再メジャーデビュー作『ワンダードライブ』リリースインタビュー
ORESAMA、再メジャーデビューへの決意表明 『アリスと蔵六』と運命的に交わった変革作を語る
ORESAMAが、5月24日にシングル『ワンダードライブ』で<ランティス>より再メジャーデビューを果たした。ぽんは音楽投稿アプリnanaや高橋 諒率いるユニット・ONE Ⅲ NOTES(ワンサードノーツ)での歌唱、小島英也はDAOKO、女王蜂、吉澤嘉代子への楽曲提供などボーカリストと音楽作家としての活躍も著しいが、『ワンダードライブ』は2人によるORESAMAとしての決意表明のような作品だ。
表題曲は2人が「自分たちの再スタートと運命的ともいえるくらいリンクした」と語るアニメ『アリスと蔵六』のオープニングテーマにも起用されており、これまでのブギーファンク・ディスコ路線とは違った魅力を提示。ORESAMAにとっても特別な楽曲「ねえ、神様?」や、音数を極端に減らした「SWEET ROOM」といったカップリングも含め、再スタートを飾るにふさわしい内容となっている。今回リアルサウンドでは、2人にインタビューを行い、2016年の活動から再メジャーデビューに至った経緯や小島が楽曲を作るにあたってトライした「変革」などについて、じっくりと話を訊いた。(編集部)
色んなものを整理して、自分を再発見しようとした(小島)
ーーまずは今回、再メジャーデビューすることになった経緯について訊かせてください。
小島英也(以下、小島):2016年は、インディーズとして活動していた一年でした。ぽんちゃんがボーカルとしての自分を見つめなおしたり、僕もせっせとORESAMAや他アーティストへの提供曲を作っていくなかで、再メジャーデビューのお話をいただいて。大事なチャンスだと思ったので、もう一度メジャーの舞台へ戻ることを決めました。
ーー発表と同じくらいのタイミングで、ぽんさんがONE Ⅲ NOTESのゲストボーカリストであることも明かされていましたが、決まったのは再メジャーデビューとどちらが先だったのでしょうか。
ぽん:再メジャーデビューのほうが先で、そこからONE Ⅲ NOTESへのお誘いもいただきました。
ーー2016年は、12月に配信楽曲『絶対的 WINTER LOVE』とH△Gとのスプリット作『H△G × ORESAMA』をリリースしましたが、それ以外はソロワークが目立った一年だったように思えます。特にぽんさんは匿名で音楽投稿アプリnanaを使ってひたすらに歌ってきたわけですが、歌への向き合い方もやはり変わりましたか?
ぽん:小島くんが他のアーティストへの楽曲提供を始めた時期で、自分のボーカルとしての可能性を知りたくてnanaを始めたんです。すると、私のことを誰だか知らない人たちが「綺麗な声だね」だったり、純粋でストレートな言葉をたくさんかけてくれて。私は歌が好きだから、もっと歌いたい、多くの人と楽しみたいという気持ちがどんどん強くなって。その膨らんだ気持ちを形にしたいと思って、歌詞を書いて小島くんに渡したのが「ねえ、神様?」なんです。インディーズでもがいていた自分たちを代表する曲なので、なんとしてもこのタイミングでカップリングに入れたいと思って収録しました。
ーーnanaでは、かなりハイペースで投稿もされていましたよね。
ぽん:最初はとにかく「私の歌は誰かに届くのか?」と疑心暗鬼だったので、誰かに聴いてほしいという自分に対する挑戦のように毎日3~4曲投稿していたんですよ。時間はかなり掛かったんですけど、そうして時間を掛けられるのもやっぱり歌が好きだからで。
ーーORESAMAは普段曲先で制作をしていて、初めて詞先で作った楽曲が「ねえ、神様?」ということですが、小島さんとしてもやはり普段と違った感覚でしたか。
小島:実は、僕としては詞が先にある方が書きやすいんです。そこに書いてある雰囲気を汲み取って作れるので。「ねぇ、神様?」は特に彼女の持っている辛さや願望、希望がストレートに表現されていて、今までの歌詞のなかでも一番僕の胸に刺さったので、スピーディーに書き上げることもできました。
ーーシリアスな体験をベースに書かれた歌詞なのですが、楽曲はディスコ・ブギー調にアレンジされたORESAMAらしいアッパーなものに仕上がっています。
