メジャー1stアルバム『強めの心臓』インタビュー
藤田恵名が語る、シンガーソングライターとしての覚悟「戦わないといけない側の人間かもしれない」
反骨精神は忘れたくない
ーー痛快ですね(笑)。またラップ曲の「BIKINI RIOT」(MCビキニ a.k.a藤田恵名)も同様に、ポップでありつつ刺激的な曲となっています。ラップもずっとやってきたんですか。
藤田:フリースタイルバトル(CINDERELLA MC BATTLE)に初めて出たのが、昨年の11月とかだったんですけど、それまでラップはちょっと聴くくらいで、やったことはなくて。MCビキニという名前で出たんですけど……ほんと、ギャグですよね(笑)。でも、蓋を開けてみたら、面白がってくれている人も増えたし、「BIKINI RIOT」が映画『怪談新耳袋Gメン 復活編』の主題歌になったり、MVも作ってもらったりしたので。苦戦しましたけど、かっこいい感じになりました。
ーーラップというスタイルだからこそ勢いよく、ここまでえぐってしまえと書ける曲でもありそうですが、どうなんでしょう。
藤田:言いたいことは言えた感じもしていますね。
ーーこの「BIKINI RIOT」もかなり戦ってる感じがしますね。
藤田:歌詞に、〈ちょっと高いここのピッチ〉というフレーズがあるんですけど、最初は〈ちょっとモテるのこんなビッチ〉だったんですよ(笑)。そしたらレコード倫理協会からプロデューサーが突かれたみたいで変えることになって。自分の最後の悪あがきじゃないですけど、“ビッチ”と“ピッチ”のちょうど中間くらいの発音で、そこだけ宅録をして変えました(笑)。ライブではビッチって歌っちゃってます。そういう反骨精神は忘れたくないなって思いながら。
ーー藤田さんのその反骨精神って、どこで芽生えたものなんですか。
藤田:中学校の時にいじめられていたことがあって。人を見返したい気持ちはずっとあったんです。今でこそ、ネットでいろいろと言われたり、賛否もあったりするし。自分は戦わないといけない側の人間かもしれないなっていう。言い争うとか、ネット上で炎上を起こすことはしないですけれども、いつかひっくり返すくらいのことをしたいなという気持ちは常に持っています。
ーーそれがこうした音楽との表現ともうまく結びついたんですね。この『強めの心臓』は、グラビアアイドルとしても活動している藤田さんが、ミュージシャンとして“わたし”をちゃんと見てという、心の内を吐き出したアルバムです。それでありながら、“脱衣盤”というヌードジャケット版もあって。話題性は高いと思いますが、一方で誤解を生んでしまう可能性もあると思うんです。アルバムでなぜこういう挑戦をされたんですか。
藤田:昨年、ミニアルバム『EVIL IDOL SONG』で全裸ジャケットをやって、ちょっと話題にしてもらって。わたしとしても、昨年だけで終わってしまうと嫌だなと思ったり、今の自分の知名度とかをいろいろ考えた時に、中身も説得力があるものが作れればいいんじゃないかと思って。誤解を生みやすいということもわかってはいます。聴いてもらえなかった層に聴いてもらえた反面、聴いてもらえたはずの人に毛嫌いされたかもしれない気持ちもあるんです。この役割がたまたま自分で、これをもし他の誰かがしてたら悔しいなと感じてたと思うんです。なので、今年も脱がさせていただきましたというくらいの気持ちで今はいるので、結構、清々しいです。
ーー藤田さんは、グラビアでの活動よりも音楽活動や音楽をやっている方が長いんですよね。
藤田:音楽は10歳の時からスクールに通ってやってきて。グラビアは、3、4年なんです。もともとプライベートで水着を着たことがなくて。水着になるのはずっとコンプレックスではあったんですけど、グラビアの需要が少なからずあって。辞めるのはもったいないかなと思い、音楽と合体させたんです。ラップもそうですけど、何が起こるかわからないなって思ったし、どこかで何かを捨てる必要もないかもなと。それで、今までの活動を足していけばいいかなと思って。今、めっちゃこんがらがっていますけどね(笑)。
ーー音楽とグラビアを一緒にするのは、挑発的にやってやろうという感覚ではなかったんですね。
藤田:音楽はずっとやっていたし、どうやったら周りの人から頭一個分くらい抜けられるかなと思った時に、合体させるしかないというか。それは、自分で決めました。“シンガーソングラドル”と名乗っているのも、わたしのもったいない精神が功を奏したのかなと思います。
ーーそうやってくっつけてみたことで、反響って変わりました?
藤田:路上ライブをしていた時は、コートを着込んでやっていたので、「え、そうなっちゃったの?」って離れた人ももちろんいました。でも、知ってもらった人の方が、何十倍も多いから。当時では大事な、路上ライブに来てくれていたファンが離れていったことは自分では大ダメージで、取り返しのつかないことをしてしまったと落ち込みましたけど……離れていってしまった人たちが、今のわたしを何かで知ってくれているなら嬉しいなと思います。