SMAPは平成日本の象徴だった 太田省一が「解散危機報道」への反響を読む
日刊スポーツの1月13日付朝刊記事がきっかけとなり、日本中の話題をさらっている「SMAP解散危機」。週刊新潮の1月14日発売号が詳細を報じたほか、テレビでも連日取り上げられている。
本件についてはジャニーズ事務所が13日、「SMAPの一部メンバーの独立問題」として「この件について協議・交渉がなされている事実は存しますが、そのような状況下であるため、詳細についてのお問い合わせについてはお答えできません」と発表。現時点では、メンバー自身が具体的に何も語っておらず、事態がどのように進んでいるのかは不明だが、多くのファンや芸能人などが「解散を回避すべき」という声を上げるなど、報道への反応は予想以上に大きい。『中居正広という生き方』や『紅白歌合戦と日本人』の著者で、リアルサウンドで『ジャニーズとテレビ史』を連載に持つ社会学者の太田省一氏は、一連の反響をこう分析する。
「芸能界のスキャンダルに関しては、野次馬のように面白がる人が多数を占めるのは普通です。しかし、今回のSMAPに関しては、ファンの方はもちろんのこと、ファンでない方までがグループの存続を心配している様子なのがとても印象的です。テレビの街頭インタビューなどを見ると、新橋のサラリーマンから巣鴨の高齢者まで、様々な世代や性別の方からSMAPの楽曲や出演番組についての思い出が語られています。こうしたことからも、彼らが今の日本人にとってどれだけ大きい存在かを改めて実感させられます。『世界に一つだけの花』の購買運動がファン以外も巻き込んで大きな動きになっているところにも、『私たちがSMAPを助けなきゃ』という多くの人の意志を感じます」
それにしても、SMAPがここまで人々の心を虜にした理由とは何か。太田氏は、SMAPこそが“平成の日本を象徴する存在”だと語る。
「第二次世界大戦での敗戦から復興を目指し、『勤勉に働いて頑張れば豊かになれる』という共通の希望を抱いていたのが戦後の日本でした。実際、高度経済成長が達成され、日本の社会は一定の豊かさを実現しました。しかし、昭和が終わり平成に入った1990年代、冷戦体制の終焉やバブルの崩壊以後の不況などによって日本人が大きな指針を失い、さまざまな不安を抱えるようになったと言えると思います。同時にその頃テレビでは各局の長寿歌番組が続々と終了し、歌番組からヒット曲を生み出す時代も終わりました。その結果1991年にデビューしたSMAPは、キャリア初期で思ったCD売上を記録できず、アイドルとしては未踏の地だったバラエティの世界に新たな活躍の場を求めて成功しました。その後のSMAPの歩みも、森且行の脱退や稲垣吾郎・草なぎ剛のスキャンダルなど、決して順風満帆とは言えませんでした。しかし逆にそうであるからこそ、平成になって不安を抱えながら生きる私たちは、彼らの25年間に“新たな時代を切り開いていく象徴”を見てきたのではないでしょうか。今回の解散に反対する声も、彼らを今の時代を共に歩むパートナーとしてまだまだ見届けたいという思いなのかもしれません」