ぼくのりりっくのぼうよみが考える、“本当の姿”を超える方法「“強く、美しくありたい”という気持ちを肯定したい」

ぼくのりりっくのぼうよみが考える、“本当の姿”を超える方法「“強く、美しくありたい”という気持ちを肯定したい」

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「強烈な負の感情とか、ネガから発生するものがないというのは、逆に悲しい」

ーーシングルに話を戻すと、「つきとさなぎ」(テレビ東京ドラマ25『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』エンディングテーマ)は、<さなぎ>という言葉の位置づけが興味深くて、優しいメッセージを感じました。

ぼくりり:そうですね。構図は「SKY’s the limit」と同じで、1番2番で「才能なくて辛いよ」みたいなことを歌っていて、それに対して「いや大丈夫ですよ、いけるいける」と横から入ってくるような曲で。これ、僕は“Black Bird形式”と呼んでいるんですけど、1stアルバムに収録されている「Black Bird」で初めて使ったスタイルなんです。意外と人気が高いから、これはいけるんじゃないかと思って、フォーマットとして固めてみました。「Black Bird」自体は、考えずに書いたらこうなった、という感じだったんですけどね。

ーー歌詞はどんなところから生まれたんですか?

ぼくりり:「Noah’s Ark」というメディアをやっているんですけど、そこで歌人の穂村弘さんと対談して、そのときの話からインスピレーションを受けているというか、丸ごと曲にしてみました、みたいな感じです。そのタイミングで、“才能”みたいなものについてすごく考えるようになって。

ーー「18歳でこんなふうに世に出た人にはわからない心理がある」と言われていましたね。

ぼくりり:ルサンチマン攻撃を受けて(笑)。奴隷が皇帝を刺すというか、「お前は生まれたときから満たされている」と言われると、強制的に降参させられてしまいますよね。ただ、そういうふうにルサンチマンで苦しんでいる人も励ませたらいいなと思って。さっきのバックボーンにも通じる話ですけど、僕のなかにルサンチマンはなくて。強烈な負の感情とか、ネガから発生するものがないというのは、逆に悲しいんです。

ーー悲しい?

ぼくりり:例えば、僕が大好きな北海道のラッパーは、オーストラリアで麻薬の密輸をして、現地の刑務所にぶち込まれていた経験があって。そういう人が「地獄を見た」と歌うと、すごい説得力があるじゃないですか。僕は地獄の業火なんか経験していないし、あったとしてもちょっと熱いお湯くらい。だから、同じ言葉でも説得力がないな、と思っちゃうんですよ。

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ーー冒頭の「リアル/リアルじゃない」の話にも通じますが、「当事者や経験者だけに語る資格がある」みたいな立場は昔からあって、ぼくりりは違う立場を取っているように見えますけど。

ぼくりり:そうですね、確かに。この曲を書くのも抵抗があって、才能がなくても何年も頑張り続けて、あきらめているんだけれど、もしかしたらとも思って、枯れている泉をずっと掘り続けているみたいな景色を、一応メジャーデビューできて、ある種満たされているはずの僕が歌うのはどうなのかな、と。不誠実なんじゃないか、とちょっと迷ったんです。

ーーでも、当事者だけでは議論が狭くなるし、客観的な意見や発言にも意味があるでしょう。ぼくりりの作品は、強烈なリアリティーがあるわけじゃなくても面白い。ところで、曲を作り終えても葛藤はまだ残っているんですか?

ぼくりり:残ってますね。みんなにどう受け取ってもらえるか。例えば、米津玄師さんの「LOSER」という曲、カッコよくて好きなんですけど、“いや、「WINNER」じゃん?”って思っちゃったりするわけじゃないですか。そういうふうに突っ込んでしまうというか、酔ってしまえないのが課題なんです。

ーー第三者としてみると、本人と表現が一致していないから作品を楽しめない、というのもつまらないことかなという気がします。

ぼくりり:そうですよね。確かに、そこで「LOSER」という曲を聴けなくなるのはもったいない。それに、この仕事が面白いのは、そういう葛藤も曲にしちゃえばお金がもらえる、という無限生成装置みたいなところがあって。あんまりループしすぎるとつまらないですけど、最近は本当に移り変わりが早いし、いま「sub/objective」と同じような曲を作ろうとしても、全然違うものになると思いますし。

ーー今回は2曲ともいい仕上がりでしたが、今年はまだ多くの曲が聴けそうですか?

ぼくりり:そうですね。けっこうやる気があって、ガンガンやろうと思っています。年内にはまとまった作品が出せればと。

ーー楽しみですが、『Noah’s Ark』とは全然違う感じになりそうですか?

ぼくりり:全然違うと思います。需要と供給――単純にライブをやってみて思ったんですけど、あんまり“1枚を通しての物語”とか、求められていないんじゃないかと。言い換えると、音楽というフォーマットが物語を表現するのにあまり適していないんじゃないか、と思って。物語を作るんだったら、やっぱり小説とか漫画とか映画のほうが楽しそうだし、別のフォーマットを模索した方がいい。いまはもっと音とか気持ちよさに根ざしたものにしようという気持ちが強いですね。

(取材=神谷弘一/構成=橋川良寛/写真=三橋優美子)

■リリース情報
『SKY’s the limit / つきとさなぎ』
発売:5月24日(水)
価格:¥1,000(税抜)

<収録曲>
1. SKY’s the limit(資生堂「アネッサ」CMソング)
2.つきとさなぎ(テレビ東京 ドラマ25「SR サイタマノラッパー〜マイクの細道〜」ED曲)

■ライブ情報
『2017年秋ワンマンライブ 東京公演』
10月8日(日)日比谷野外大音楽堂

『2017年秋ワンマンライブ 大阪公演』
10月15日(日)ユニバース

※詳細後日発表

ぼくのりりっくのぼうよみオフィシャルサイト

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