cinema staff、自主企画『シネマのキネマ』で提示したバンドの新たな立ち位置
cinema staffが11月30日、東京キネマ倶楽部にて自主企画イベント『シネマのキネマ』を開催した。これまで先輩との対バンが多かったcinema staffが、結成10周年を迎え、自分たちよりも下の世代と対バンをするという新たな取り組みとして行ったもの。今回招かれたのは、Halo at 四畳半、HOWL BE QUIET、Ivy to Fraudulent Gameといった、個性豊かで勢いのある3バンドたちだ。
まずステージに登場したのは、Ivy to Fraudulent Game。乾いたドラムに儚げなサウンド、マイクに噛みつくように歌う寺口宣明(Gt/Vo)の姿が印象的な「青写真」からライブはスタート。彼らはサウンドで独自の空間を作り出すことに長けている。ポストロック然とした変拍子の楽曲では張り詰めた空気を、正統派ロッカバラードでは熱量の高い空間を作りだした。ラストには寺口が「負けることは一切しません。飽きるまでついてきてください」と“青さ”を感じさせる言葉を残すと、ライブ締めの定番曲「青二才」を全力で披露しステージを去った。
2番手はcinema staffとレーベルメイトであるHOWL BE QUIETが登場。一変して華やかなステージングを展開した。クラップやシンガロングのある楽曲を中心に、会場全体を巻き込んでいく。そして、竹縄航太(Vo/G/Piano)はハンドマイク、キーボードと次から次へとライブスタイルを変えてバンドの自由度を表現していった。「本当に自己中な歌だけど」との前置きから始まったのは、12月14日リリースのシングル表題曲「サネカズラ」。竹縄自身の恋愛経験を歌った渾身のラブバラードを聴かせ、しっとりしたムードの中、楽曲の披露を終えた。
続いて登場したのは、Halo at 四畳半。「cinema staff育ちのバンドです」と渡井翔汰(Vo/G)が挨拶すると、会場からは大きな拍手が起こった。日常の心象風景を映し出す等身大の歌詞と疾走感あるサウンドによる、王道ギターロックを次々と演奏。ストレートに曲の良さを届けるそのスタイルは、まさにcinema staff育ちといえるだろう。また、初めてメンバーでライブを観に行ったのがcinema staffだったという彼らは「バンドっていうのは夢がある。ロマンがある」と感慨深げに語り、“憧れのバンドとの対バン”というひとつの夢を叶え、ステージを後にした。
そしてラストを飾ったのは、本イベントの主宰であるcinema staff。ステージの中央に4人が集まり、グルーヴを確かめ合いながら「望郷」を演奏。リハで入念なサウンドチェックを行っていた久野洋平(Dr)のドラムがバンドをひっぱっていき、飯田瑞規(Vo/G)、三島想平(B/Cho)の美しいハーモニーはもちろん、その2人に挟まれた辻友貴(G)も歌うようにギターを奏でる。
イベント当日はcinema staffの新作『Vektor E.P.』リリース日でもあった。同作より、耳から離れないフレーズが突風のように演奏を捲し立てる「エゴ」を披露、激情したイントロで始まる「great escape」では、エモーショナルなパフォーマンスでオーディエンスを煽っていく。飯田はMCで「意志がつまってるから、音に。聴いてくれれば伝わると思う」と『Vektor E.P.』について語り、「返して」「ビハインド」を続けて演奏した。本作収録曲は変則のリズムが絡み合う中で、メロディやフレーズが声や楽器で美しく歌われていくという、彼らの持ち味であるコントラストにさらにポップさが加えられている。それらは聴いていて純粋に楽しく、新曲とは思えないほど会場にも浸透していた。
その後の「thema of us」では辻が客席に飛び込み、盛り上がりも最高潮に。そして、バンドのエモーションが歌と演奏に込められた「希望の残骸」でライブを終えた。