太田省一『ジャニーズとテレビ史』第二十一回:ジャニーズと大型音楽特番の進化
V6、TOKIO、JUMP……大型音楽特番のジャニーズ企画にみる、コラボやシャッフルの「独自進化」
ところで今回のシャッフル、選曲に過去2回とは異なる特徴があった。これまでの選曲はすべて出演グループの持ち歌からだったのに対し、今年は8曲目に光GENJIの「太陽がいっぱい」、9曲目に近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」と、1980年代のジャニーズのヒット曲が歌われたことである。
近年、音楽番組(歌番組)全般で、過去のヒット曲、懐かしの名曲をメインに据えた構成は多い。音楽特番だけでなく、レギュラーの歌番組などでもその傾向は強い。
理由はいくつかあるだろうが、基本はヒット曲のありかたが変わってきたということがあるだろう。誰もが知るヒット曲が次々と出ることが難しくなった昨今、広い世代を対象にするテレビでは、どうしても過去の有名ヒット曲に頼るようになる。そして、それの繰り返しでは変化に乏しくなるので、本人以外の歌手が歌ったり、本人と別の歌手がコラボしたりというパターンも増える。
その点、ジャニーズのコラボやシャッフルは、かつてのヒット曲を歌うにしても「ジャニーズ」という統一感があることで、あまり「過去」という感じはしない(もちろん若い世代のジャニーズファンにとってはそもそも曲を知らないという場合もあるだろうが)。
『テレ東音楽祭(3)』でのシブがき隊復活コラボなども、薬丸はすでにジャニーズ事務所所属ではないにもかかわらず、そんな雰囲気はまったく感じさせなかった。「ジャニーズ」という独自の世界観を持つ、変わらない強固な地盤があるからなのだろう。特に今回のコラボに関しては、楽曲や振り付けが共有財産となっている強みが感じられた。
それは『THE MUSIC DAY 夏のはじまり。』でも同様である。「ギンギラギンにさりげなく」のラスト、シャッフルに参加したジャニーズ全員がステージ上に勢揃いした場面、関ジャニ∞の村上信五と丸山隆平が飛び抜けたハイテンションで踊っていたが、それは私には当時のマッチのやんちゃな感じをちょっと思い起こさせるところがあった。
こうしてみると、いまやコラボやシャッフルは、ジャニーズの提供するエンターテインメントの“ジャンル”のひとつとして確立しつつあるように思える。現役で活躍するグループも増え続け、以前からの歴史の蓄積もあるなかで、ジャニーズの世界をファンだけでなく一般の視聴者に向けて表現する方法としても、コラボやシャッフルは有効だろう。そういう目で見るならば、シブがき隊復活コラボも決して「異色」ではなく、コラボやシャッフルが多様化し、着実に「進化」していることの表れと言っていいのかもしれない。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』、『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。