シングル『真夏のエイプリルフール/Results』リリースインタビュー
まなみのりさ×プロデューサーtetsuhikoが語りあう、グループの歩みとこれから
オーバードライブを踏まなくてもロックはできる
――新シングルの話に移りましょうか。Caramelのモモさん(ドラム)とユウミさん(ギター)、二人目のジャイナのFukuoさん(ベース)が、今回、演奏に参加されたわけですが、参加することになった経緯は。
みのり:東京に出てきてからガールズバンドさんと初めて対バンをやったのがCaramelちゃんで、それをきっかけにバンドさんとたくさん対バンをさせてもらうようになったんです。東京に出てきて今年で3年目なんですけど、この2年間に出会った仲間と一緒に、いつか音楽を作りたいという気持ちはずっとあって、今回特に一緒に作れたらいいなと思っていたら、CaramelちゃんやFukuoさんたちと一緒にやりましょうということになって。
りさ:Caramelちゃんとは対バンでコラボとかも何度もさせてもらっていて、「いつか一緒にできたらいいね」っていう話はずっとしていて、で、今回実現したんですけど……。
tetsuhiko: ジャイナのFukuoさんは、僕がスカウトしたんですよ。対バンしたときに音が良かったんですね。今回目指していたサウンドにすごく適していた。話をしてみたら「ぜひ。興味あります。まなみのりさ良かったです」ということだったので、急なお願いだったんですけど「大丈夫です!」と引き受けてくださって。
Caramelちゃんたちはある意味で姉妹みたいなバンドなんです。精神性が似てるっていうか、成功するためのプロセスをまみりと同じように踏んでいっている。自分がどうなりたいかを追い求めるプロセスが似ているように僕には見えるんですよね。僕らは今回のワンマンに『MMROCK』ってタイトルを付けましたが、ロックってどうしても歪んだギターとか、激しいビートのイメージがあると思うんです。でも、オーバードライブを踏まなくてもロックはできる。ダンスをするまなみのりさや、平均身長が150cmに満たないCaramelちゃんたちが発する音を、僕は十分ロックだと思っていて。仲の悪いバンドよりも、スタッフまで含めて仲がいいこのチームのほうがよっぽどロックだしバンドだなって。この融合は面白いことになるだろうと。
――今回の新曲2曲は、5thワンマンのまさに当日の朝に出来上がったというお話を囲み取材でうかがって、で、その5thで初演もされました。
「真夏のエイプリルフール」は、そのときの記憶では4つ打ちのエレクトロっぽいサウンドだったと思うんですが、CDではドラムとベースのボトムが生になって、エレクトロな感じは残しつつバンドの音になっているという、なかなか面白い音ですね。
tetsuhiko: そうですね。あんまりない感じですね。実は4つ打ちのキックの音にはすごくこだわったので残したいなって思っていたんですけど、生のドラムを入れた以上はと引っ込めたんです。このキックはまた次の機会に使おうと。キックの音を作るのに実はすっごい時間を掛けていて(笑)。マニアックな話になりますけど、あれ、普通のサンプルで作ったんじゃなくて、家にモジュラーシンセという、でっかい、こうケーブルを繋いで音を作るシンセがあるんですけど、それで作ったんですよ。どの周波数を出せばフロアでみんなが喜んでくれるか探って、そこを強調するようなキックを作ったんですけど、いいですねって反応したのが、まなみのりさの前のマネージャー1人だけで、これはダメだと(笑)。
――Aメロまでは4つ打ちですよね。で、Bメロから8ビートになりますね。Aメロのキックもじゃあ生に差し替わってるんですか?
tetsuhiko: 差し替わってます。
――はああ。歌っている側としては、だんだんサウンドが変わっていってどうでした? 歌いやすくなったとか、歌いにくくなったとか。
tetsuhiko: ぶっちゃけどうなの?
みのり:ぶっちゃけ変わらないです。
まなりさ:うん。
(一同爆笑)
みのり:いやあ(笑)。歌いやすさとかは変わらないけど、音は良くなったなって思います。
――作り手のこだわりはなかなか理解されないですね(笑)。前バージョンの音源はどこかに収録する予定はないんですか。
tetsuhiko: 「真夏のエイプリルフール 80's Extended mix」というCD-Rを今回作って、プレミアムチケットを買ってくださった方の特典にしたんですよ。こっちのほうが評判かもしれないですね。
みのり:けっこういい。心地良い感じで……。
――それはぜひ聴きたいですね!
tetsuhiko: まなみのりさのファンって、やっぱり音楽ファンが多いと思うんですよ。音楽やってた人という人も多いので、やり甲斐はすごくありますね。
りさ:もともとはアイドルファンじゃなかった人のほうが多かったりする。
まなみ:今は半分くらいは、もともとはアイドルファンじゃなかったという方じゃないかな。
りさ:まみりで初めてアイドル好きになりました!っていう方とか。
みのり:バンドさんだけじゃなくて色々なジャンルの方と対バンしているんですけど。そういった色々なジャンルのファンの方が「曲が良いね」って言ってくれることがすごく多いです。単純に曲が好きだからって来てくれて、実際にライブを見てハマってくれたり。
まなみ:あとアコースティックライブからっていう人が思った以上に多くて。
――へえ。まみりのアコースティックライブは、一見さんがふらっと来たりする感じなんですか。
まなみ:わからないんですよ(笑)。私もそこはハテナなんですけど。でも、アイドル現場とか行ったことないけどライブハウスに足を運んでみたという人がいたりするんですよね。
りさ:たぶんYouTubeとかで音楽を聴いて気に入ってくれたけど、ライブハウスとかにあまり行ったことがない人だと、アコースティックライブって行きやすいんだろうなと思うんです。ノリとか気にしなくていいから。
――ああ、なるほど。
tetsuhiko: メンバーにはまだ話してないんですけど、歌が得意なアイドルにはアコースティックライブみたいな試みをする人も増えてきたので、僕らはその先に行こうと思っていて。たとえばレコーディングスタジオにお客さんを呼んで、半分はブースの中、半分はコントロールルームで聴いてもらって、レコーディングを一発でやるとか……。
まなみ:怖い!
tetsuhiko: で、最後に録音したてのCDをもらえるっていう。今のまみりならできると思っているんですよ。
りさ:初めて聞きました(笑)。
まなみの:ねーっ!
tetsuhiko: レコーディングスタジオの新しい使い方としてもアリなんじゃないかなって。お客さんもレコーディングしている現場って見たいんじゃないかなと。僕だったら見たいなと。ハイレゾ音源もやってみようかなと考えてます。
――ハイレゾいいですね。
tetsuhiko: せっかく音に、キックひとつにこだわって(笑)。マイクとか録音機材や環境にもすごくこだわっているので。
――tetsuhikoさんのそのこだわりは、音楽職人的なものですか? それとも趣味的な性格のものですか?
tetsuhiko: 聞こえている帯域って世代によって違うので、そういうところも詰めていきたい、今の10代、20代の耳に届けるにはどうしたらいいのかなっていうのもあるんです。あえて隠しトラックみたいなのを入れたり。さっきの「Extended mix」では、裏ではどういうふうに音が入っているかというのが丸わかりなんですよ。CDでも、普通の2ミックスでは絶対に聞こえないような、でも2ミックスを抜いたらわかるようないたずらがしてあるんです。バックでわけわかんないことを言っているのが聞こえたりとか。気づいた人たちだけが騒いでくれるという。今回は、Caramelが自己紹介をやってるんですよ。「Caramelです~」って。
――そんなのが入ってるんですか?
