『見えない糸 〜Never Be The Lonely One〜』リリースインタビュー
大比良瑞希が語る、音楽への向き合い方の変化と“波乱の1年” 「身近な人に孤独を感じてほしくない」
「頼りなさや怖さを歌うことで、本当の気持ちに気づける」
ーーこうして並べてみて、どの曲も色が違っていて面白いなと感じるのですが、制作した順番は、リリースと同じなのでしょうか?
大比良:今回の3曲については、それぞれデモが今年の1月頃にできて、バンドでセッションしながら曲を完成させ、そこからバンドレコーディングをし、歌入れを終わらせるという流れでした。ただ、「見えない糸 〜Never Be The Lonely One〜」だけはどうしても歌入れが上手く進められなくなってしまって。
この制作期間中、自分の中でもターニングポイントというか、大きな変化時期が訪れたんです。音楽に対する姿勢も、日々の過ごし方も、大事な人の存在についても、自分のことも、色々わからなくなった時があったんです。そんなこんなで2〜3週間、一回音楽から離れてみたりしてから、「見えない糸 〜Never Be The Lonely One〜」の歌入れを終わらせました。
ーーそんな時期があったんですね。
大比良:それにより、住まいの環境を変えたり、一新する決断に至れたことで、段々と風向きが変わってきて。素晴らしい出会いやプロジェクトの話が進んだり、『SUMMER SONIC 2017』の出演やAwesome City Clubへのコーラス参加といった新しいお話も入ってくるようになって、行き詰まったら思い切って環境を変えるのは大事だなと学びました。
ーーその葛藤は歌詞や歌にも反映されていると自分でも感じますか?
大比良:それはあると思います(笑)。3曲の中でも、自分の感情にピュアに向き合って、一番繊細な部分を書いたので、10年後くらいに自分で振り返った時、一番思い出として残る曲になるかも。歌詞を書いていた時は不安亭な状態でしたが、歌についてはもう何も迷うことなく歌えたので、一番素直な感情を正直に歌えたような、結果最高な状態で録れました。
ーー今回のように音楽から一度離れることで、音楽に対する向き合い方は変わったのでしょうか。
大比良:変わったと思います。この曲の副題でもあるリフレイン<Never Be The Lonely One>の通り、身近な人が孤独を感じていたとしたら、音楽で救いたいなというような気持ちが強くなって。「見えない糸」というのも、今回曲名にしてから、私の音楽のテーマでもあるなと思えてきて。
ーー音楽のテーマ、ですか。
大比良:繋がりとか相手への思いとか、見えないものほど大事なことばかりで、でもその頼りなさや怖さと向き合うことで、真の気持ちや優しい気持ちに気づけるんだと考えさせられました。そういう自分の音楽の軸が見えてきたことで、自分がただ歌いたいから歌うんではなくて、自分が出来ること、自分の役割、という視点でようやく考えられるようになったかなと。ジャニス・ジョプリンのドキュメンタリー映画を見た時に、彼女の母性の強さを感じるとともに、ファンの人たちに孤独を感じさせない存在としてすごく尊敬したことを思い出しました。
ーーライブを経験して、宅録的な作り方も徐々に変化しつつありますか。
大比良:グルーヴやその場で生まれるフレーズも楽しみになったので、そこまでアレンジを固定せずにスタジオに持っていくことは増えましたが、根本的には変わらないです。ライブに関しては、もっともっと壁をなくしていきたいなと思ってます。そもそも本当は、ライブで皆一緒に歌えて楽しくなれる曲が作りたくて。<Never Be The Lonely One>と何回も繰り返すから、「やっと皆で一緒に歌えるが曲できた!」と思ったんですけど、結果的にはHappyな雰囲気になるというより会場ごとシリアスな雰囲気になる曲になっているかもしれません(笑)。
でも、今作ってる新曲は、Happyに皆で歌えるカッコいい曲になってきているので、それも是非楽しみにしてて欲しいですし、<Never Be The Lonely One>の部分も、ライブで一緒に歌って、皆でシリアスになりたいです(笑)。
(取材・文=中村拓海/写真=ともまつ りか)
■配信リリース情報
『見えない糸 〜Never Be The Lonely One〜』
発売中