渋谷からPARCOが消えた日ーースカパラと欅坂46が表現した「共通の感覚」とは

 8月7日、渋谷パルコが、その43年の歴史に一旦の幕を閉じた。

 最終日の19:30頃、パルコ正面玄関前の公園通り広場に現れたのは、揃いのスーツに身を包んだ9人の男たちだった。手にした楽器を構えるや、いきなり演奏が始まった。東京スカパラダイスオーケストラだ。事前の告知は一切なく、完全なるゲリラでのストリートライブ。沿道まであふれた人混みをあっという間に巻き込んでいく。

 

 渋谷パルコの最後にスカパラが華を添える−−−−この光景が唐突に映った人もいるだろうか? しかしこれこそがパルコがただの商業施設ではないことをわかりやすく示している幸福な光景なのだ。

 

 パルコはファッションビルとしての側面だけではなく、カルチャーの発信基地として渋谷という街そのものをデザインしてきたと言ってもよい。パルコ劇場では寺山修二の書き下ろし公演が行われる一方で、三谷幸喜、長塚圭史、本谷有希子といった新進気鋭の演出家が羽ばたく舞台となり、パルコギャラリー(現パルコミュージアム)では村上隆の初期展覧会が行われたり、注目され始めたばかりの日比野克彦の個展を開催したり、Chim↑Pomは渋谷パルコPART1そのものを作品に取り込む大掛かりなエキシビジョンを開くなど(Part1正面の「PARCO」サインから「C」と「P」を取ったのは衝撃だった)、多くのアーティストを輩出、フィーチャーし、共に成長してきた。また、今年の3月には世界的デザイン集団Tomatoの展覧会が同会場を中心に渋谷の街を巻き込みながら開催され、TomatoのメンバーでもあるUnderworldが渋谷パルコの屋上でシークレットライブを開催したことが、大きなサプライズと共に話題となったことが記憶に新しい。

 映画ジャンルでは『トレイン・スポッティング』をアスミックと共同で配給し、映画館シネクイントを誕生させるきっかけとなった。さらにシネクイントの初上映作品は、ヴィンセント・ギャロ監督・主演の『バッファロー’66』で大きな話題となった(8月7日の最終日に特別上映された。またシネクイント最後の作品となった『シング・ストリート』は個人的に今のところ2016年ベスト!)。

 そしてクラブクアトロだ。1988年にスタートしたクアトロは国内外問わず良い音楽を生で発信する場として今も機能している。ニルヴァーナ、オアシス、ビョーク、レディオヘッド……クアトロが初来日公演だったという海外アーティストのラインナップは豪華そのものだ。そして国内でも渋谷系の台頭とともに「小沢健二×スチャダラパー」といった斬新な対バン企画などで注目を集めた。なかでも東京スカパラダイスオーケストラは活動の歩みとクアトロのオープンが時期を同じくするだけあって、その登場回数は歴代トップクラスを誇る。

 スカパラがこの日のストリートライブで披露した中に「Paradise Has No Border」という曲がある。酒造メーカーのCMでも話題になっているインスト曲だ。各地の夏フェスに出演し、ブラジルを経由して駆けつけたスカパラのボーダレスな活動そのものに肉付けされた同曲は、カルチャーの遊び場としてジャンルレスで面白いものを提供してきたパルコの精神と共鳴して夏の渋谷に響いた。

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