りさ:入ってる。カラオケを聴いたらわかるんですけど、歌入りのバージョンだとまったくわからないです。
――やー、気づかなかったです。これは書いてもいいんですか?
tetsuhiko: 大丈夫です。むしろ誰か気づいて―っ!ていう(笑)。
深く残っている言葉に色付けしていくと、本質が見えてくる
――「Results」のほうもよりバンドサウンドになっていて、冒頭、ハムノイズやドラムの試打なんかが鳴っていて、「行きます」って掛け声で演奏に入りますよね。一発録りっぽい雰囲気ですけど、これは一発録りではないですよね?
tetsuhiko: その通りです。あれは後から僕がくっつけたんです。さもそこに全員がいるかのようにしたいなっていうギミックです。
――XTCにも似たギミックの曲がありましたね(『Nonsuch』収録の「Ballad Of Peter Pumpkinhead」)。仕上がりを聴いてどうでした?
みのり:びっくりしました。出来上がったときに初めて聴いて、あの掛け声から、モモちゃんのドラムがドゥルルルって鳴って、本当にライブ感がすごいあるな、良いなと思って。
まなみ:オケのレコーディングは、私たち、スタジオが狭くて参加できなかったんですよ。行きたかったんですけど。歌はまた別で録っていて。だから、届いたときに聴いた最初の音、さっきみのちゃんが言ったところで本当に鳥肌が立って。その場にはいられなかったけど、頭の中では、演奏しているモモちゃんやユウミちゃんがこう浮かんでくるというか。
りさ:3人別々に音源をもらって聴いたんですけど、後で集まって話したら「聴いた瞬間、涙が出た」ってみんなが言っていて。曲に対してFukuoさんもCaramelちゃんもめっちゃ愛情込めてやってくれていて、それがギュッと詰まっていました。
――メンバーの意見を採り入れてtetsuhikoさんが歌詞を書かれたということでしたが、実際にはどういうプロセスで仕上がっていったんでしょう?
tetsuhiko: 「歌詞を書くから、何かアイディアちょうだい」というような言い方はしなくて、普段電話で話したり、会って話したりするなかで、引っ掛かることがあったら、それを僕はずっと覚えているんですね。あんなこと言ってたなって深く残っている言葉に色付けしていくと、本質が見えてくるというか。
彼女たちは本当にみんな不器用ですし、まなみのりさの一番すごいところって、独自なんですよ。独自の進化をしているというか。東京に来てもう3年も経つのに、広島の人はみんなまだ、まみりのことを地元の人だと思っているっていうね。広島から出てきて、ずっと出稼ぎをしているみたいなイメージ。
――東京の色に染まっていない……。
tetsuhiko: そうですね。東京に馴染もうと思っているとは思いますよ。
みのり:今でも共演者の方に「今日は広島から来たんですよね?」ってよく聞かれる(笑)。「いや、もう東京に来て3年になるんです」っていう会話をよくします。
まなみ:たしかに。
みのり:原因のひとつに、方言が抜けないっていうのはけっこう大きいのかなって。普段しゃべるときも広島弁めっちゃ出るし、スタッフさんとかも広島出身の人が多いので、本当に自然に広島弁が抜けないんです。あえて使っているわけじゃないんですよ。
――いいですよ、方言。方言萌えってありますし(笑)。皆さんは今はバラバラに住んでるんですか?
まなみのりさ:はい。
――移動は電車なんですね。庶民的ですよね。
みのり:だからたまに「あれ? ファンの方?」みたいなことも。電車が一緒で(笑)。
りさ:そういうときはどこかに行ってくれます、気を遣って(笑)。
tetsuhiko: 良い人たちだ。本当に良くできた人たち。
――「真夏のエイプリルフール」の歌詞も「Results」と同じようなプロセスで作られたんですか?
