“AKB48選抜”が抱える課題ーー小嶋陽菜の卒業作メンバーから考える

 AKB48が、47thシングル『シュートサイン』の選抜メンバーを発表した。

 表題曲は同作をもってグループを卒業する1期生メンバー・小嶋陽菜がセンターを務めるほか、大西桃香、山本彩加(NMB48)、吉田朱里(NMB48)がAKB48名義のシングルとしては初選抜入りを果たしている。

 選抜メンバーは前作から10名増で32名の大所帯となり、姉妹グループのメンバーも多く含まれている同曲。このラインナップについて、リアルサウンドでAKB48系の記事を多数執筆し、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う(青弓社ライブラリー)』の著者でもある香月孝史氏はまず、今作の位置付けについてこう定義する。

「今回の『シュートサイン』は小嶋さん卒業作の表題曲ではあるものの、“卒業曲”としての楽曲は別途カップリングに収録されており、『シュートサイン』はドラマ『豆腐プロレス』(テレビ朝日系)の主題歌としての側面が強い一曲です。選抜メンバーも、前作『ハイテンション』から卒業した島崎遥香さんを除く全員が引き続き登板し、姉妹グループからも多くのメンバーが起用されており、小嶋さん卒業という一点に集中するというよりは、様々な要素を含んだ一曲といえるでしょう」

 そんなラインナップにおいて、同氏はNMB48メンバーの抜擢に注目したいと語る。

「NMB48はもともとタレント性の高いメンバーの多いグループですが、これまでの活動では山本彩以外はそこまで全国にリーチしていなかった印象です。グループ内で活躍し、センターも経験している白間や、NMB48最新作で選抜に大抜擢された山本彩加、YouTuberとしての活動でグループのファン以外を獲得しつつある吉田などが、今作を通してどこまでアプローチできるのか気になります」

 続けて、姉妹グループからメンバーが起用されることの多い、ここ数年のAKB48選抜が抱える課題についてこう指摘する。

「かつてはあくまでAKB48としての選抜メンバーが選定され、そこにプラスアルファの要素として姉妹グループから数名入るかたちだったものが、現在は増加する各姉妹グループからエース格が入るのは当たり前で、加えてそれら姉妹グループの期待株が入るという構成になっています。いくつもの視点が一つのシングル内に集約されるので、それぞれのグループのファンから観ても『100%満足する』という状態になりえないのが現在のAKB選抜。いわば今は、AKB48のシングル表題曲が“48グループ全体の表題曲”となっているわけですが、NGT48もその対象になり、今年はさらにSTU48が増えることを考えると、よりAKB48所属の若手メンバーに焦点が当たりづらくなってしまうことは確かです」

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