SEKAI NO OWARI、“ドラゲナイ”以降どう支持を広げた? 「ブレーメン」までの活動を追う

“思想”を“行動”に移した「Hey Ho」と、バンドのこれから

 ドラゲナイで大きく飛躍したSEKAI NO OWARIが、2016年に唯一リリースしたシングル『Hey Ho』。前述した動物殺処分ゼロプロジェクト「ブレーメン」立ち上げと同時に支援シングルとして発表された同作は、楽曲の収益金が「ピースウィンズ・ジャパン」に寄付され、動物殺処分ゼロ活動のための資金として使用される。

 作曲はNakajin、作詞はFukaseとSaoriの共作。アイリッシュ民謡にも通ずるフォーキーな管弦楽が鳴り、歌詞も同プロジェクトに沿ったものとなっている。プロジェクトそのもののアイデアはFukaseの発案だが、作詞に関しては主にSaoriが主導権を握って製作されたという。

 2013年にリリースした代表曲「RPG」の続編と位置付けられた同曲は、新たな船出を歌っている。<空は青く澄み渡り 海を目指して歩く 怖いものなんてない 僕らはもう一人じゃない>(「RPG」)と歌っていた彼らが、辿り着いた海原を前途に<この嵐の中、船を出す勇気なんて僕にあるのかい>(「Hey Ho」)と葛藤するという流れになっている。

<Hey Ho Stormy Seas
誰かからのSOS
きっとこのまま「誰か」のまま放っておけば
忘れてしまうだろう>(「Hey Ho」)

 「Hey Ho」と「ブレーメン」プロジェクトは、これまでの楽曲でも表現されていたFukaseの思想や問題意識を、まさに“行動”に移したものだ。初期の名曲「虹色の戦争」に代表されるような<虫が叫ぶ平和な世界で僕らは愛を歌っている 虫籠の中で終わりを迎えた「命」は僕に何て言うだろう>というような問題意識を、ようやく行動に移せるだけの人気と知名度を得た。

 Saoriは「ブレーメン」プロジェクトに関するインタビューの中で、人気や知名度を得た今だからこそ効果があると答えている。

「デビューしたばかりのころには、同じことをしても効果は少なかっただろうけど、今ならできる」(http://sippolife.jp/article/2016101900005.htmlより)

 そんな新たな船出の歌を、2016年年末にいくつもの大型歌番組で披露することは、2017年以降に彼らが起こす様々な活動のことを歌っているように思える。今回のプロジェクトに限らず、おそらくSEKAI NO OWARIはこれから社会的な活動を増していくはずだ。「ドラゲナイ以降」だからこそできる活動を、その時だからこそ意味を持つ音楽を、彼らは積み重ねていくだろう。

■潮見惣右介 TwitterBlog
1990年生まれ。書店員/ライター。文学や音楽、ポップカルチャーの自由研究ブログを執筆しながら、ライターとして「Real Sound」「KAI-YOU」などに寄稿。

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