『不思議の国の武道館と大きな稲穂の妖精たち 〜キャッツの日〜』
レキシは“笑撃の歴史”を刻んできたーーデビュー10周年武道館に見た進化の軌跡
アンコールはまたもVTRから。不思議の世界をさまようレキシの前に、稲穂の妖精(岡井千聖)とキャッツの妖精(やついいちろう)が登場し、「最近、稲穂もキャッツも飽きてるらしいけど、これからも続けるように!」と伝え、元の世界へ返す……というところで再び巨大オルゴールの蓋が開き、中から稲穂の妖精コスチュームをまとったレキシが再登場。バンドメンバーもしっかり同じ衣装を着せられている。「やっと稲穂を使う時がきましたよ!」との声で始まったのはレキシワールドの集大成的大名曲「狩りから稲作へ」。1万人の稲穂(手稲穂含む)が揺れる中〈稲作中心 稲作中心 日本の歴史〉と大合唱が巻き起こる。
と、ここで曲は中断。キャッツの妖精姿のやついいちろうとともにB'zの「ultra soul」や米米クラブの「君がいるだけで」などを織り交ぜながら、恒例のギャグの応酬が始まる。加えてステージには“大稲穂様”なるレキシの顔立ちを忠実に再現した巨大な作り物も登場し、もはや何のライブかわからないカオス空間が出来上がったところで「高床式〜」からのお約束「キャッツ!」を全員でシャウト。最後には「お江戸が好き〜」とファンに感謝を捧げ、充実の東京公演は幕を下ろした。
思えば、SUPER BUTTER DOG主催の野外イベント『ファンキー大百科』のオープニングアクトとして登場したレキシを目の当たりにして以来、ライブのたびに“笑撃”を受け続けている。歴史をモチーフにした愉快な歌詞とは裏腹に美メロで聴かせる、照れ隠しにも似たちぐはぐさはレキシの魅力のひとつであるが、それ以上にライブでの遊び心、何度観ても飽きさせないパフォーマンスは唯一無二だ。今や掛け合いひとつひとつにも文字通りファンと作り上げてきた“歴史”が刻まれている。紛れもなくライブアクトとして、進化し続けている。それをこのライブでは証明して見せたのではないだろうか。老若男女が歌い踊り、我を忘れて稲穂を叫ぶ宴に、レキシ10周年の軌跡を見た気がした。
(文=渡部あきこ/写真=田中聖太郎)