TUBE、悪天候をも乗り越え見せたバンドの強度 29回目の横浜スタジアム公演レポ


 その願いが届いたのか、1時間ほどで天候は回復。ステージに上った前田は、「みんな大変だったね。ステージにある照明が壊れてしまったけれど、スタッフの努力で音が出せるようになりました。この夏一番の素敵な思い出を再開しましょう!」と語り、『sunny day』収録の新曲「愛はメリーゴーランド」、情熱的な愛を歌う「Paradiso~愛の迷宮~」を歌い上げた。照明の故障も、1時間の中断の影響も、まったく感じさせないパフォーマンスだ。この対応力の高さも、他のアーティストに類を見ないほど、単独野外ライブを重ねるなかで培われたものなのかもしれない。

 本編のラストを飾ったのは、<泣かない事が強いんじゃなくて 涙を虹に変えるのが勇気>、<負けない事が偉いんじゃなくて 何度でも立ち上がるのが希望>と、オーディエンスを熱く鼓舞する「涙を虹に」。雷雨による一時中断というトラブルを乗り越え、大団円に向かうに相応しいメッセージを伝え、曇天を切り裂くような打ち上げ花火とともに、圧巻のパフォーマンスを見せつけた。


 アンコールでは、メインステージでストンプがリズムを刻むなか、メンバー4人が消防車に乗り込み、巨大な水鉄砲でスタンドのファンをクールダウンさせながら、スタジアム後方の特設ステージに向かう。そして、ライブを盛り上げる定番曲「おかげサマー」、「海の家」を披露し、最後はやはりこの曲、前田も「この曲をやらなきゃ、夏は終わらないでしょう」とオーディエンスに呼びかけた「あー夏休み」だ。雨も再び降り出していたが、とたんに猛暑のなか水浴びをしているような、爽やかな気分になる。


 そして、Wアンコールとして披露されたのは、前田が「今日この日のためにつくったといっても過言ではない」と胸を張った、ミニアルバムの表題曲「My sunny day」。<空見上げて 手を広げ 風を感じて 走りだそう>という3万人の大合唱は圧巻で、野外ライブだからこその開放感と、ともに悪天候を乗り越えた一体感が、スタジアムを包んでいた。

 すごいライブを観た、と思う。アコースティックに始まり、ダンサーも交えたフルバンドでのパフォーマンス、そして予期せぬ一時中断というアクシデントと、その後、故障した照明以上の輝きを放ったパフォーマンス。もちろん、ステージが滞りなく進行するのが一番だが、終わってみればトラブルさえ、TUBEというバンドが持つ強度を印象づけるアクセントになっていた。2016年は台風の接近、2017年は雷雨と、天候に悩まされた横浜スタジアム公演だったが、いずれも見事なパフォーマンスで、30回目を迎える2018年の快晴を呼び込むドラマのようにも思えてくる。

 また同時に、数多いヒット曲だけでなく、ミニアルバムに収録された新曲がひとつの軸になっていたことも、見逃せないポイントだ。今年は11月15日のさいたまスーパーアリーナを皮切りにした10年ぶりのアリーナツアーも発表されており、デビューから30周年を超えて、さらに前進を続けるTUBEの姿勢が伝わってくる。例年になく雨が続く8月だが、TUBEの夏は終わらない。来年開催されるだろう、30回目の横浜スタジアム公演という節目まで、TUBEファンの熱い日々は続きそうだ。

(文=橋川良寛)

TUBE『sunny day』

■リリース情報
『sunny day』
発売:2017年6月7日(水)
【通常盤(CD)】¥2,200(税込)
【完全生産限定盤(カセット)】¥2,200(税込)

■ミニアルバム『sunny day』特設サイト
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TUBE オフィシャルHP 
春畑道哉 オフィシャルHP 

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