KREVAが出演者たちと作り上げた最高の“居場所” 『908 FESTIVAL 2017』レポ

『908 FESTIVAL 2017』レポート


 ステージには教室のセットが用意され、始業のベルとともに先生役のKREVAが登場、「ライミング講座」が始まる。生徒役はマジメな風紀委員の三浦大知、イケイケの帰国子女AKLO、帰国子女だと思われがちな関西人JAY’ED。さらに転校生役の絢香、用務員役の久保田も加わり、KREVAの指導のもとライミング(韻の踏み方)についてのレクチャーが行われる。“単語を母音に分解、それに合わせてすべて韻を踏むのが基本”など内容はかなり本格的。全体的にはコント仕立てだが、根底に“ヒップホップの基本を正確に伝えたい”という意思があることは間違いないだろう。


 ここからイベントは後半戦へ。まずはKREVAが新しい機材(MIDIコントローラー/64個のボタンがあり、それぞれに個別の音を収録)を使って、ボタンを押しながら歌う“押し語り”を披露。「新しいことをやるときは自分の曲がいいんだろうけど、今日は大事な男に捧げます」とコメント、三浦の「Delete My Memories」を歌い上げる。KREVAと三浦の絆の強さを実感させる場面のあとは、いよいよ三浦のステージ。「(RE)PLAY」「EXCITE」を4人のダンサーとともにパフォーマンスし、観客のテンションを一気に引き上げる。シンクロ率の高いダンス、そして、バウンシーなリズムを活かしながら、起伏の激しいメロディを描き出すボーカル。この2曲を観ただけでも、彼が日本のエンターテインメントシーンのトップにいることがはっきりと感じられた。三浦が『908 FESITVAL』に出演しはじめた頃は“三浦の才能を認めたKREVAがフックアップしている”という印象もあったが、いまや彼は押しも押されぬトップスター。このイベントが三浦大知のブレイクのきっかけのひとつになったことに異論の余地はないだろう。



 ラストはもちろんKREVAのステージ。鬼気迫るテンションで「基準」を放ち、驚異的なスキルを改めて見せつける。「王者の休日」には絢香と三浦、「蜃気楼」にも三浦が参加し、さらに充実したコラボレーションが実現する。


 ここでKREVAは改めてオーディエンスに向かって呼びかける。「クレバの日、最初は冗談だったんだよな。9月8日はクレバの日って、俺たちが勝手に決めたものだったんだけど、正式に“クレバの日”として認められて、それがみんなの日になりました」「この場所は、言って、動いて、自分たちで作った俺たちの居場所なんだよ。だから“行くとこねえな”って言ってるヤツがいたら、こう言ってやってよ。あそこ行くと、懐の広いヤツがいる場所があるよって。これからもいろんなところに出向いていって、俺たちの居場所を広げていこうと思います」

 その直後に披露された「居場所」の〈壁を動かせ/守るだけじゃ増えない居場所〉というライン、そして「スタート」の〈そうだ第2章を今ここで始めよう〉というフレーズは、今年の『908FESTIVAL』を象徴していると同時に、さらなる未来へ向かう意志を示唆していたのだと思う。久保田利伸をフィーチャーした「音色」を挟み、「Na Na Na」へ。オーディエンスの大合唱が巻き起こるなか、イベント本編はエンディングを迎えた。

 この時点で既に3時間オーバー。再びステージに登場したKREVAは「時間がやばい。2曲聴いてもらいたいから、急いでやります!」とMIYAVI、三浦とともに三浦の曲「Your Love」を披露。さらに出演者全員を招き入れ、「全速力」のリミックスバージョンを放つ。スピード感に溢れるビートに導かれるように、観客のテンションも最高潮。心地よい達成感ともにイベントは終了した。音楽シーンを代表するアーティストとともに、ジャンルを超越した良質な音楽を提示した『908 FESTIVAL 2017』。ヒップホップアーティストとしてのプライドを持ち続け、様々なアーティストと関わりながら、誰もが楽しめる音楽を生み出し続けるKREVAの重要性を再確認できる意義深いイベントだった。


(文=森朋之/撮影=岸田哲平、中河原理英)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる