かりゆし58が、日比谷野音で見せたデビュー10年の軌跡「もう1回ゼロに戻るチャンス」

 かりゆし58の全国ツアー『ハイサイロード 2006−2016 〜オワリ×はじまり〜』の最終公演が2016年5月8日、日比谷野外大音楽堂で開催された。デビュー10周年を記念した今回のツアーのファイナル公演で彼らは、自らの10年間の軌跡ーー人生のラストチャンスを賭けたデビュー、故郷・沖縄から上京してきたときの葛藤、そして、真摯に生きる人々を根本から励ますような歌ーーを力強く表現してみせた。

 開演時間の18時になると、まずはネーネーズが登場し、代表曲「黄金の花」と「NO WOMAN,NO CRY」(ボブ・マーリー)のカバーを披露。現在“5代目”のネーネーズは沖縄民謡の伝統を反映した歌唱により、満員のオーディエンスの心をしっかりと捉える。ちなみに開演前のSEもネーネーズの音源。これはかりゆし58のメンバーの強い希望によるものだ。

前川真悟

 そして、ついにかりゆし58のライブがスタート。「“ハイサイロード 2006−2016”。このバンドの10年間の集大成、ツアーファイナル会場、日比谷野外大音楽堂にようこそ! あなたと今日ここで、この1本のライブをするために10年間準備してきましたよ! 始めましょうか!」(前川真悟/V、Ba、G)という言葉とともに「心に太陽」「手と手」「アイアムを」などのライブアンセムを次々と披露する。ロックンロール、レゲエ、カントリーなどをごちゃ混ぜにしたバンドサウンド、開放感に満ちたメロディ、何気ない日々を肯定するような歌詞が響き、会場全体に心地よい一体感が生まれる。宮平直樹(G、Ba)に「緊張してんのか? まさか1曲目から泣く?」とイジったり、新屋行裕(G)と「もっとすごい行裕が見たい!」と煽ってギターソロを弾かせたりしながらライブを盛り上げる前川も、この記念すべきライブを全身で楽しんでいるようだ。

宮平直樹
新屋行裕

 この後、かりゆし58が持っている切実なメッセージ性を体感できる楽曲が続く。“人生は一度きりだからこそ輝く”というメッセージがまっすぐ伝わる「嗚呼、人生が二度あれば」。〈ぼくが生きる今日は もっと生きたかった誰かの明日かも知れないから〉という歌詞が高い空に向かって放たれた「さよなら」。親友の父親との交流を描いた歌詞、〈もう一歩も引けない時には 何もかも全部を自分の真っ直ぐに懸けろ〉というサビのフレーズが突き刺さる「まっとーばー」。市井の人々の人生、日々を必死で生きる姿の尊さを堂々と歌い上げる。かりゆし58が幅広い層のリスナーに支持されているのは、この真摯な姿勢をしっかりと持ち続けているからだと思う。

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