『30周年記念盤 スーパーマリオブラザーズ ミュージック』特別対談Part.2

任天堂・近藤浩治氏×サカナクション・岩寺基晴が語る、ゲーム音楽の歴史と未来

「ポール・マッカートニーが『タタッタッタタッタッ』と歌ってくれて」(近藤)

 

──岩寺さんはこのCDを聴いて、何か感じたことはありましたか?

岩寺:まるでタイムマシンに乗ってるようで面白かったんですけど、特にハードがスーパーファミコンから64(ニンテンドウ 64の略称)に移ったときの変化がすごくて。そこを顕著に感じて。スーファミも64も、カセットの大きさ的にはソフトの基盤はそんなに変わらないじゃないですか。これ、一体何が大きく変わったんですか?

近藤:64で3Dになって、今までの曲の雰囲気では全然合わなくなったんです。あとは音色も前よりもさらに生楽器に近い音色が使えるということで、それを活かした音楽を作ろうというのはありましたね。効果音もそうで、マリオが3Dになるとジャンプ音が「ビョーン」では合わなくなったんですよね。そこで「Ho!」「Hey!」という掛け声に変わって。

岩寺:マリオの声が入ったのは64からですが、あれは実際の人間の声なんですか?

近藤:はい。アメリカ人のチャールズさんっていう方がずっとやってくれてるんです。マリオもルイージもワリオも全部チャールズさんが声を変えて演じていて。

岩寺:それは気付かなかったです(笑)。あと、最近ゲームでもサラウンドが主流になってきてるじゃないですか。どこかで記事を拝見したんですけど、ドルビーさんとやられてるんですよね。

近藤:はい、ドルビーサラウンドを使ったりもしてます。

岩寺:64、ゲームキューブ(ニンテンドーゲームキューブの略称)でプロロジックを取り入れてますが、あれは2ミックスの音源に対して擬似的に5.1に回してるんですよね。

近藤:そうですね。

岩寺:僕らも一度、ライブでサラウンドを使ったことがありまして。そのときは幕張メッセでスピーカー300本ぐらいで囲んで。

近藤:300本!

岩寺:はい。でもやっぱり難しくて、そのときはセンタースピーカー無しの6.1チャンネルのサラウンドだったんですけど、あんまりサラウンド効果を顕著に出し過ぎると音楽を聴く際に邪魔になっちゃって、集中力が薄れるんですよね。

 

近藤:ゲームの場合は映画よりもよりサラウンド効果が出せると思っていて。『スーパーマリオサンシャイン』で“影マリオ”を追いかけるシーンがあるんですけど、これは影マリオが音楽を出してるっていう設定なんです。だから影マリオが画面から外れて後ろに行ったら、後ろのスピーカーから影マリオの音楽が聞こえるっていう。

──そんなゲーム音楽ですが、スーパーマリオの誕生以降、重要度がかなり大きくなっていると思うんですが?

岩寺:そうですね。やっぱりイメージとしてはスーパーマリオ以前、以降というのがある気がしていて。やっぱりゲームの進化と音楽の進化って密接に関係していて、すごくいい相互関係にあるのかなって思いました。スーパーマリオが出たのが1985年で、マリオ3って何年でしたっけ?

近藤:1988年かな。

岩寺:最初のスーパーマリオから3年しか経ってないんですね! 3年かあ。この頃はちょうど小学1、2年生ぐらいでした。多感な時期というか、ゲームが次々に新しい未来に進んでいくのをリアルタイムで感じられて、すごくワクワクしながらマリオの顔をずっと見ていた気がします。

──どの世代の子供もそうだと思うんですけど、スーパーマリオの名前を言った瞬間にそのテーマ曲を口ずさめますよね。それって本当にすごい影響だと思うんです。

近藤:僕が一番ビックリしたのは、ポール・マッカートニーが日本に来たときに宮本(茂)がライブに招待されて、僕も連れていってくれたんです。で、宮本がポールに「スーパーマリオの音楽を作曲した近藤です」って僕を紹介してくれたときに、ポールが「タタッタッタタッタッ」って歌ってくれたんですよ(笑)。こんな人まで知ってくれてるんだって。それがやっぱり一番うれしかったし、こんなにも世界に広まってるんだって実感できた瞬間ですね。

岩寺:すげえ……。すごい話ですね。

近藤:こっちはずっと昔からポール・マッカートニーを聴いてたのに、向こうも僕の作った曲を知ってるっていうのがね。

──このCDを聴くことでゲーム音楽の30年史を振り返ることもできるわけですが、この先ゲーム音楽はどういう方向に進んでいくのかなと思いますか?

