高橋みなみが“ソロアーティスト”としてステージに立つ姿ーー全国に思い届ける初ツアーを観た

高橋みなみ、全国に思い届ける初ツアー

 高橋みなみが、7月15日より『高橋みなみ 2017ライブハウスツアー ~たかみなについて行きますreborn~』をスタートさせた。AKB48在籍時、2011年3月25日から27日までの3日間、コンサート『たかみなについて行きます』を行う予定だった。しかし、それは東日本大震災によって幻のものとなってしまう。時を経て昨年、幼い頃の夢であったソロアーティストとして初のアルバム『愛してもいいですか?』をリリースした高橋。グループで出来なかったことを初のソロライブツアーで改めて付けられたタイトルには、彼女の大きな思いが込められている。今回、筆者は、7月22日に開催したLive House浜松窓枠でのライブを観ることが出来た。ツアーの3カ所目。そこには、一人のソロアーティストとしてステージに立つ、高橋みなみの姿があった。

 ライブを観て強く印象に残ったのが、彼女のアーティストとしての顔つきだ。グループとソロとではステージに立つ上でのプレッシャーは段違いだろう。その圧力を跳ね除けるように、ファンの前に現れた彼女は力強かった。今回のツアーは、ギター、キーボード、ドラム、ベースの4人を従えてのバンドセット。セットリストは昨年リリースしたアルバム『愛してもいいですか?』からの楽曲を中心としたものだった。槇原敬之、高見沢俊彦、真島昌利、前山田健一、カーリー・レイ・ジェプセンなど、高橋と繋がりのあるアーティスト、才能をより引き出すアーティストと共に制作していった楽曲群が、シンガーとしての高橋の様々な顔を見せてくれる作品だ。また、AKB48としてのキャリアはもちろん、『新堂本兄弟』(フジテレビ系)での「堂本ブラザーズバンド」のコーラスとしての経験が彼女にはある。今回のライブでも、玉置浩二が作詞、作曲を手掛けた「ティンクル」では愛らしい雰囲気を漂わせ、OKAMOTO’Sの楽曲「夢売る少女じゃいられない」ではロックな一面を垣間見せるなど、様々な曲調を歌いこなすボーカリストとしての表現の幅を感じ取ることができた。

 中でも驚いたのが、ライブ中盤で披露された「Blue Velvet」のカバー。この楽曲は工藤静香の代表曲の一つであるが、妖艶さと歌唱力が試される楽曲でもある。披露前のMCでは「80年代の歌手の方が大好き」と語っていたが、その思いが強く反映されているのを感じるほどに、工藤静香へのリスペクトが見えるステージングであった。続けて歌われた「わたしの証明」にも、「Blue Velvet」と通ずるものがあった。「わたしの証明」は、『愛してもいいですか?』に収録されている榊いずみの楽曲。この2曲から気づくのが、高橋の歌声が持つ低音の響きだ。1stシングルの表題曲「Jane Doe」然り、彼女の声色にはどこか色気があるが、それを成り立たせているのが、高橋の基礎としての声の魅力であることに気づく。

 そして今回、ライブを観ていて感じたことがもう一つある。それが、彼女とファンとの距離の近さだった。AKB48としてデビューしたのが2005年。13年目のキャリアにある彼女は、全国にいるたくさんの熱いファンに支えられている。そう感じたのは、MCでの一幕のこと。彼女のブログにも綴られているが、この日高橋は本番前に静岡県のローカルフードとも言えるハンバーグレストラン「炭焼きレストランさわやか」に足を運んでいた。こと細かに状況や食べ方を話すのだが、その時のファンの反応が凄まじいのだ。筆者も地方出身なのでよく分かるが、地元トークは盛り上がる。それはライブでもそうだ。そして、ここで分かるのがこの日会場に集まったのは、地元のファンがほとんどだということ。

 ツアー発表に寄せて高橋は「今度は私から皆さんに会いに行きます」と宣言しているが、その言葉通りに、彼女は細かく地方を巡っている。そして、MC中の挙手により明らかになったのだが、この日の会場には彼女のライブを初めて観るというファンも多く足を運んでいた。「会ったことのないファンがいる。そこに来れていなかったことが申し訳なかった」と高橋はMCにて語っていたが、直接各地を訪れることがファンへの感謝の気持ちであり、全国にいるファンへの恩返しなのだろう。ツアーが発表になった4月8日のバースデーライブにて「これがやりたいからソロになった」と喜んでいた高橋。あえてライブハウスを選び、一歩、一歩、地に足を着け、ファンとコミュニケーションを取りに自分自身が出向くことが、今、彼女のやりたいことであるように思える。

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