小島:前からORESAMAとしては、暗い歌詞を暗いままやるのは違うと思っていて。踊りながら聴けるディスコ調にしようとは初めから思っていました。
ーーこれまでORESAMAが作ってきた楽曲の特徴として、小島さんのナイル・ロジャース的なギターカッティングの音色がもたらす“土臭さ”が挙げられると思うのですが、この曲ではストリングスを前面に出したゴージャスなアレンジが印象的です。
小島:これまで楽曲を作る際は、ギターの音から考えていたんです。でも、この曲を作り始めたくらいから、鍵盤でコードを決めることから構築していくようになりました。そのほうが都会的なメロディーになるなと思って。ただ、感情的になる部分ではギターを基盤に作っていくことで、これまでの特徴と新しさを混ぜ合わせました。
ぽん:<絶望>というワードが入っているような歌詞ですけど、結果的にみんなが踊ってくれる曲に仕上がったのは、ORESAMAっぽいし小島くんっぽいなと思いますね。
ーー「踊りながら泣ける曲」といえるのかもしれませんね。
小島:そう思っていただけるのが理想ですね。
ぽん:ライブでもそうあってほしいと思います。最終的には元気を与えられていたらいいですね。
ーーそんな「ねえ、神様?」は、これまでのORESAMAが作ってきた楽曲の延長線上と位置付けられるのですが、表題曲「ワンダードライブ」には驚きました。曲調としてはこれまで作ってこなかったタイプの曲ですよね。なぜこれを再メジャーデビュー作の表題曲として提示したのでしょう。
小島:この曲はTVアニメ『アリスと蔵六』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマとして書き下ろすにあたって、原作を読んだときに「疾走感」「シンセサイザーのイメージ」「ハウスっぽいビート」というパーツが頭に浮かんできて、それをストレートに形作ったものなんです。今までのORESAMAだと、自分の作りやすいテンポに合わせることが多いのですが、今回はその「疾走感」を具体化する際に、新たなことにも挑戦しようと思い、これまでで一番早いテンポの曲になりました。
ーー歌詞についても、ORESAMAのこれまでを追いかけてきた人は、確実にグッとくる内容です。
ぽん:『アリスと蔵六』という作品自体のストーリーと、自分たちの境遇にリンクする部分がすごくあって、ドラマチックだなと思いました。最初に主人公の紗名ちゃんと蔵六さんのドライブシーンがあるんですが、そのシーンと自分たちの再スタートがシンクロしたりと、運命的ともいえるくらいリンクした作品になりました。
ーー新たな一歩を踏み出すタイミングだったとはいえ、これまで頑なに守ってきたスタンスや楽曲のイメージを崩すことに抵抗はありませんでしたか?
小島:この曲を作ることが決まったときに、“ミニマリズム(最小限主義)”的に色んなものを整理して、自分を再発見しようとしたんです。一切の音楽を聴かなくしたり、DTMソフトを一度リセットして、どういう設定が自分に必要なのか、今まで数百個買ってきたプラグインは果たしてすべて必要なのかを全部再検証して。頭の中も整理していくなかで、自分の癖ーーどんな音色を使いがちで、どういう手癖があるのかもわかったことで、曲を作るスピードも早くなってきて。このタイミングなら、どれだけテンポを早くしてもORESAMAらしさを失わずにいれるという自信が付いたからこそのチャレンジです。より少ない音数で表現することもできるようになってきましたし。
ーーメロディのリードシンセは、ORESAMAが参照してきた年代の音でありながら、これまでにないくらい曲自体をキャッチーに響かせていますよね。こういう曲を書くようになったのは、やはり提供曲で積んだ経験値も影響していたりするのでしょうか。
小島:他アーティストへの提供曲だと、今回に近いBPMのものもありますし、それ以外でもORESAMAでやらないような技術はすべて提供曲で経験してきましたね。それらを活かして作れたという実感や、やってきたことが自分の力になっているという感覚が強いですね。あのシンセはMinimoogのシミュレーターなんですけど、今までなら、あそこまでリードシンセを聴かせるというアレンジはしてこなかったと思うんですよ。