オープニング曲がない番組、なぜ増加? 星野源ら書き下ろしで“様式美”復活か
『夢であいましょう』『シャボン玉ホリデー』『11PM』『8時だョ!全員集合』『笑っていいとも!』……テレビ黎明期、黄金期の番組に必ずあったのが「オープニングテーマ」だ。その曲を耳にすれば番組を思い出し、番組名を聴けばメロディがよみがえる。だが今、お決まりのテーマ曲が存在する番組は『笑点』『徹子の部屋』『きょうの料理』『キューピー3分クッキング』『小さな旅』『サンデーモーニング』『ミュージックステーション』、スペシャル番組では『世にも奇妙な物語』と、ほぼ昔ながらの番組しかない。どうしてオープニング曲は番組からなくなりつつあるのか、またその必要性はどこにあるのだろうか?
1分1秒を争う視聴率 「曲よりも本編へ」
テーマ曲が姿を消しつつある背景には第一に、視聴率の問題がある。曲を流している間にチャンネルを回されてしまうからだ。現在はさらに顕著になり、番組のタイトルも言わず、最初のコーナーからいきなり始まる場合もあるほどだ。例えば『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系)。その前の『VS嵐』が終わると、CMもはさまずにいきなり最初のネタの再現VTRから始まる。また裏番組の『ニンゲン観察バラエティ モニタリング!』(TBS系)も、その前の『ブレバト!!』から直結で最初の観察が始まる。
では、かつての人気番組はどのような構成でオープニング曲を流していたのか。『8時だョ!全員集合』を例にとってみよう。
番組が始まった夜8時。ザ・ドリフターズのリーダー・いかりや長介が「8時だよ!」と声をあげる。すると客席の通路にいた残りのメンバー4人が、観客とともに「全員集合!」とレスポンス。そして岡本章生とゲイスターズによるにぎやかな演奏とともに、壇上にあがる。
そして、いかりやが例えば「今日は千葉県船橋市から、いってみよう!」と言うと、「エンヤ~コラヤ」から始まるオープニング曲(「ちょっとだけョ!全員集合」)が流れる。それを3コーラス歌い、そして踊る。その間、出演者から構成作家、音響、照明、プロデューサーにいたるまでスタッフの名前が下からスクロールする。そして最後、いかりやが「よろしく~!」といって、全員でお辞儀をしてオープニングが終わる。その間、1981年5月9日の回は1分36秒あった。現在、番組開始から1分36秒もオープニングで費やしていたら、チャンネルを変えられてしまうだろう。
ちなみに、この『全員集合』の曲は、視聴率が裏の『オレたちひょうきん族』に抜かれ始めた1983年から2コーラスに減っている。また『笑っていいとも!』でも当初はタモリが「ウキウキWATCHING」を1番まで歌っていたが、しばらくしてタモリは歌わなくなり、曜日レギュラーを呼び込むようになった。つまりはそれだけ早く視聴者は、本編内容を求めているのかもしれない。
番組への意識を高める「中毒性」
さらに「オープニング曲」がなくなった背景として、曲製作のための人件費がそこまでかけられなくなったことにも理由があろう。『笑っていいとも!』にしても『笑点』にしても、きちんとしたプロに曲の製作を依頼していた。『情熱大陸』の2代目オープニング曲、そしてエンディングは、バイオリニスト・葉加瀬太郎による曲である。『小さな旅』の音楽は、アニメ『ルパン三世』などでおなじみの作曲家・大野雄二、『サンデーモーニング』でオンエア中延々とループしているBGMは作曲家・三枝成彰によるもの。また『ニュースステーション』や現在の『報道ステーション』もオープニング曲はジャズピアニストなど一流の音楽家が手がけている。こうしたオープニング曲たちが番組への期待感を煽る役割を果たしてきたのだが、今や新番組が立ち上がっても既存の曲を使うことが多く、新たに書き下ろされる機会が減っているのが現状だ。
ショーとしての様式美
いわゆるエンディング曲も、現在は新人アーティストのプロモーションの場となっているが、かつてはきちんと「お決まりの曲」があった。それを聴くことで、視聴者は番組の終わりをしみじみと感じていたものだ。70〜80年代に放送された人気番組『カックラキン大放送』では、<楽しかったひとときが 今はもう過ぎていく>と歌っていたし、『ドリフ大爆笑』も、<さよならするのは辛いけど 時間だよ 仕方ない 次の回までごきげんよう>と歌いながら挨拶していた。
かつてテレビ番組は「バラエティショー」と言ったように「ショー」だった。つまりテレビという名を借りた「劇場」だったのだ。だから始まりと終わりは当然のごとく大事にされた。しかし今やいつ始まり、いつ終わったのかわからないような番組スタイルが一般的とされている。