『花の影 / 泥沼 Break Down』インタビュー

Lily’s Blowが考える“音楽の力”とは? 「何かを変えるというよりは、寄り添って溶かしてあげたい」

 都内のライブハウスを中心に活動するシンガー、NANAのソロプロジェクトLily’s Blowが、早くも2ndシングル『花の影 / 泥沼 Break Down』をリリースする。M-1「花の影」は、TVアニメ『信長の忍び〜伊勢・金ヶ崎篇〜』(TOKYO MXほか)の主題歌。戦国武将・織田信長を陰で支える「忍び」の少女・千鳥のひたむきな思いを描いた歌詞は、原作の世界観を踏襲しつつ、現代に生きる私たちの心にも響くものがある。和楽器を導入し、オリエンタルなフレーズを融合させたロックサウンドも、Lily's Blowにとって新機軸と言えるだろう。一方、TOKYO MX『真夜中のみつばち少女』のオープニングテーマであるM-2「泥沼 Break Down」は、浮気性の男を一蹴する歌詞が痛快な、彼女らしいロックンロールナンバーだ。

 前回のインタビューでは、デビューまでの経緯や、プロデューサー近藤ひさしとの出会いなどを率直に話してくれたNANA。メジャーデビューから半年が過ぎた今、彼女はどんな日々を過ごしているのだろうか。(黒田隆憲)

「人はきっと『子供心』を失くしてしまった時に、初めて老ける」

――この半年の間に様々なライブ、イベントへの出演、他アーティストとのコラボなどあったと思いますが、特に印象に残っていることはありましたか?

NANA:どれも印象深いですね。つい先日も、アップフロントのビタスイ(Bitter & Sweet)とツーマンライブをやらせていただいて。すでに第2弾の開催が9月3日に決定したのですが、「自主企画」ということで、どうすればお客さんが喜んでくださるか、色々と趣向を凝らしました。普通に2アクトが順番に出てきて演奏するだけでなく、例えば開演前にビタスイと私と3人で前説をやったり(笑)、イベントの最後は出演者全員でセッションをしたりと、アットホームな雰囲気作りを目指しましたね。セッションでやる曲も、ガールズバンド大先輩であるPRINCESS PRINCESSさんの「19 Growing Up」に挑戦して。当日にみんなで盛り上がれるよう、前もってSNSでもお知らせしたんです。「サビの部分で、掛け声をかけて飛び跳ねるので、みんなやってね」みたいな動画を、ビタスイと制作して。おかげで本番はちゃんと盛り上がりました(笑)。自分たちが楽しんでやるのは当然なのですが、リリブロ(Lily's Blow)、ビタスイそれぞれのファンの人たちが、お目当て以外のアクトでも楽しんでもらえるように工夫しました。

――きっと、第2弾も盛り上がりそうですね。

NANA:はい。その先もずっと続いていけるように頑張ります(笑)。ジャンルも全然違うんですよ。でも、お互いに違うからこそ吸収するものがあるというか。同じ音楽性で、同じ色合いの人たちと共演するのはもちろん楽しいんですけど、それとは違う相乗効果が生まれると思うんです。それに、ビタスイのファンがリリブロに興味を持ってくれたり、その逆もあったりしたらいいなって。ファンの人たちが、私を通じて色んな音楽を聴いてもらいたいっていう気持ちが強いんですよね。

――それは素晴らしいですね。あと、『NAONのYAON』にも初出演したそうですね。

NANA:そうなんです。歴史あるイベントに出させていただいて。SHOW-YAさんとか普通にいらっしゃるじゃないですか。「うわあ!」って(笑)。バックステージにいると、どこに目をやっても「あの人、テレビで観たことがある!」っていう感じ。実は私、野外で歌うの初めてだったので、とにかく気持ち良かったし刺激の多い1日になりました。今回は他のボーカリストの方たちと、「コラボレーション」という形での出演だったので、是非とも来年は、自分のバンドを引き連れてリリブロの楽曲をぶちかませたらと思っています。

――頼もしいですね! これは余談なんですけど、「スーパー小学生ことLily's BlowのNANA??」と、RucaさんにSNSで紹介されていましたが(笑)、この由来は?

