メジャー1stシングル『生きていたんだよな』リリースインタビュー

あいみょんが明かす、リアルな歌と言葉が生まれる瞬間 「古い人間のままではいたくない」

 

「あの、あたし、めっちゃ怖がりなんですよ。度が過ぎるくらいの」

ーーちょっと話が戻るんですけど。上京してきたのはいつでしたっけ?

あいみょん:今年の2月ですね。

ーー何か変わりましたか?

あいみょん:あの、あたし、めっちゃ怖がりなんですよ。度が過ぎるくらいの。

ーーたとえば何が怖いの? 夜とかそういうこと?

あいみょん:やばいですよ、あたしのこの話。外出して家を開ける時は常に泥棒が入ってるって思ってますし……。

ーーそ、それは興味あるなあ。ぜひ聞かせてください。

あいみょん:一人暮らしを始めた最初の夜は、鍵しめたっけな?って何回も確認しに行って、もうドアノブ潰れるんじゃないかってくらいガチャガチャやりました(笑)。あと、東京って地震が多いじゃないですか? 地震が来たらその揺れで部屋に人が入って来ちゃうって思うんですよ。ネット繋ぐのも……繋ぐのに人を入れなくちゃいけないじゃないですか。業者さんを。それがめっちゃ怖くて。引っ越してきてからずっとどうしようか悩んでたんですよ。でもネットないとヤバいじゃないですか? いよいよ勇気を出して繋ぎに来てもらった時は、ベランダの窓とか全開にしてました。いつでも逃げられるように、冬でしたけど(笑)。でもいい人でした。

ーーそれはよかった(笑)。

あいみょん:でも、あたしがあたしのことをよくわからないのは、そうやってすごい怯えるくせに、小説とかは殺人モノばっかり読むんです。それ読んで、あー怖い気をつけようってなって、また怯えるという。アホじゃないですか(笑)。

ーー(笑)東京にはもう慣れたんですか?

あいみょん:そうですね。引っ越してくる前からちょくちょく来ていたというのもあるので、ぜんぜんすぐ慣れました。でも、電車とかは怖いですね。東京の電車は恐怖でしかないです。

ーーえ、なんで? 大阪の電車だって混んでたりするでしょう? そういうことじゃないのかな?

あいみょん:いや、大阪はまだギリ、あれは混んでないです。あたしの出身は西宮で最寄りの路線が阪神電車なんで、阪神戦がない限りそんなに混まないんですよ。東京ってやっぱりすごくいろんな人がいるから。こないだもホームの壁のところにうずくまってる人がいたんですけど。そういう人見ると、コイツ絶対爆弾持ってるって思うんです(笑)。爆弾持ってるからあんなふうにうずくまってるんだと。今から爆発させるから心を落ち着かせてるんだと思ってしまうんですよ。それでそういう人を見ると、そいつからめっちゃ離れた車両に乗らなければ安心できない。あとは、暗めのサラリーマンが手をポケットに突っ込んだ時の怖さ。何を出すのか!?と思って。いやもう普通にスマホなんですけど(笑)。

 

ーーまさか銃は出てこないよね、いくら東京でも(笑)。それは子供の頃からそんな感じなんですか?

あいみょん:いや。17、18歳くらいの頃からこんなふうになっちゃいました。そして今が一番ひどい感じですね。周りの人から、そんな感じで生きるの辛くない?って言われるんですけど、そういうことでもなくて、ただ一人で怯えてるだけなんです。

ーー2曲目の「今日の芸術」にも爆弾が出てきますね。曲調はポップな印象があるんですけど、あいみょんの選んでいる言葉にドキッとさせられます。この、トゲのように刺さる言葉の感じが、世間とあいみょんの微妙なズレみたいなものを表しているような気もして、だから何となくこの曲は日常に対してのあいみょんの生き方宣言のように僕は受け止めました。

あいみょん:そうですね。この曲はたしかにそんな感じがありますね。うん。けっこう岡本太郎の影響を受けて書いていて。岡本太郎ってたくさんの作品とともに言葉も残してるんですけど、岡本太郎が言いそうなことをあたしが言ってやるって思いました。

ーーここに出てくる意思表示の言葉っていうのは、あいみょんの中で日常感ってあるの?

あいみょん:ありますね。普段、そんなに人には言えないけど思ってることをわりと正直に書いてます。

ーー恋愛観も入ってるもんね。

あいみょん:これもすごい思ってることですね。結局楽しいのって片思いしてる時だし、うまくいきすぎてもあんまり面白くないよなって。

ーー歌の中だと言いたいことが言えるって感じはある?

あいみょん:それはそうですね。だって普段自分の考えを素直に言えるような場がないじゃないですか。SNSだって自分の考えをそのまま垂れ流せるような場所では絶対ないし、むしろ逆に正直になれない怖い場所だと思います。

ーーじゃあ、あいみょんにとって音楽というのは、今のところ唯一自分の考えや気持ちを誰にも邪魔されずに表明できる場所としてあるわけですね。

あいみょん:うん。たとえば受験勉強をがんばってる子に対してどうとかっていうのはないですよね。それよりも自分が思ったり感じたりしているままを音楽にしているってことですね。

ーー不自由さを感じたりはしない?

あいみょん:ぜんぜん。曲を作るのにあまり苦しんだこともないですね。

ーーどういう時に歌のテーマが降りてくるんですか?

あいみょん:ネットでも電車の中でもいいんですけど、ぜんぜん知らない人のプライバシーみたいなものが垣間見えた瞬間ですね。この人こんなことやってて、こんなことでイラついてるとか。

ーー日常の薄皮を一枚めくった人間の生々しい感情みたいなところが見えた時に歌が出てくるんだね。

あいみょん:きっかけはそういうところですね。満員電車の中でカップルの男の子が一生懸命女の子を守ってるところを見たりすると、歌詞が降りてくる。

ーーその一瞬の光景が物語になるんだ。

あいみょん:めっちゃストーリーにしちゃうので。けっこうストーリー性持たせる曲が多いですね、そういえば。

ーー実際に見た光景をそのまま歌にするんじゃなくて、自分の中で一度物語にしてアウトプットするから、ドキュメンタリーっぽさがないのかもしれないね。

あいみょん:ああ、そうですね。そうじゃないと自分の音楽にはならないんでしょうね。

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