ミゲルの“ワイルドな音楽”が全米を魅了した理由 最新作とキャリアから紐解く

 

 その延長線上にあるのが、3作目にあたる待望の最新アルバム『Wildheart』です。そのリリースに合わせて、アーバン・ミュージック専門誌「Complex」では、「聴くだけで妊娠してしまうミゲルの歌詞27選」なる特集まで組まれ、女性ファンの期待と興奮を最高潮に高めました。

 身体を丸めた全裸の女性を彼が手で支えているジャケット写真、1曲目「a beautiful exit」から「フルスピードで赤信号をぶっちぎり太く生きよう、有終の美を飾るまで」と威勢よく、もはやプリンスとの比較は不必要なほど、ミゲルの音楽の世界に引き込まれるアルバムのラスト飾る「face the sun」まで、“ワイルド”を貫き通す。ただし、ミゲル自身によれば、彼の言う“Wildheart”とは、世間一般で言われている“常識”にいたずらに振り回されるのではなく、自分にとっての“常識”をもっと信じてみようという心持ちのこと。前作の大成功以来、たびたびエロティックだと言われてきたミゲルの音楽ですが、それは表面的な見方に過ぎず、「もっと深いところにある」と訴えたかったのが、今作『Wildheart』ではないでしょうか。

「Coffee」/Miguel

 前述の「face the sun」は、ミゲル曰く「夢が叶った」と語るレニー・クラヴィッツとの共演曲であると同時に、彼の十年来の恋人に捧げられた曲にもなっています。表面的には“非常識”だと受け取られがちなミゲルの作品ですが、今回の『Wildheart』に至ったことで、地にしっかりと足のついた男なのだなという思いが強く感じられるだろうし、なにより「Adorn」が、より一層心に響く一曲となることでしょう。

(文=小林雅明)

 

■リリース情報
『Wildheart』

発売:9月2日
価格:2,200円(+税)

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