ROTH BART BARONが語る“インディペンデント精神”の矜持と展望「今の状況はエキサイティング」

ROTH BART BARON、新作と活動方針を語る

「自分のスタイルを見つけることができる人たちを“インディペンデント”と呼べる」

――また、歌詞についてですが、実験的なサウンドや海外シーンとリンクした音になりながらも、あくまで詞の視点は2015年現在の東京に住む人から語られているという印象です。ここを“外向き”に変えようとは思わなかったのでしょうか?

三船:詞についてはいつもサウンドの中に見える景色やインスピレーションからくるものが多いです。例えば「bIg HOPe」に関しては、東京に住んでいる僕らが少しクルマを走らせてたどり着く郊外のファミレスやコンビニの風景をテーマに書きました。そこにいるようなタクシーの運転手さんやカップル、中高生たちが話している内容を聞くのが好きなのですが、窓がいきなり水族館に変わったりするような、日常から非日常へ場面がいきなり転換したら面白いなというインスピレーションから、この曲の詞は生まれたんです。それが文法的におかしくても曲になれば補完できることもありますし、音楽になることが許されているので、その点で普通の文章とは違いますね。言葉としての文脈がちょっと違っていても、メロディーにのせて歌ったときに自分が“腑に落ちる”と感じれば、そのまま採用することもあります。

――そこは特徴的であり面白いところですね。ライブで盛り上がって観客に語りかけるようなJポップ的なものでなく、寓話的でもあり物語的でもある曲の作り方をしていると感じました。

三船:自分としては、極めて真っ当な音楽を作っているという気持ちなのですが、それでも昔から周りの人間には、「変わっている」とよく言われました。それに、ライブハウスで一緒に競演するバンドたちに対して、肩身の狭さや居心地の悪さのようなものを感じることが多かったといえます。それに対して、同じような状況で「もういいやっ」と投げ出す人も少なくないでしょうが、僕らは不思議とそうならなかったですね。たぶん、誰かがこうしたから自分もそうしますという風に、基点を他人に置いたりしないし、「その人なりの考えでそうしているのだろう」と気にしないからなのだと思います。

――1stアルバムのリリース後、ライブで共演するバンドたちが途端に増えてきたと思うのですが、その時点ではもう“肩身の狭さ”はなくなりましたか?

三船:アメリカツアーを行ったとき、現地のインディーバンドのライブやレコードレーベルを見学したのですが、彼らは片田舎の町で自分の倉庫を持ち、少ないスタッフで慌ただしくレコード制作の活動をしていました。その中で彼らは、自分たちがやりたい音楽を、自分たちのやりたいフォーマットで世界にどうやって発信しようかということを真剣に考えていて、その姿に大きく影響を受けました。この体験を通じて、“インディペンデントなバンド=メジャーではないバンド”ではなく、自分のスタイルを見つけることができる人たちを“インディペンデント”と呼べるのだと学びましたね。そこが僕らの目指すポジションだと思いますし、色んな国のバンドから「来日して共演したい」というオファーを貰ったりしている現状もあるので、今後は自分たちのスタジオを作るなど、“インディペンデント”にやっていくための環境を整えていきたいと考えています。そのためには、いつまでも肩身が狭いというようなことも言っていられないですから。

――今後のことについても訊きたいのですが、モントリオールでセッションした音楽家たちとの交流を経て、音楽的なフィードバックを受けたと思うのですが、それらはRBBの音楽に対して、どのように作用していくと考えますか。

三船:とりあえずエクスペリメンタルにならないようにしなければ、と思いました(笑)。音楽的なフィードバックとは別になるのですが、やはり海外でも音楽にほとんどお金を使われないということは話題によく挙がっていて、Apple Musicなどのストリーミング・サービスが登場したことに対する不安も話してくれました。でも、それまで数千円も出してCDを購入するという音楽のフォーマットが、少しずつ変わってきているというだけで、バンドとしては聴いてくれているファンの人たちを、どのようにして楽しませるかを考えなければいけなくなったのだと思っていて。音楽に関わる立場として、それはレコードカンパニーも、自分自身もあーでもないこーでもないと毎日考えなければいけない。ただ、僕は楽観主義者なので、それらの状況をエキサイティングだと受け止めているし、今のところはこの作品がどのように広がって、どう反応されるのか楽しみで仕方ありません。便宜上、いまだに「洋楽」「邦楽」という区別をされることは多いですが、それらも自然とこれからはフェードアウトしていく気がしますし、そうなったときに初めて「日本のロックミュージックとはなんだったんだろう」とか「日本語で歌うことってなんだったんだろう」と議論が交わされ、価値が転倒する瞬間が来るのかも、なんて考えています。

(取材・文=編集部)

■リリース情報
『ATOM』
日程:10月21日(水)
定価:¥2,200+税
<ゲストミュージシャン>
竹内悠馬 (Trumpet,Flute)
須賀裕之 (Trombone)
本間将人 (Alto Saxophone)
西池達也 (Piano, Keyboards)
Jérémi Roy (Bass)
Jessica Moss (Violin)
Ellwood Epps (Trumpet)
Matthieu Van Vliet (Trombone)
Elizabeth Lima (Clarinet)
David Gossage (Flute)
Jammy Thompson (Percussion)
Adam Kinner (Tenor Saxophone)
ENGINEERS BY Radwan Ghazi Moumneh, 佐藤宏明, 三船雅也
MIXED BY Radwan Ghazi Moumneh
MASTERED BY Harris Newman

■ライブ情報
ROTH BART BARON TOUR 2015-2016『ATOM』
2015年11月 8日(日) 代官山 UNIT 17:00 / 17:30
2015年11月19日(木) 高松 TOONICE 18:00 / 18:30
2015年11月20日(金) 木屋町 UrBANGUILD 19:00 / 19:30
2015年11月23日(月・祝) 広島 CLUB QUATTRO 17:00 / 18:00
2015年11月28日(土) 仙台 HELLO INDIE2015 14:30 / 15:00
2015年12月11日(金) 松本 Give me little more. 18:30 / 19:00
2015年12月12日(土) 富山フォルツァ総曲輪 18:30 / 19:00
2015年12月13日(日) 金沢 ART GUMMI 17:30 / 18:00
2015年12月23日(水・祝) 名古屋 RAD HALL 17:30 / 18:00
2015年12月24日(木) 鴨江アートセンター 18:30 / 19:00
2016年 1月 8日(金) 鹿児島SR hall 19:00 / 19:30
2016年 1月 9日(土) 宮崎 LIVE HOUSE ぱーく. 18:30 / 19:00
2016年 1月10日(日) 福岡 the Voodoo Lounge 17:30 / 18:00
2016年 1月11日(月・祝) 徳島 CROWBAR 17:30 / 18:00
2016年 1月17日(日) 大阪 CONPASS 17:30 / 18:00
2016年 1月23日(土) 札幌 PROVO 18:30 / 19:00
2016年 2月 5日(金) 仙台 retoro Back Page. 18:30 / 19:00
2016年 2月11日(木・祝) 熊谷 HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1 18:30 / 19:00

■関連リンク
ROTH BART BARON オフィシャルサイト

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