HIPHOPの現場でLGBTへの理解進む ラッパーたちが“価値観からの解放”を表現

HIPHOPの現場でも進む「性からの解放」

 HIPHOPの本場アメリカでもLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)に対してシーンが寛容になってきており、最近ではアイラヴマコーネン、フランク・オーシャンといった第一線で活躍を続けるシンガーが立て続けにゲイであることをカミングアウトしている。また、フランク・オーシャンが所属するクルー・OFWGKTAのシド・ザ・キッドもレズビアンであることを公言しながら活動をしており、それぞれ人気を集めている。

 日本でも2013年にMSCのPrimalがバイであることをカミングアウトしたうえで「性の容疑者」という曲を発表して話題を呼んだ。最近では西新宿パンティーズという“カミングアウト”HIPHOPユニットがシーンに登場した。複数人いるメンバーのうち、メインで活動する3人がゲイであることを公言し、しかも女性下着をアクセサリーとして頭からかぶってパフォーマンスをしている。常識にとらわれない奇想天外なスタイルが話題を呼び、クラブなどでは西新宿パンティーズが登場するだけで盛り上がってしまう。だが、楽曲制作にはいたって真面目に打ち込んでおり、BEN THE ACEや8ronixなどのトラックメーカーを制作陣に迎え、完成度の高い楽曲を発表して評価を得ている。

西新宿パンティーズ feat. Showgunn「This is how we chill from 222'til...」

 あっこゴリラの「ウルトラジェンダー」ではゲストシンガーの永原真夏が力強くこう歌っている。

<固定の価値観に縛られず 新しいものを切り開いていく/そこにはきっと素晴らしい未来が待っている>

 わかりやすいマッチョイズムが蔓延っていたHIPHOP業界においても、最近では個人を尊重する自由なスタイルがだんだんと切り開かれている。「男なら男らしく、女は女らしく」、そんなとらわれた価値観からの解放を目指すアーティストたち。ゲイの自分からすると、“ありのままでいていいんだ”と背中を押してもらっているようで本当にありがたい。LGBTブームと言われる昨今だが、決して一過性のものにはしたくはない。今以上にLGBTが社会に受け入れられ、皆さんの身近な存在になる日がきっと来るーーそう信じて彼らの音楽を聴きたいと思う。

■鼎
日々HIPHOPの現場に乗り込んでるゲイライター。
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