山本彩が表現する、SSWとアイドル性の絶妙バランス 『Rainbow』ツアー東京公演から紐解く

山本彩、SSWとアイドルの二面性

 満を持して、という言葉がここまで似合う人物もなかなかいない。山本彩が、11月8日にZepp Tokyoにて開催した『LIVE TOUR 2016~Rainbow~』は、彼女のシンガーソングライターとアイドルという2つの側面の共存ぶりを目撃できたライブであった。

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(C)Sayaka Yamamoto

 ソロアルバム『Rainbow』のリリースを発表したのが、8月25日放送のラジオ番組『AKB48のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)でのこと。それを機に、アルバムの全容や今回の全国Zeppツアーの開催が順次アナウンスされていった。山本といえば、NMB48を初期メンバー、リーダーとして6年にわたり先頭を走ってきた人物であり、今年の『AKB48 シングル選抜総選挙』では約11万票を獲得し第4位に輝いたAKB48グループを代表する存在である。一方で彼女は、兄の影響で学生時代よりギターを始め、グループ加入以前よりシンガーソングライターとして活動することを夢見ていた。アルバムでは、亀田誠冶をプロデューサーに迎え、13曲中6曲の作詞・作曲を自身が担当。スガ シカオ、TAKURO(GLAY)ら錚々たるプレイヤーがクレジットに参加したアルバムは『Rainbow』のタイトルが表す通り、多種多様な楽曲に彩られた作品となった。

 満員の熱気溢れる会場。ステージ上に複数の動く人影が現れるや否や歓声が湧く。それだけでどれだけこの日のライブに多くの期待がかかっているのかを感じさせた。ステージ前方にかかる紗幕に山本のシルエットが映し出されると、会場のボルテージは一気に沸点を超える。ライブは伝えられない秘めた思いが綴られた「ヒトコト」で幕は開けた。続けて披露した「レインボーローズ」は、アルバムの表題曲であり、山本が作詞・作曲を手がけた楽曲。“無限の可能性”の花言葉を持つレインボーローズを、自身の生誕祭にファンから貰ったことがこの曲のインスピレーションに繋がっているという。筆者は10月26日に東京ドームシティ ラクーアガーデンステージにて行われたアルバム発売記念イベントにも足を運んでいたが、イベントの性質上ハンドマイクで披露していたあの日とは違い、エレキギターをかき鳴らし歌うその姿には貫禄すら感じた。ファンが手首につけるツアーグッズのレイブバンドによって会場はレインボーに光り輝く。序盤からの会場の盛り上がりに山本の表情にも笑みがこぼれていた。

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(C)Sayaka Yamamoto

 NMB48での山本彩のソロ曲「抱きしめたいけど」は、ハンドマイクでのパフォーマンスとなった。ステージ袖でファンへ目配せを送る姿勢からは、シンガーソングライターであると同時に“アイドルとしての山本彩”も垣間見せる。一転、TAKURO作曲の「BAD DAYS」では妖艶かつ抑揚たっぷりにイントロを歌いロックシンガーとしての風格を漂わせた。山本のバックバンドを務めるのは、小名川高弘(Key,Gt)、草刈浩司(Gt)、SATOKO(Dr/FUZZY CONTROL)、奥野翔太(Bass/WEAVER)、Ayasa(Vn)という名の知れたメンバー。ライブ序盤のMCにてバンドメンバーそれぞれに“担当”があることを明かし、自身は“しゃくれ担当”だと愉快に語りながらメンバーとの仲の良さを見せていたが、ロック色が強いナンバーではよりバンドとしてのグルーヴを色濃く感じさせた。アルバムリード曲であり山本が手がけた切ない失恋ソング「雪恋」、山本の曲に秋元康が詞をつけた「疑問符」を披露した後は、「雪恋」に紐付け失恋トークを展開。「失恋しようがしまいが、みなさん“ひとりじゃないです”ということを歌いたいと思います」という一言から、JTのCMソングとしてもお馴染みの「ひといきつきながら」へ。アコースティック編成で奏でられるこの曲は、ライブではAyasaによるバイオリンの音色が加わり会場に暖かい空気が流れる。山本もアウトロでブルースハープを披露し、多彩な才能を見せつけた。山本が作詞・作曲を手掛けた楽曲の中でもマイナー調の「心の盾」は、理不尽なことに屈せず心に盾を持つという思いが込められた楽曲。強い眼差しで歌うその姿からは山本の志の高さが伺えた。

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