andropはこうして“素顔”を見せるようになったーー初のベスト盤を機に、7年の軌跡を振り返る

androp、7年の軌跡を振り返る

 andropが7月27日にベストアルバム『best[and/drop]』をリリースした。同作はバンド名の語源にもなっている「and」「drop」にちなんで、disc1=「and」盤、disc2=「drop」盤と名付けられた2枚組。収録曲は、インディーズ期から最新オリジナルアルバム『androp』までの全作品からセレクトされており、さらに、未発表曲「Hana」「Sayonara」、デジタルシングル曲「Kokoro」「Astra Nova」も聴くことができる充実の内容だ。

 andropは、デビュー当時から同時代の他のどのバンドとも類似しない存在であり、独自のやり方で進化を遂げてきた。顔を見せず、内澤崇仁(Vo・G)以外はメンバー名さえ出さずに匿名的な存在として活動を始めたandropは、いかにして人々の心に音楽を届け、共感を呼び、多くの支持を集めるようになったのか。

 ここでは、その理由をひもとくため、収録曲の中からバンドのターニングポイントとなった曲「MirrorDance」「Bright Siren」「Voice」「Missing」「Yeah! Yeah! Yeah!」、さらに未発表曲「Hana」と共に、andropのデビューから今に至るまでの7年間の軌跡を振り返ってみたいと思う。そこからは、音楽とリスナーに対する誠実さゆえ、変化し続けてきた4人の姿を垣間見ることができた。

「MirrorDance」(2011年)

 andropの登場は鮮烈だった。当時、バンドの構成や経歴などのプロフィールはほとんど明かされておらず、“謎多き新人”としてシーンに現れた。それでも、ライブ映像をYouTubeやMyspaceに投稿し、純粋に楽曲の力とクリエイティビティのみでその名を広げ、ついにメジャーデビューに至った。

 「MirrorDance」は2011年2月にリリースされたメジャーデビューアルバム『door』のオープニングナンバー。緻密に構築されたサウンドデザインや壮大なスケール感を持って鳴り響くバンドアンサンブルのクオリティの高さに驚かされる。と同時に、その洗練された音像の随所から、この曲の孤独な主人公が、他者や世界とつながりたいと強く願っていることが伝わってくる。<愛を見続ける為の嘘で 君と歌いたいおいでどうぞ>――デビュー作のオープニングナンバーという、まさにandropのスタート地点が刻まれた「MirrorDance」で、内澤は音楽を信じる理由を、歌を生み出し続ける理由を、ステージに立つ理由を、<君>に向かってしっかりと描いており、これが今に続くandropの音楽に通ずる、不変のテーマである。

androp「MirrorDance」

「Bright Siren」(2011年)

 andropはその音楽世界を、楽曲だけではなくコンセプチュアルなアートワークでも伝えてきた。様々な仕掛けが施されたジャケットワークやミュージックビデオ、先鋭的な映像・ライティングを取り入れたライブパフォーマンスは、その匿名性と相まって、デビュー時から大きな注目を集めていた。

 「Bright Siren」はandropの映像世界を決定付けた作品だ。クリエイティブ・ラボ『PARTY』の川村真司氏がミュージックビデオの監督を務め、CGは一切使用せず、250台のカメラを置いてストロボの光をプログラミングによって制御し、光のアニメーションを演出。カンヌを始めとする国内外の数々のアワードを受賞し、川村氏は「Bright Siren」以降もandropのミュージックビデオの大半を手掛けることになる。

 andropの楽曲からは、“光と闇”というイメージが喚起される。未来、夢、希望を象徴する“光”と、孤独、傷跡、喪失を象徴する“闇”は、いつも一体となって楽曲に深く根付いている。そしてそのふたつはそのままandropというバンドのシンボルとなり、初期の映像作品にも色濃く表れていた。

androp「Bright Siren」

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