業界の動向、SNSなどのメディア環境の変化を紐解きながら、その進化の先にある音楽のあり方、そして社会のあり方を探る。

<著者紹介>
 1981年生まれ。海城高校、一橋大学商学部卒。大学卒業後の2004年から現在に至るまで、メーカーのマーケティング部門およびコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発、新商品開発などに従事。会社勤務と並行して、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が話題となり、2013年春頃から外部媒体への寄稿を開始。主な寄稿媒体は「Real Sound」「MUSICA」「M-ON! MUSIC」など。
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