Perfume、AKB48、E-girlsの現在地から考える、女性グループにとっての「成熟」

女性グループにとっての「成熟」とは

 

 ただし、アイドルと「成熟」について考えるとき、両者の対照は示唆的である。この連載前回で、グループアイドル全盛がもたらした「卒業」のルーティン化によって、「アイドルである/ない」の線引きが明確になると同時に、その線引きが「未成熟/成熟」に結びつけられやすくなる点について述べた。アイドルが未成熟なイメージに留め置かれてしまうことは、「アイドルである/ない」が「恋愛禁止/解禁」を示すものとされるような現象からもうかがえるが、そもそもこの線引きは「卒業」を前提としたグループに有効なものだった。Perfumeの場合、明確にアイドルというジャンルから出発したグループであるが、メンバーが固定されたまま強大な認知を獲得していく過程で、「アイドルである/ない」の境界をごく自然に曖昧にしていった。それは「アイドル」をはっきりと拒否することなく、アイドルというジャンルが抱える習慣やある種の旧弊からも自由になるような道筋だった。だからこそ、アイドルがキャリアを重ねて成熟していく姿の理想形としてPerfumeはしばしば語られる。

 しかし、Perfumeの場合もちろん理想形のひとつではあれ、アイドルを志す者にとって参照するためのモデルケースにはなりにくいのも事実だろう。その受容のされ方や来歴には、Perfume固有の幸運が大きく作用していた。後からくる者がその道筋をなぞることは不可能に近い。その点、後続の人々にとってのモデルケースとして見るならば、グループをあくまで一時的な所属機関と位置づけてその後のキャリアをうかがう、AKB48の形の方が似つかわしい。ただし、繰り返すように現状このモデルには、アイドルであり続けながら「成熟」していくイメージが構築できていない。アイドルというジャンルがキャリアを重ねる難しさはそこにある。

 ただ、少し視野を広げてみれば、「卒業」という儀式を取り込みつつ、ライフコースに応じて自然に「成熟」を実現する女性グループというモデルは描けないわけではない。LDHに所属するE-girlsは、今年10月のErieのE-girlsでのパフォーマー卒業や、下部組織のRabbits、Bunniesといった人事のあり方にみるように、ある程度のメンバー循環を視野に入れているグループである。しかし、ある立場を「卒業」後のグループ内での立場を含めて、成員のポジショニングに幅をもたせるそのあり方は、在籍メンバーが単純な「未成熟/成熟」といった視点にからめとられないバランスを実現している。それは、LDH全体でいえばさらに年齢の高いEXILEのHIROが先立って「パフォーマー引退」という道筋を拓いたことで、パフォーマンスグループの人事に新しい見え方を示したことによる部分もあるだろうし、またE-girlsが恋愛など性にまつわる規律を明示することに価値を置いていない点も大きいだろう。E-girlsが「アイドル」という言葉を採用していないことはよく知られるが、これは単に呼称だけの問題ではない。若くは10代からのメンバーが所属する組織の中で、それぞれが自然にライフコースを歩めるような、メンバー循環型のグループをいかに作っていけるか、LDHの歩みはそうした試行でもある。その推移を見守ることは、同様にメンバー循環型のアイドルグループにとっても重要なヒントになるはずだ。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

■公開情報
『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』
10月31日(土)よりTOHOシネマズ 新宿ほか全国ロードショー
出演/Perfume(a-chan、KASHIYUKA、NOCCHi)
監督/佐渡岳利
音楽/中田ヤスタカ(CAPSULE)
主題歌/Perfume「STAR TRAIN」(ユニバーサルミュージック)
配給・宣伝/日活
(C)2015“WE ARE Perfume”Film Partners.
公式HP:www.we-are-perfume.com

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