9thシングル『calling』リリースインタビュー

fhánaが明かす、成長と拡大への決意「掴み取った世界線を肯定する旅は続く」

 4月に2ndアルバム『What A Wonderful World Line』を発売し、そのツアーを終えたばかりのfhánaが、8月3日に新たなシングル『calling』をリリースする。 デビュー以来9作連続でのタイアップ・シングルとなる「calling」は、人気ゲームを原作に持つTVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』のエンディング曲にして、「旅の休息」をテーマにした珠玉のバラード。カップリング違いの「アーティスト盤」「アニメ盤」の2種類が用意され、アーティスト盤のジャケットはSpangle call Lilli lineの笹原清明が担当。どちらも夕暮れ時のマジックアワーを切り取った、印象的なアートワークになっている。彼らがシリーズ累計1600万本を超える人気作品を原作にしたアニメのエンディング曲に込めた思いと、今なお豊かに広がり続けるfhánaの世界線について、メンバー4人に訊いた。(杉山仁)

「Zepp DiverCity公演は今までで一番良いライブ」(佐藤)

――『What A Wonderful World Line』ツアーは、振り返ってみてどんなものになったと思っていますか?

yuxuki waga(以下、yuxuki):あのツアーでは演出面を僕らで1曲1曲全部指定して作っていったので、そういう意味でfhánaのライブのひとつの形を見せられたというか。あの延長線上に僕らの本当にやりたいライブがあるのかな、という手応えがありましたね。

――「虹を編めたら」で照明が虹色になったりと、様々な工夫がされていました。

yuxuki:そうですね。1曲目の「The Color to Gray World」は曲名通りほぼ色を使わずにやってもらって、2曲目が「虹を編めたら」だったんで、そこで一気に色をつけてもらって。ステージにライトを立てたのもそうですよね。音だけではなくて視覚も通してfhánaのライブを楽しんでもらおうとした、ひとつの結果だったんじゃないかな、と。

kevin mitsunaga(以下、kevin):今年の1月ぐらいに今までで一番濃いライブの反省会的なものをやったんです。その時に、ひとりひとりの立ち位置や、今まで見落としていた細かい部分を詰めたら、全体としてのグルーヴやパフォーマンスが向上した実感もあるんですよ。

towana:私の場合、会場に来てくれた人がどう感じてくれるかということを意識することができ始めたかな、って思います。会場を大きくしたいという意味ではなくて、「目の前の皆に楽しんでもらうために、もっといい歌を歌いたい」という思いが強くなったツアーでした。

佐藤純一(以下、佐藤):特に追加公演のZepp DiverCityでのライブは、自分の実感としても、色んな人の感想を聞いても、ある意味fhánaがメジャー・デビューしてから初めて、本当にいいライブができたんじゃないかと思っているんです。演奏自体はもっと上手くできた時もあったけど、ファンの皆やスタッフ、照明、全体の雰囲気や世界観が共有されている感じが、今までで一番よかったと思っていて。ライブに来てくれた人にも自分たちのことを理解してくれる人が増えたし、もともと理解してくれている人たちは、さらに深く世界に入ってきてくれている感じがしたし。

――じゃあ、今はどんな気持ちですか。新しいスタートというイメージ?

yuxuki:と言いつつも、この間も『LIVE FACTORY 2016』や『GIRLS' FACTORY 16』に出てきましたし、『Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-』への出演も決まってライブが続いているので、あのテンションをひたすら保っているという感じです。

佐藤:今回のツアーでひとつの基準が作れたので、ここからそれをさらによくしていくことを考えているところですね。

――そのツアー中にも観客に直接報告していましたが、今回の「calling」は『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』のエンディングテーマになっています。そもそも『テイルズ』シリーズにはどんなイメージを持っていましたか?

yuxuki:『テイルズ』はシリーズがはじまった頃から知っていたので、決まった時はすごく嬉しかったですね。俺はゲーム自体も結構やっていたんですよ。

佐藤:歴代の主題歌も錚々たる方が担当してきましたよね。大作だからといって曲を作る際の気持ちは変わらないですけど、偉大な先輩方と同じ作品に携われて嬉しいという気持ちでした。今回は今までにないぐらい明確なオーダーがあったんですよ。かなり長文ものを送っていただいて。

――へええ、どんな内容だったんですか。

佐藤:「人間と天族の間で使命を果たす」とか、そういう(作品に込めた)熱い思いですね。と同時に、「エンディングテーマでは旅の休息を表現したい。映像もそれを描いたものにする予定」ということが書いてあって。なおかつ、「ただほのぼのするんじゃなくて、重大な使命を背負っているという雰囲気もあってほしい」という感じの内容でした。

