阪本奨悟のラブソングにはなぜリアリティがある? 「恋と嘘」歌詞にも表れた“不器用さ”を考察

阪本奨悟のラブソングはなぜリアリティある?

 阪本の曲に登場するのは理想の“王子様”ではなく、時に相手の<好きな俳優のことを上から目線で批評>し、時に<用意してきた笑えるはずの失敗話>で相手を困らせ、<手を繋いだけど 次にどうすりゃいいのか分から>ないような、冴えない男。何となく気まずくなって苦笑している相手の顔が浮かぶようだ。好きという気持ちを真っ直ぐに歌うだけではなく、迷いや格好悪い部分もさらけ出す。そこに描かれている行動や思いは、端的に言ってしまえば“ダサい”のだが、実はその“ダサい”部分は多くのリスナーにとっても身に覚えがあるはず。そこに自然と過去の自分や相手の姿を重ね、“ダサさ”もむしろ愛おしく思えてくるから不思議だ。

 阪本はデビュー曲「鼻声」「しょっぱい涙」を制作する際、福山からインタビューを受けたと語っていたように、両曲は実体験を基にしたものだ。(参考:阪本奨悟、シンガーソングライターとして踏み出した新たな一歩 福山雅治の「恩返しとしての継承」)今回の「恋と嘘」も実体験から生まれたという。しかし彼の楽曲にリアリティがある理由はそれだけでない。阪本自身が心身ともにボロボロになるほどに苦い経験をしてきたからこそ、鬱屈とした気持ちを描いた歌詞や、それを歌う力強い声に説得力があるのだ。筆者が以前ライブに足を運んだ際にも、阪本は自身の過去をマイナス、ダークサイドと冗談交じりに表現しながらもしっかりと向き合い、前に進んでいるようだった。

<僕が その手 守っていけるように/強くなるから>

 「恋と嘘」の歌詞は映画に登場する心優しい幼馴染・司馬優翔(北村匠海)と、クールなライバル・高千穂蒼佑(佐藤寛太)、双方の思いを丁寧に描き出している。それと同時に、「恋と嘘」には、シンガーソングライターとしての彼の決意も込められているのではないだろうか。<守っていけるように/強くなるから>という歌詞からはそんなことを感じた。

 <もっと 君を笑顔にできるような/僕になりたい>。ライブパフォーマンスにも共通することだが、不恰好な部分も隠さないからこそ、彼が歌う言葉をリアルに感じられる。今回の「恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~」は、そんな阪本のソングライターとしての魅力とこれからの可能性が存分に詰まった一曲なのだ。

(文=村上夏菜)

■リリース情報
『恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~ / HELLO』
発売日:10月18日(水)
価格:初回限定盤(CD+DVD)¥1,800+税
通常盤(CD)¥1,200+税
〈収録内容〉
CD:
1. 恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~ (映画「恋と嘘」挿入歌)
2. HELLO (映画「恋と嘘」主題歌)
3. ながれ ~Acoustic ver. ~
4. 恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~ (instrumental)
5. HELLO (instrumental)

DVD:
1.恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~(Music Video)
2.HELLO(Music Video)

■公開情報
映画『恋と嘘』
公開日時:10月14日(土)
出演:森川葵、北村匠海、佐藤寛太、浅川梨奈、田辺桃子、遠藤章造、眞島秀和、温水洋一、中島ひろ子、三浦理恵子、木下ほうか、徳井義実

■関連リンク
阪本奨悟 オフィシャルHP
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