岩寺:最近はスマホでゲームをする人が増えていて、電車の中で音を消してゲームしているじゃないですか。そうなると、この先どういう音楽がゲームに影響を与えるのかっていうのが見えづらいというか。もっと言うと、家でゲームをする人が減ってる気がします。

近藤:そうかもしれませんね。スマホゲームでもヘッドフォンで音楽や効果音を聴いていただけるように、またゲーム専用機でも、もっと楽しめる音楽や効果音を作っていきたいと思います。

──では最後に、岩寺さんからスーパーマリオ30周年を迎えてのお祝いの言葉と、このCDを購入しようかと考えてる人に向けてメッセージをお願いします。

岩寺:はい。スーパーマリオシリーズ30周年、おめでとうございます。僕は本当にこの人生をマリオとともに過ごしてきたと言っても過言ではない世代なので。このCDを聴くと本当に当時のことをたくさん思い出したり、このゲームをやっていたからこそ今の自分があるような気分になったりします。音楽だけに集中して聴くと、テクノロジーの進化っていうのがすごく目覚ましい30年だったと思うので、シンセサイザーの観点から言っても録音技術から言っても、いろんな進化というものが年代によって感じられるので、流れで聴くと聴き終わったときに自分がこういう時代にいるんだっていうことがすごくよくわかって、素晴らしい作品だと思います。近藤さんのメロディもたっぷり堪能できるので、ぜひお聴きいただければと思います。

 

(文=西廣智一/写真=下屋敷和文)

■リリース情報
『30周年記念盤 スーパーマリオブラザーズ ミュージック/任天堂』
発売:9月13日(日)
価格:¥3,000+税

商品ページ

【​Disc 1​】​

スーパーマリオブラザーズ(FC)
スーパーマリオブラザーズ2(FCD)
1. 地上BGM
2. 地下BGM
3. 水中BGM
4. 城BGM

スーパーマリオブラザーズ3(FC)
5. 地上BGM
6. アスレチックBGM
7. 地下BGM
8. 水中BGM
9. 砦BGM
10. 飛行船BGM

スーパーマリオランド(GB)
11. 地上BGM
12. ミューダ王国BGM
13. チャイ王国BGM
14. 地下BGM
15. シューティングBGM

スーパーマリオワールド(SFC)
16. 地上BGM
17. アスレチックBGM
18. 地下BGM
19. 水中BGM
20. おばけ屋敷BGM
21. ボーナス面BGM
22. お城BGM

スーパーマリオUSA(FC)
23. 地上BGM
24. 地下BGM

スーパーマリオランド2 6つの金貨(GB)
25. メインテーマ
26. スターコース(SPACE ZONE)

スーパーマリオ64(N64)
27. メインテーマ
28. スライダー
29. ウォーターランド
30. さむいさむいマウンテン
31. クッパへの道

スーパーマリオサンシャイン(NGC)
32. ドルピックタウン
33. ビアンコヒルズ
34. リコハーバー
35. マンマビーチ
36. ピンナパーク
37. シレナビーチ
38. マーレのいりえ(深海)
39. モンテの村
40. ヒミツコース

Newスーパーマリオブラザーズ(NDS)
41. 地上BGM
42. 水辺BGM
43. 城BGM

【​Disc 2​】​

スーパーマリオギャラクシー(Wii)
1. エッグプラネット
2. スターダストロード
3. グラスビーチ
4. テレサワルツ
5. フローターランド
6. ウィンドガーデン
7. ギャラクシープラント