――それを表現するために、「calling」というタイトルが出てきたんですね。

佐藤:そうなんですよ。「calling(=使命)」ということで。

――それにしても、fhánaのタイアップ曲でここまでスローなバラードは珍しいです。

佐藤:これも、「スローなバラードにしてほしい」というオーダーがあったからでした。ただ、音楽的にも面白いことがやりたいと思って。それで出てきたのが今回のトリップホップ的な重いビート感なんです。加えて、1stアルバムの収録曲「white light」みたいに轟音ギターとストリングスがブワーッとくるエモーショナルな感じを、重いビートにかけあわせたというか。メロディやキック、スネアのタイミングはゆっくりだけど、その中のビート感は16ビートの早いものにしていて。イントロの12弦ギターを使ったアルペジオは、ファンタジー作品らしくエキゾチックな感じにしました。でも、芯にあるのは「熱さ」かな、と。

――スローな曲であればあるほど編曲で個性を出していくことが重要になりますが、今回のアレンジはどんな風に考えていったんですか?

yuxuki:音数が少ないので、ひとつひとつの音を研ぎ澄ませていくことが重要だったと思います。アレンジをしていたのがちょうどツアー中だったんで、いい意味で作品のことを考えずに、ライブのことを意識してアレンジしていったような気がしますね。

佐藤:間奏やアウトロの激しいところは、そうやってアレンジを進めていくうちに出てきました。あと、ちょうどレディオヘッドの新作『ア・ムーン・シェイプト・プール』を聴いていたんですよ。それでストリングスも、いつもの川本(新)さんではなくて、TECHNOBOYSの石川(智久)さんにお願いして、アカデミックな雰囲気の音を入れてもらいました。

towana:ボーカルもツアー中の勢いで録れたかな、という感じがします。聴いてくれるみなさんとより近いところにいる時期に録ることができたというか。

佐藤:ちなみに、レコーディングはツアー中でしたけど、作り始めたのは『What a Wonderful World Line』の制作の佳境だったんです。そんな中作っていて手応えがあったんで、「2ndアルバムに入れたいな」と思ったりもしましたね(笑)。

――(笑)。みなさんが『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』という作品に感じたことが、楽曲に反映された部分もあると思いますか?

yuxuki:そもそも、ゲーム版の『テイルズ・オブ・ゼスティリア』って、結構重い話だと思うんですよ。TVアニメのエンディングの映像も、原作をプレイ済の人が見るとちょっと「えっ」ってなるじゃないですか。だから、柔らかいだけではなく、アレンジにシリアスな面を入れることで少し含みをもたせつつも、大きく包み込むような感じにしたかったんです。優しいだけの曲だったら、合わないんじゃないかと思って。アニメではこれからどうなるか分からないですけど。

――アニメ版は、3話の時点ですでにゲームにはない展開になっていますね。

yuxuki:そうなんですよね。あのエンディングが果たしてどうなるのかということで。

佐藤:エンディング通りになってほしい(笑)。歌詞は今回も林(英樹)くんが担当してくれましたけど、彼も色々と考えて作業してくれていたみたいです。

towana:「この言葉を入れてください」という具体的な指示もありましたよね。「この言葉を唐突にならないように入れてください」って。

佐藤:「恋愛的な雰囲気は出さないでほしい」とかもね。でも、fhánaの歌詞は、作品に寄り添いつつもその時の僕らの表現や状況、考えていることも織り込んで、その掛け合わせで面白いものになると思っているので。今回も僕らが2枚のアルバムを出して、ツアーを終えた今の現状と繋がっているんです。音源を届けたり、ライブをしていくことは、僕らにとっての「旅」で、それには終わりがない。だから、「帰らぬ旅の途中」という歌詞はスレイたちのことでもあるし、同時にfhánaのことでもあるというか。それに、タイアップをやらせてもらうのも「自分の意志とは関係ない」使命なのではなくて、「自分たちの手で掴み取った」使命なので、それが〈使命はきっと定めじゃなくて 痛みとともに刻まれて その手に掴んだもの〉というところに表われていて。そして「自分たちの掴み取った世界線を肯定しよう」という旅はこれからも続くので、メンバーや林くん、スタッフ、もちろんfhánaのファンの方も含めて、「共に行こう」ということなんです。もちろん自由に他の解釈をしてもいいですが、そういう風にも取れる歌詞になっていますよね。

――それにしても、アニメ版のOAを観させてもらいましたが、すごい作品になっていましたね。カミナリや虫のシーンなど、本当にダイナミックな描写が多くて。

kevin:まるで映画みたいでしたよね(笑)。

佐藤:俯瞰を多用しているのもすごかったです。街の描写も、遺跡を探索してく描写も、まるでドローンで撮影しているような雰囲気のものが多くて、ゲームを操作している時の俯瞰視点を生かしている部分もあるのかな、という気がしました。

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