大森靖子が『ピンクメトセラ/勹″ッと<るSUMMER』で開花させた“女の子”プロデュース力

 加えてカップリングには80年代のSugarのヒット曲「ウエディング・ベル」の過剰なまでにスウィートなボーカルがむしろこの曲の狂気を加速させるカバーも収録。元カノを結婚式に招待するシチュエーションなんてありえないと言うより、こりゃ立派な妄想ソングである。でも思い込みも何もかも愛おしい。この曲での大森の演者としてのパフォーマンスの高さは熟練の女優のようだ。

大森靖子「ウェディング・ベル」

 『TOKYO BLACK HOLE』の完全生産限定盤に付属した妊娠から出産までの日常を綴ったエッセイ、そして最果タヒが大森の言葉を基に編んだ『かけがえのないマグマ 大森靖子激白』でパーソナルかつ情念よりは物事の見方を開け広げた彼女。もちろん、それは歌うことの副産物でしかなかったのかもしれない。そして様々なクリエイターを迎えて素材として、また作詞作曲者として全方位に音楽的なブラッシュアップを図った彼女の次の一手は、女の子のためのプロデュース・チームの提案を自らのシングルでプレゼンすることだった。

 彼女自身のステージアップはもとより、大森ブランドのアイドル楽曲がアイドルシーンで存在感を放つことにも大いに期待したい。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Skream!」「NEXUS」「EMTG music」「ナタリー」などで執筆。音楽以外にも著名人のテーマ切りインタビューの編集や取材も行う。

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