ご当地限定シングル『MUTOPIA』インタビュー
BIGMAMA金井政人が語る、音楽とエンターテイメントの未来「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」
BIGMAMAが“ご当地シングル”『MUTOPIA』を、全国のタワーレコード限定でリリースした。北海道、東北、関東、中部北陸信越、近畿、中国四国、九州沖縄という7つのエリアごとに異なるパッケージとなる本作。表題曲とカップリング「SKYFALL」の他に、それぞれの地方の特徴を歌詞におりこんだ「MUTOPIA」のご当地バージョンを書き下ろし、収録している。
跳ねるダンスビートと高揚感あるバイオリンのフレーズが印象的なこの曲は「音楽の楽園」をテーマにしたもの。彼らのライブでも間違いなくピークタイムの一つとなるだろうナンバーだ。それをこういう形でシングルとしてリリースしたバンドの意図は果たしてどこにあったのか? バンドを率いる金井政人(Vo/G)へのインタビュー。話は楽曲の生まれた背景から、音楽とエンターテイメントの未来を見据えたビジョンまで、大きく広がっていった。(柴 那典)
「音楽でいろんな場所を楽園に変えてしまおう」
ーー『MUTOPIA』はご当地シングルという形でリリースされたわけですが、これはどういうところからアイディアが生まれたんですか?
金井:話のきっかけは二つあるんです。まず、単純に曲ができたこと。それからもう一つは全国ツアーをまわるタイミングだったこと。その中で、この曲をもっと楽しんでもらうアイディアとして、それぞれの場所で歌詞を変えてリリースしようということになったんですね。
ーー曲ができたのはいつ頃のことだったんですか?
金井:今年の新年一発目にスタジオに集まって、その時になんとなく歌ったメロディーをもとにバンドでセッションが始まって、バイオリンのキーとなるリフが出てきて、そうやって仕上がっていきましたね。
ーーどういうモチーフから曲ができていったんでしょう。
金井:まず、生身の編成の中に適度な違和感としてEDMの要素が入っているようなサウンドをきちんとバンドでやりたいと思っていたんですね。もう一つは「ミュージック×ユートピア」で「MUTOPIA」、つまり、音楽でいろんな場所を楽園に変えてしまおうというアイディアがあった。それが結びついて、「MUTOPIA構想」みたいなものがふくらんでいったんです。そして、これが下北沢のUKプロジェクトというインディーズレーベルのいいところなんですけれど、「いい曲ができた」となったら「よし! レコーディングをしよう」となってくれるんですね。なので、実はツアーが始まる前の3月にレコーディングをしたんです。
ーーその段階でもう曲が完成していたんですね。
金井:そして全国ツアーが始まって、そこでもやるようになって。ツアーに来てくれるお客さんにとって、ライブハウスでしか聴けない新曲があるということが楽しみの一つになってほしいと思ったんですね。そうしているうちに、もともとあった「MUTOPIA構想」から、それぞれの場所でそれぞれの楽園があると思うようになった。各地にフェスがあるのもそうだし、地方それぞれに人間性もあるし、好きなものもたくさんある。いろんな場所のことを歌詞に書けそうだと思ったんです。そして、タワーレコードさんの協力もあって、全国で違う限定盤を出せることになった。そこで、一番格好いい曲の完成形だと僕が思うものは1トラック目で成し遂げているので、カップリング曲とはまた別に、その場所ごとに愛情を持って歌詞を書いて歌ったものを3トラック目に収録することにした。それをすることによって、BIGMAMAのCDを買いたいと思ってくれる人とのいいコミュニケーションになると思ったんです。これが、ざっくりこの「MUTOPIA」っていう曲ができて、こういう形でシングルにした一連の流れです。
ーーまずは、曲があったからこそ、そういう構想が広がってきたわけですよね。この曲が持ってるエネルギーが「MUTOPIA」構想になって、そこからそれぞれの土地に合わせて歌詞を書くというアイディアにつながった。
金井:曲単独でもそうだし、それが2時間のライブのセットリストの中でどう響くかという、総合的なところもありますね。今、僕がライブの中で心掛けていることって「いかに一晩だけの関係にならないか」ということなんです。人生の中で長く付き合えるような、添い遂げられるようなバンドでいたい。そう考えた時に、僕らのライブの中で「MUTOPIA」という曲が起爆剤になってほしい。いかに生身のバンドで非日常を体現できるかということを考えたときの、自分の中での答えの一つとしてこの曲が生まれたんですね。なので、それが「MUTOPIA」を人に喜んでもらうための題材にする一つのきっかけになった要素ではあったと思います。