NewスーパーマリオブラザーズWii(Wii)
8. 地上BGM
9. おばけ屋敷BGM

スーパーマリオギャラクシー2(Wii)
10. 空島
11. ヨースター
12. かくざいもくざい
13. クラウドガーデン
14. マグマモンスター
15. 地の底の洞窟
16. 新銀河帝国

スーパーマリオ3Dランド(3DS)
17. 地上のテーマ
18. 海のテーマ

Newスーパーマリオブラザーズ2(3DS)
19. 地上BGM
20. アスレチックBGM

NewスーパーマリオブラザーズU(Wii U)
21. 地上BGM
22. アスレチックBGM

スーパーマリオ3Dワールド(Wii U)
23. スーパーベルの丘
24. スイッチサーカス
25. アスレチック
26. スノーボールパーク
27. 謎のからくり城
28. クッパの溶岩城
29. チャンピオンシップロード

【Bonus track】
スーパーマリオメーカー(Wii U)
30. タイトル

FC=ファミリーコンピュータ
FCD=ファミリーコンピュータ ディスクシステム
GB=ゲームボーイ
SFC=スーパーファミコン
N64=ニンテンドウ64
NGC=ニンテンドーゲームキューブ
NDS=ニンテンドーDS
3DS=ニンテンドー3DS

(C)1985-2015 Nintendo Licensed by Nintendo
※ファミリーコンピュータ・ファミコン・スーパーファミコン・ニンテンドウ 64・ニンテンドーゲームキューブは任天堂の商標です。

<サカナクション>

■リリース情報
『新宝島』
発売:9月30日(水)
価格:豪華初回限定盤(映画「バクマン。」BOX)(2CD+DVD)¥3,000(税抜)
   初回限定盤 CD+DVD ¥1,800(税抜)
   通常盤 CD ¥1,200(税抜)

■ツアー情報
『SAKANAQUARIUM2015-2016』
2015年10月03日(土)OPEN17:00/START18:00 北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
2015年10月07日(水)OPEN17:30/START18:30 愛知 日本ガイシホール
2015年10月08日(木)OPEN17:30/START18:30 愛知 日本ガイシホール
2015年10月17日(土)OPEN17:00/START18:00 大阪 大阪城ホール
2015年10月18日(日)OPEN17:00/START18:00 大阪 大阪城ホール
2015年10月26日(月)OPEN17:30/START18:30 東京 日本武道館
2015年10月27日(火)OPEN17:30/START18:30 東京 日本武道館
2015年11月13日(金)OPEN17:30/START18:30 福岡 福岡サンパレス
2015年11月14日(土)OPEN17:00/START18:00 福岡 福岡サンパレス
2015年11月21日(土)OPEN17:00/START18:00 北海道 小樽市民会館
2015年11月23日(月・祝)OPEN17:00/START18:00 北海道 函館市民会館 大ホール
2015年11月28日(土)OPEN17:00/START18:00 岡山 倉敷市民会館
2015年11月29日(日)OPEN17:00/START18:00 広島 広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)
2015年12月04日(金)OPEN17:30/START18:30 愛媛 松山市民会館 大ホール
2015年12月06日(日)OPEN17:00/START18:00 香川 サンポートホール高松 大ホール
2015年12月13日(日)OPEN17:00/START18:00 滋賀 びわ湖ホール 大ホール
2015年12月19日(土)OPEN17:00/START18:00 石川 本多の森のホール
2015年12月20日(日)OPEN17:00/START18:00 新潟 新潟県民会館
2016年01月10日(日)OPEN17:00/START18:00 宮城 仙台サンプラザホール
2016年01月11日(月・祝)OPEN16:00/START17:00 宮城 仙台サンプラザホール
2016年01月16日(土)OPEN17:00/START18:00 福島 郡山市民文化センター 大ホール
2016年01月17日(日)OPEN17:00/START18:00 岩手 盛岡市民文化ホール  大ホール
2016年01月29日(金)OPEN17:30/START18:30 長崎 ブリックホール 大ホール
2016年01月31日(日)OPEN17:00/START18:00 鹿児島 鹿児島市民文化ホール第一

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