NANA:あははは。めっちゃ恥ずかしい。Rucaさんはソロで活躍する優しい先輩なのですが、何でそんなの見つけるんですか!(笑) 私、楽屋にいるときは大抵遊んでいるんです。特に、リリブロのサポートギターをしてくれているAYUMI(Astrovery)とは同い年なので、めちゃめちゃ仲が良くて。2人でいきなり変な踊りを始めたり、急にハモり始めたりしてたら、周りの人たちに「小学生みたいだね」ってからかわれて。小学生以上に小学生っぽいということから「スーパー小学生」と名付けられ、ツイッターに書かれ、お客さんに広まり……っていう(笑)。最近は色んな人から「スーパー小学生」と呼ばれています。

――きっとNANAさんは、みんなのムードメーカーなんでしょうね。サポートメンバーの人たちとも絆は深まった?

NANA:そうですね。ずっと固定のメンバーなので、もう家族みたいな気持ちでいます。例えば、私が思うようにパフォーマンスができなかった日とか、落ち込んでいる時などみんなで力付けてくださいますし、とても思いやりがあってメチャメチャ信頼しています。LINEでのやりとりなども、しょっちゅうさせてもらっているんです。

――なるほど。ファンの方たちとの関係性はどうですか?

NANA:ライブがあると、毎回見に来てくださるお客さんもたくさんいらっしゃって。例えばちょっとアウェイな場所で歌わなきゃならない時や、すごく大きな会場で、「私のことなんて、知っている人ほとんどいないんだろうな」って思う時など、そういうファンの方が本当に心強くて。支えになっていますね。

――この半年間、欠かさず継続して来たことってありますか?

NANA:雨が降らない限り、毎日必ず走るということはデビューからずっと続けていますね。その日の気分で、かなり長い距離を走るときもあれば、疲れているときはすぐ終えてしまうときもあるんですけど。でも、「毎日走る」というのは続けられたんです。最近は雨が多くて走れずにいるのですが、このまま頑張って続けます。私、結構風邪を引きやすいので、体を鍛える意味でも大事なのかなと。あと、キックボクシングもやってみたいんですよ。これからワンマンツアーもあるので、体力を上げていきたいです。

――最近、インスパイアされた出来事はありますか?

NANA:先日、初めて『スタンド・バイ・ミー』を観たんです。名作なのに、実は今まで観たことがなくて。たまたまiPhoneでシャッフルして聞いていたら、「スタンド・バイ・ミー」が流れて来て。「そういえば映画観たことがなかったな」と思ったのがきっかけだったのですが。

――どんなことを感じました?

NANA:私自身、小さい頃はどちらかというと男の子に混じって遊んでいた方なので、なんだか懐かしい感じというか、戻りたいけど戻れない日々を、もどかしく思い返しました。今年で20歳になり、10代ではなくなってしまったことを改めて悲しく感じてしまって(笑)。男兄弟に囲まれて育ったので、おばあちゃんちに行けば、虫取り網を持って山に登っているような、相当やんちゃな女の子だったんです。あの頃、「虹は川から川にかかっているんだよ」って誰かに言われて、雨上がりに虹が出ると、近所の友だちと自転車に乗って、虹がかかっている場所を探しに行っていました。そんなだから、今も「スーパー小学生」とか言われちゃうんですが(笑)。

――(笑)。「あの頃に戻りたい」という思いが強いのは、どうしてなのでしょうね?

NANA:何でしょう、いつまでも子供の心を忘れたくないのかなと。「若返りたい、若いままでいたい」というのとは少し違うんですよ。歳を重ねるのは素敵なことだと思っているし、シワができたり、白髪が増えたりするのは、その人が人生を積み重ねてきた証だと思っているので。ただ、人はきっと「子供心」を失くしてしまった時に、初めて老けるんじゃないかなと。それを私は一番恐れているのかもしれないです。

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