ボサノヴァとMPBをつなぐブラジル音楽界の巨匠 エドゥ・ロボが語る、インスピレーションの源泉

ブラジル音楽界の巨匠・エドゥ・ロボ取材

 80年にエドゥは歴史的名盤『テンポ・プレゼンチ』を発表すると、本格的に舞台や映画音楽の作曲家としての活動に入り、83年には盟友シコ・ブアルキと書き下ろした舞台戯曲『オ・グランヂ・シルコ・ミスチコ/神秘的大サーカス』を大ヒットさせる。

 しかし、シンガーとしてのアルバムからは、アントニオ・カルロス・ジョビンとの共演作『エドゥ&トム、トム&エドゥ』(1981)から『コフピアォン/エドゥの大罪』(1993)まで、実に12年もの間、遠ざかってしまう。ちなみに、久しぶりにアルバムを発表した理由が、「リリース元のレーベルが制作上の完全な自由を保証したから」というのも、なんともエドゥらしいエピソードだ。

 日本ではあまり知られていないが、2004年にエドゥは脳動脈瘤の手術を受けている。にもかかわらず、その後は驚異的な回復をみせ、2013年にはオランダの管弦楽団メトロポール・オルケストとの共演作『エドゥ・ロボ&メトロポール・オルケスト』、翌年には生誕70周年記念のライブ盤『70 アノス』(2014)と続けてアルバムを発表し、完全復活を遂げた。
 
 そして72歳となった今、再び日本の地を踏み、奇跡の来日公演を実現させた。

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 エドゥ・ロボの東京公演は、まるで夢のようであった。ステージでのエドゥは圧巻で、その姿からは、今も変わることのない鋭く尖ったオーラが溢れ出ていた。

 ライブが終わった後、私は最後にひと言「あなたの人生の源泉は何ですか」と、エドゥに質問を投げかけてみた。すると、何の迷いもなくエドゥからこんな言葉が返ってきた。

「Estou vivo, é maior inspiração para viver.
 俺は生きている、それが人生で一番のインスピレーションだ」

今だからこそ発せられたその言葉に、確かな年輪を感じた瞬間であった。

(取材・文=落合真理/写真=Yuma Totsuka)

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