SMAPとは何かーー明治大学講師が語る「国民的グループ」がもたらした“超”アイドル化

引き続き応援していくことが、5人で活動する可能性につながっていく

ーー関さんはメンバーの中では中居さんに最も関心があるとのことですが、中居さんの魅力を改めてお聞きしたいと思います。

関:中居さんが画期的だったのはアイドル的なスタイルを思い切り崩したところです。それまでのアイドルは一般人と違ったセレブなイメージだったのを、中居さんはこたつに入って焼酎を飲むのが一番楽しいと話したりして、今までのアイドルのイメージを壊して非常に身近な存在になっていきました。トーク番組も得意で話すのが上手。アイドルが身近なものであると同時にコミュニケーション能力があり、アイドルとファンの関係性が一方通行ではないという感覚を中居さんがもたらしました。それがひいてはAKBグループが握手会をするとか、コミュニケーションをすることによってアイドルが成立していくというパターンがあることを身近にしていったんだと思います。あとは自分の弱さを見せても上手にカバーをできるという点。歌が得意でないことを積極的にネタにしていくことで、「アイドルは完璧でミスを見せてはいけない」ということを逆手に取ったことで、より親近感を生みました。

ーーなるほど。

関:自分からああいうイメージを積極的に出していった人はジャニーズにもいなかったと思うんです。むしろ触れてはいけないことだった。しかし、中居さんがそこにあえて触れていったのは、木村さんが強いカリスマ性で一人抜きん出てしまったグループ内のバランスを、逆の力で引っ張って保ったんだと思うんです。そうしないと、グループが1対4になってしまう。それによってSMAPの均衡が保たれ、全員が自分の個性を出せるようになりました。一人にパワーが偏ると他の人が個性を出すことが難しいけれど、中居さんと木村さんがある意味両極端の場所で活躍していくことで、その間の空間で各メンバーが自分に合った活躍の場所を見つけていくことができたのだと思います。そういう意味でも中居さんは、SMAPのリーダーだということにものすごく自覚的であると言えるでしょう。

ーーそのようなグループ内のバランスの取り方は、後輩にも受け継がれていますよね。ほとんどのジャニーズグループは、メンバー全員の個性を大事にする傾向にあります。逆に言えば、抜きん出た圧倒的な存在感のメンバーがいないということでもありますが……。

関:そうですね。でもそういうメンバーがいたグループは、あまりうまくいきませんでした。「圧倒的個」というのは難しいんですよ。だから滝沢秀明さんはタッキー&翼なわけで。彼のような存在はユニット的なものでグループ的なものには向いていない。うまくできています。

ーー中居さんが保ってきたバランス感覚というのは、ご自身が意識的に行っていたものなのでしょうか。

関:彼は自分で考えていたような気がしますね。

ーーファンの方々の中居さんに対する信頼はとても大きいです。みなさんも中居さんがグループを一番に考えているということを感じ取られていたんでしょう。しかし、それだけの思いを持つ中居さんがいても、今回のような結末に行き着いたということ。この現実をどう受け止めて、私たちは過ごせばいいと思いますか。

関:「国民的アイドル」という看板を下ろすということは置いておいて、もう一度一人一人のメンバーがこれからの活動についてどんな風に考えているのか、どんなことをしたいのかを想像して、それを応援していくということですよね。その中でまた5人が集まってやれることがあればやっていけばいい。それをまた応援すればいいじゃないですか。ひとまずはSMAPについてあまり言うよりは、その先の一人一人の活動をどう応援していくか、自分がどう関わっていけるのかを考えていくことが大切ではないかと。彼らを引き続き応援したり支援していくことで、また5人で活動する可能性につながっていく。

ーー解散したグループやバンドが復活、再結成するということは少なくありません。

関:そういった前例を見ていると、一人一人のメンバーがある程度自分のやりたいことを成功させて、余裕が生まれたとき実現しているように思います。簡単に言えば、一回SMAPという存在を分解してもう一度一人一人が見直し、もう一回SMAPとしてやっていけるならやっていくということを考え直すチャンスなのかもしれないということですよね。二十数年間今までずっと走り続けてきて、それが当たり前になってしまったわけだけど、当たり前ということが本当にあり得るのかということは常にあるわけです。ここで一回見直して「やっぱりSMAPとしてやりたい」と5人が思い、ファンの方もそれを支持していれば、彼らはまた集まってくれる気がします。ここは一回、長年やってきたことを一度見直す時期なんだと捉えたらどうでしょう。これまでが当たり前すぎたということです。45歳を過ぎてもずっと同じようなスタイルで活動してきたグループはいなかったじゃないですか。前例がないわけです。「50になっても60になってもまたSMAPでやれるんだ」と確信が持てたら、また活動することになるでしょうし。そして、私たちもそこまでアイドルを応援できるのかということが問われているようにも思いますね。

(取材・文=久蔵千恵)

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