ペトロールズ、Suchmos、cero……“今っぽさ”と“懐かしさ”を併せ持つ都市型バンドたち

SANABAGUN.

SANABAGUN - 人間

 渋谷ストリート発平成生まれ8人組ヒップホップグループ。渋谷駅周辺で路上ライブを行ってきたアウトサイダー軍団が、メジャー音楽シーンのインサイダーになる瞬間を目の当たりにした。

 力強いヒップホップビートと煽るようなマイクパフォーマンスからは、8人のバイブスがぴったりとマッチしていることが理解できる。SuchmosのベーシストHSUが小杉隼太として所属しており、彼の太いベースラインが生み出すグルーヴの上を金管がまるで笑うように高らかに鳴り、それら全てを泥臭さと上品さをミックスしたキーボードがみっちりと埋めてアシストしていく。ここまで紹介した他のバンドは、ブラックミュージックの要素を落とし込む創作活動をしているのに対して、SANABAGUN.は各パートが徹底的にブラックミュージックを再現しており、コアなブラックミュージックファンやジャズのインストファンも面白く聴ける作品が多いのではないだろうか。

 ここまで紹介したバンドたちは、海外の様々なジャンルの音楽・カルチャーを吸収し、自身のバンドに落とし込むことで独自のスタイルを切り開き、リスナーを集めている。ブラックミュージックやローファイ、サイケなどの伝統的な音楽ルーツをミックスすることは、それらの音楽に親しんできたリスナーを獲得することにも繋がっているのかもしれない。また、流行を捉えたファッション性やパフォーマンスは、多くの若者を強く惹きつけるひとつの要因ともなっている。

 様々な音楽性が混沌としている都市の中で、彼らの音楽が強い色を持って浮き上がるのは、流行に敏感な若者らしい柔軟な姿勢と、深いこだわりを持ち物事を探求していくオトナ的な姿勢のかけ合わせにより幅広いリスナーの心を掴んでいることが大きく関係しているのではないだろうか。彼らの音楽にある“今っぽさ”と“懐かしさ”は、これからより多くの人間を巻き込み、さらなる一大ブームを巻き起こす予感がする。

■クリオネ
1995年生まれ。芸術学を専攻し大学に通いながらフリーライターとして活動。バンドトカゲロウでシンセキーボードコーラスとしても活動中。
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