ビアンカ・ジスモンチが明かす、作品づくりの原点「私にとって、作曲は生活の一部」

尊敬するアーティストの楽曲には、自由と真実が込められている

 

―― 話は遡りますが、ソロ作ではエグベルトの長年のパートナー、故ナナ・ヴァスコンセロスも参加していますね。

B:私は幼い頃から音楽家である父と、母は女優だったので映画人に囲まれて育ったの。ナナや、今作で共演しているシンガー、ジャニ・ドゥボキは私の人生でも、とても大切な人。ナナにとって、音楽は人生だった。ナナは音楽を通して、自分を表現し、他人も表現できたの。また私にとって彼は、父親同然だった。曲を聴くだけでナナの気配を感じるの。ナナとレコーディングした日は特別だったわ。涙がとまらなくなって、私もナナも抱き合って、ずっと泣いていたの。言葉は必要なかった。音楽がすべてだったの。ナナは父にとって特別な人で、それは私にとっても同じだった。

―― 今年4月に、ナナとエグベルトのステージが日本で行われる予定でした。それが叶わず、当日はナナ追悼のソロステージになってしまいましたが、彼のナナへの思いが感じられる素晴らしいコンサートでした。お父様はピアノとギターを演奏されますが、偉大な父親と同じ楽器を演奏するにあたって、プレッシャーなどはなかったのでしょうか。

B:ピアノのレッスンを始めたのは9歳だったので、なかったわ。なぜ、私はピアノを選んで、兄はギターを選んだのか、不思議ね。子どもだったので、自然ななりゆきだったの。特に難しいことはなかった。家には本当にたくさんの楽器があって、その中でもピアノが大好きだったの。

――作詞・作曲のアイデアは、どこから得ているのでしょうか。

B:出逢う人、訪れた国、ミュージシャン、すべてね。私にとって、作曲は生活の一部なの。日本で感じたこと、聴こえてくる音楽、そのすべてが作曲に通ずる。まるで日記のようにね。海外の新しいミュージシャンを見つけると、いつも曲を書くの。次作もそのように生まれ、すべての作品は、とても違ったインスピレーションをもとに作られているの。

―― 最後に、あなたの目指す先について、教えてください。

B:私の父やナナ、キース・ジャレット、私が尊敬するアーティストの楽曲には、自由と真実が込められているの。どんな時もそれは変わらない。他人の意見に左右されずに、そのままの自分でいられる。いつか、私もそんなアーティストになれたらと思うわ。

 

 

 

 

(取材・文=落合真理/撮影=Yuka Yamaji/写真提供=COTTON CLUB)

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