大所帯ポップバンド Special Favorite Musicが目指す“プリミティヴなポップス”「常に空き地を探して、自分たちのゲームをしていたい」

大所帯バンドSFMが目指すポップス

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フルカワユウタ(左)とオクダナオヒロ(右)

「生の管弦を使った音楽ができるという認識を持ってから、音楽の聴き方や引っかかる要素も変わった」(オクダ)

――最初の作品である『Explorers』は、クメさんをメインボーカルとした、あくまでNOKIES!の延長線上にある音楽でしたよね。ルーツも日本の音楽というよりは、様々なジャンルについての造形が深いメンバーばかりだと感じました。そんなバンドが2作目のEP『ROMANTICS』でムードを一変し、「日本のポップス」に向かい合った理由を教えてください。

クメ:『Explorers』の録音中にあれが良いこれが良いとみんなで色んな音楽を聴いたり、動画を見たことがきっかけですね。当時からキングコングなどの中古レコ屋さんで300~500円箱を漁りまくるのにハマっていて、それがきっかけで音楽の幅がどんどん広がっていきました。そこには80~90年代のフュージョン、ニュー・ジャック・スウィングやAOR、アメリカンポップスやソウル、そしてそこから影響を受けたであろう日本のポップスの12inchも沢山ありました。ラ・ムーや中山美穂さんの『JEWELNA』、KANさんの『野球選手が夢だった。』が名盤だよねとなって、彼が楽曲提供している今井美樹さんの「雨にKISSの花束を」が改めて良いと思ったし、当時のファッションやデザインにも強い共感や共振を見いだしたこともあって。

オクダ:あとはメンバーの編成も大きいですね。生の管弦を使った音楽ができるという認識を持ってから、音楽の聴き方や引っかかる要素も変わって。

――バンドとしてバンド的なものを聴くのではなく、何でも実演できるようになったから、色んな音楽にアンテナを張るようになったと。

オクダ:そうですね。あと、僕とクメ君は宅録好きでもあって、ミックスについて話したりすることも多くて。「この曲のこういう感じを入れよう」みたいな話をして曲を作り、それを生楽器の編成で膨らませることで、よりワイドなものができるようになったという感じです。『ROMANTICS』は作りながらその路線を見いだせたのが大きかったですね。

――そこから今回リリースした『World’s Magic』は、『ROMANTICS』のムードを引き継いだ作品だと思うのですが。

オクダ:『ROMANTICS』は箱庭感というか、短編集のような作品で。今回はもっと大きなスケールという感じです。

クメ:それぞれの曲に細かい時代設定があったのが『ROMANTICS』で、その延長線上にありつつ、設定を外してもっとプリミティブに広く訴えかけようとしたのが『World’s Magic』ですね。細かいことはまず抜きにいい曲を作る。それだけに集中しました。

――バンドとしてプレイヤーが固定されるということは、それだけ個々人のスキルや特徴が活かされていくわけですよね。作曲やアレンジを手掛けるクメさんとオクダさんは、プロデューサー目線でそれぞれの個性をどう活かそうと思ったのでしょうか。

クメ:『ROMANTICS』は、1曲で120トラックを使ったりしていたのですが、今回はバンドとしてライブで生きてくる音にしたくて、なるべく1人1トラックに近い、バンドの姿や熱が見えてくるアレンジを作ろうと心がけました。

オクダ:トラックメイカー的な音作りをしている曲もありましたからね。ギターを重ねまくったり、ドラムのキックとスネアとハイハットを別々に一つずつ鳴らしてレコーディングしたり。

クメ:あと、ミックスはこれまで自分でやっていたのですが、今回はカジヒデキさんやTurntable Filmsなどを手掛けるRufusの上田修平さんにお願いしたので、そのぶん曲としての強度に力を注ぐことが出来たし、修平さんのミックスのおかげでより音楽的になったと自負しています。

フルカワ:そうそう、より曲に近づけるようになって、バンドが一体化してきた感じです。アンサンブルを作るにしても、個々の色が活かされているというか。

ラビンユー:私も、『ROMANTICS』のときは、オクダ君やクメ君にとっての理想の歌い回しを追求していたのですが、今回は割と自由に歌うようになったかなと。

オクダ:それぞれの自主性に任せたいという気持ちが強くなりましたね。あと、個々人がどんな趣向を持ち、どんな楽器を使えて、どんなプレイングをするのが分かってきたことも大きいです。

クメ:ユウタ君がスケールアウトするサックスを吹いてたらカッコいいだろう、とかね。

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フルカワユウタ

――まだまだ振り幅は広がりそうですね。

オクダ:現時点でバンド内のパートも移り変わってますからね。ドラムのできるプレーヤーが3人いるし、ライブも毎回「今日は何人?」となるくらい変動するので(笑)。

クメ:ライブハウスによってはステージにギリギリ乗れるかどうかみたいな場所もありますが、それも含めて視覚的にも楽しんでもらえればと(笑)。

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