識者2人が「海外チャートアクションの妙」を読み解く
“欧州ヒット米国首位”の“オミゴト”セオリー!? オミー「Cheerleader」に見るヒットの法則
KARL:そもそもアメリカのチャートの歴史において、そういった楽曲を受け入れる土壌はほとんどなく、せいぜい数年に一回ヒットを放つアーティストが登場するくらいでしたから。それがEDM楽曲のチャート席巻以降は、その流れに違和感もなくなりましたよね。1979年、パトリック・ヘルナンデスの「Born to Be Alive」という、元祖ユーロビートと呼んでもいい曲がビルボード・チャートで最高位16位まで上昇しましたが、あくまでそのレベルのヒットでしかなかったわけで。
――ハウス・ミュージックのリヴァイバルといえば、クリーン・バンディットの「Rather Be」のヒットなども、その系譜にあると考えていいんでしょうか?
KARL:オミーの場合は、そこまでハウスは関係ないんじゃないかな? 個人的にはハウス・ミュージック・リヴァイバルの流れよりも、クリス・ブラウン「Look At Me Now」のようなフューチャリスティックR&Bの系譜にあるんじゃないかな、と思っていて。それと、「Cheerleader」のような曲をアメリカ人じゃなくジャマイカ人が歌ったから売れたんじゃないかな、というのも考えられませんかね?
三浦:それと歌詞でしょうね。「キミは僕のチアリーダー」という普遍的で誰にでもリーチできる歌詞がウケたんでしょうね。
――オミーのチャート・アクションを見ていて、「違和感」や「リリースから1年かけて首位を射止めた」などの理由から、ロス・デル・リオの「Macarena」(95年)を思い出しました。
KARL:ロス・デル・リオもリリースから1年ほどしてチャートのトップになった曲ですからね。ビルボードで違和感を覚える楽曲は、だいたいヨーロッパ経由のヒット曲。ただ、前で述べた通り、この数年はEDMのおかげもあって、だいぶ違和感は減りましたねけどね。
三浦:ヨーロッパ大陸でブレイクし伝播され、英国そして米国でもヒットするストーリーという物語は、もはやヒットの法則の定番になりましたね。
KARL:チャートにランクインする違和感ではなく、“曲そのものの違和感”というのも、引っかかる要素になっているんでしょう。噛めば噛むほど味が出てくるスルメのような感じでしょうか。それと注目すべきは“ワンワード”のタイトル曲。これまでのビルボードの歴史でワンワードのナンバーワン・ヒットは約160曲ほどあるんですが、この5年前後で激増している傾向にあります。ファレル・ウィリアムス「Happy」をはじめ、マジック!の「Rude」なんかもそう。
三浦:そういった意味では、ヒットの法則をいくつも複合的に重ねているのが、オミーの「Cheerleader」だったんでしょうね。
KARL:さまざまな要素が重なり、“ヒットするべくしてヒットした曲”ですね。
(取材・文=佐藤公郎)
■リリース情報
「Cheerleader (Felix Jaehn Remix)」
iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/cheerleader-felix-jaehn-remix/id937114881