藤原さくら『Soup』に感じる、福山雅治の“趣味性”の濃さ アメリカ南部へアプローチした作品に

参考:2016年6月13日~2016年6月19日のCDシングル週間ランキング(2016年6月27日付)(ORICON STYLE)

 2016年6月27日付の週間CDシングルランキングでは、BTOB、Block Bと、K-POPのアーティストが1位と2位を占めました。さらに、8位のAARONは台湾のアーティスト。グローバルなベスト10です。

 そんなベスト10を、今週も1位から10位まで全部聴いた結果、もっとも耳に残ったのは、4位の藤原さくらの『Soup』でした。バンジョーやフィドルの響くカントリーが、日本のチャートの上位にいることに驚いたのです。しかも、よく見ると2週連続の4位でした。

 藤原さくらの「Soup」が、彼女も出演していたフジテレビ系ドラマ『ラヴソング』の主題歌であったことや、そこで主演していた事務所の先輩・福山雅治が作詞作曲していることは後から知りました。カップリングの「好きよ 好きよ 好きよ」も福山雅治の作詞作曲であることや、やはりカップリングの「Summertime(佐野さくら with 神代広平 Ver.)」や「500マイル(佐野さくら with 神代広平 Ver.)」の「神代広平」とはドラマ中の福山雅治の役名であることも、やはり後から知った次第です。

 こう書いてみると、事務所の先輩が後輩を全面的にバックアップしているだけのシングルなのでは……と思われそうですが、CD1枚を聴いてみて印象に残ったのは、むしろソングライター、アレンジャーとしての福山雅治の趣味性の濃さでした。

 タイトル曲の「Soup」を聴いて驚くのは、先述したようなフィドルやバンジョーの響きに加えて、藤原さくらの声の低音を使った歌、そして演奏全体から感じられるアーシーな感覚です。「ちょっとカントリーに手を出してみました」という雰囲気ではなく、ちゃんとアメリカ南部の音楽を通過してきたミュージシャンによる演奏であることを感じさせるのです。

 そこでクレジットに目を通すと、編曲を福山雅治とともに手掛けているのは井上鑑。彼の長いキャリアを一言でまとめるのは難しいですが、日本のポップス史に太字で残るのは大瀧詠一との仕事でしょう。そして、演奏にはピアノで井上鑑が参加しているほか、ベースに高水健司、ドラムに山木秀夫と、ベテランが顔を揃えています。そして、井上鑑、高水健司、山木秀夫は福山雅治バンドのメンバーでもあります。このメンツを見て、20歳の藤原さくらのヴォーカルに、どこか背伸びをしているかのような印象を受けた理由がわかった気がしました。

 カップリングの「好きよ 好きよ 好きよ」も、編曲は福山雅治と井上鑑。こちらでもフィドルとバンジョーが奏でられているほか、井上鑑、高水健司、山木秀夫も参加。贅沢なカントリー・バラードです。

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