Red Velvetに見る、新しいガーリーポップの形 女の子の刹那を表現した音楽性に迫る
そしてRed Velvetがガーリー的な世界観を極限まで表現したのが、2016年3月にリリースされた「One Of These Nights」。この曲は本国でもその特異な世界観が賛否両論を巻き起こした。1920年代のトーチソングと、Björkが『Vespertine』で鳴らした女の子ためのグリッチエレクトロを混ぜ合わせたようなベルベットミュージックである。
ここまでで“レッド”と“ベルベット”、2つのコンセプトを表現しきってしまったはずなのに、彼女達は次曲「Russian Roulette」で再びカムバックを遂げる。それは女の子が昨日までお気に入りだった服を脱ぎ捨てて新しいファッションを身にまとうような、セクシーでキュートな選択だった。
2016年にリリースされた「Russian Roulette」は、フューチャーベース的にストップスタートするトラックに、1980年代のエレクトロポップのメロディを乗せた歪なミクスチャーサウンド。今までのレッドとベルベットの境界を自ら破壊して、“レッドベルベット”という全く新しい色を生み出そうとしたのだ。
それはまるで一貫して女の子のためだけの映画を撮り続けるソフィア・コッポラの傑作『ヴァージン・スーサイズ』で美しく崩壊した終末を予感した姉妹達のように、またガーリー映画の最高傑作の一本と目されている1975年の『ピクニックatハンギング・ロック』で理由もなく森の中へと失踪してしまう美少女達のように、Red Velvetも女の子という存在が持つ刹那的な部分を音楽で表現している。「Russian Roulette」は、甘くて危険なアバンチュールを音楽の中に求めるSNS世代の女の子と男の子のハートを打ち抜いて、大ヒットを記録した。
「Russian Roulette」以降、新たなモードを手に入れたRed Velvetは「Rookie」で1970年代のネオソウルを、最も新しい新曲「Red flavor」で1960年代のボ・ディドリービートを採用。サウンドテクスチャーの幅を大幅に広げることで、どんな時代の音の中にも女の子のためのポップミュージックが鳴り響いていることを証明し続けているのである。
Red Velvetが11月に開催する日本初のショーケースは、そんな可愛くて美しくて残酷でおかしな“女の子の本当の秘密”が僕らに明かされる、歴史的瞬間になるに違いない。
(文=ターボ向後)