tetsuhiko:「真夏~」は実はちょっと違っていて。最初は前回の「νポラリスAb」、「逆襲のポラリス」の流れで新曲を2曲ほど用意してあったんだけど、この路線を続けていくと、ちょっと方向性が狭まる感じになるんじゃないかと。
それと実はやり残したと思っていたことがひとつあって。それはデイリーで1位を獲ってみたいっていうことと、もう少し売上枚数を見てみたいっていうこと。それなら、もう少し間口が広くて、女子にウケるものをっていうことで急遽変えたんです。
だから曲ができたときよりも、MVが完成したときのほうが手応えが大きくて。KANKIという映像制作会社のカトウカズヤさんがMVを作ってくれたんですけど、その映像がすごく良くって。3人とも本当に楽しそうに映っていて、「これはものすごくいいかもしれない」と。サウンドと映像がすごくぴったりで、今回、僕的にはもう大満足で、これは勝負できるなと。
――じゃあ、「真夏~」に関しては歌詞はtetsuhikoさんのアイディアなんですね。
tetsuhiko: そうですね。本人たちが普段言っていることはけっこう拾ったつもりなんですけど、あらためて見ると「おなか空いた」くらいしかないかも。
まなみのりさ:そこ!?(笑)
tetsuhiko: いつも腹を空かせている子たちなんです。
――減りますよね、若いし、ライブをあれだけやってれば。今リリイベをやってらして、21時からのときとかありますよね。特典会が終わると23時くらいですか。家に着くのは24時とかでしょ?
みのり:真夜中です、食べるの。
りさ:でも昨日はライブと特典会の間に食べました(笑)。
まなみ:私、昨日はSHOWROOMが終わってから食べました。
――見てました。じゃあ、午前1時を過ぎちゃってましたね。
まなみ:本当に1時過ぎでしたね。
――やばいですね?
まなみ:やばいです(笑)。
みのり:この1カ月くらい、毎日日付が変わってからですね、晩ご飯食べるの。
りさ:でも寝ちゃうことも多いです。食べるの忘れて。起きてから、あ、お腹空いてるって気がつく。
――あんまり無理しないでくださいね、身体壊さないように。お家に帰ってからご飯を作る……?
まなみのりさ:作れないですね。
まなみ:基本的にはインスタントとかになりますね。
りさ:お休みの日だけ作ります。
――そのへん、社長としてはどうなんですか? 健康管理的に。
tetsuhiko: このあいだそういう話を聞いたので、先日のワンマンでは、ライブ前にスペシャルなものをちょっと。
みのり:うなぎ食べに行きました!
――おおー。
tetsuhiko: そこをちゃんと言ってくれる!?
(一同笑)
――見出しは「うなぎパワーでワンマン成功」で決まりですね(笑)。
サビに当てられている「そりゃそだね」とか「いい湯だね」は意外性があって耳に残りますね。
tetsuhiko: そのへんはもうこじつけです。とはいえ、語呂合わせはすごく大事で、どの順番でしゃべるとまみりっぽいかなとかもすごく考えますし、どの言葉を誰が歌うかっていうのも重要ですね。歌い分けで曲のイメージが変わってしまうんです。CDの通りにライブで再現するのは不可能な箇所もあって。たとえば、りっちゃんが自分で歌って、自分でハモっているところがあるんですけど、ライブでは再現できない。
――言葉のアイディア自体は最初からあったんですか。
tetsuhiko: メロを作ったときに。「いい湯だね」はキーワードとして絶対に必要だと思ってました。真夏の温泉だと。
――真夏に温泉に行くというシチュエーション?
tetsuhiko: これは妄想でしかないだろうっていう状況です。
――tetsuhikoさんの実体験じゃないわけですね?
tetsuhiko: 実体験のところは少ないですね。
――「左カーブを切れば/近づくその横顔にドキドキ」って、実体験からしか出ないんじゃないかと思って聴いてたんですけど。
tetsuhiko: これはもう、誰しもあることだろうと。
――え、ありますか?
りさ:tetsuhikoさんの実体験ですか!?(笑)
tetsuhiko: 左カーブで、うちの車がね、タイヤがダメで本当に傾くんですよ。それが書いてるときにあって。生活の中からしか出てこないので……。
――あんまりロマンチックな実体験ではないですね(笑)。
tetsuhiko: それをロマンチックにして外に出すんですね。
まなみ:女の子はすごく共感する歌詞なんじゃないかって、もらったときに思いました。